萩原利久がヒーローを目指す、引っ込み思案の少年を演じた異色のSF時代劇「大江戸スチームパンク」

国内では映画でもドラマでも様々な時代劇が製作されている。史実を忠実になぞったものから、コメディとしての時代劇までジャンルは多岐にわたる。7月24日(木)より時代劇専門チャンネルでBS・CS初放送される「大江戸スチームパンク」は中でも異色のSF時代劇だ。

本作は、コメディを上演する劇団「ヨーロッパ企画」が企画したオリジナルドラマ。舞台の大江戸は江戸と瓜二つの街並みをしているが、細部が大幅に違うという平行世界のような町。既に設定からSF感が漂うが、登場人物もまた然り。平賀源内や天草四郎をはじめとする史実に基づくキャラクターがいるものの性格や起こす事象は全くといってよいほど異なる。このような作品の代表作として「信長協奏曲」を思い浮かべた方もいるだろうが、本作は「信長協奏曲」よりも更にコメディ色が強いドラマだ。
■萩原利久、若手俳優の堂々たる芝居が世界観を支える!
主人公の佑太を演じるのは萩原利久。新進気鋭の若手俳優としてキャリアを積む萩原にとって異色のキャラクターである佑太は鍛冶屋見習いの青年。見習いといっても仕事をずっと見学しているような「役立たず」と称される引っ込み思案の青年であった。しかし、内に秘める情熱は人一倍で「おれは役立たずじゃない、ヒーローになりたい」という気持ちで蒸気によって動く甲冑を着込み、スチームパンクになろうと決意する。一方、その力を狙って大きな組織も動き出していた。
蒸気力甲冑の開発者の平賀源内を六角精児が務めるなど、佑太を囲む顔ぶれには実力派俳優が名を連ねたが注目ポイントはやはり萩原の芝居と世界観だ。
というのも先に説明した通り、異世界コメディとなっている本作は、登場場面の多い主人公がどこまで違和感なく溶け込み視聴者が笑える環境を整えることができるかが非常に重要となる。「信長協奏曲」の小栗旬は溶け込み方として良き代表例の一つだろう。
萩原はそんな難しい役どころを自然体で演じている。このような奇想天外な世界観の場合、演者は肩に力が入ってもおかしくはない。しかし、萩原は力の抜けた当たり前のような顔をして佑太を演じており、緊張感も感じられない。若くして色々な作品に引っ張りだこな理由がよくわかる腰を据えた芝居だ。また、演出も漫画チックになっておりスチームパンク状態の萩原が敵をなぎ倒したり、怪力を発揮したり時には漫画のような効果音が文字として差し込まれる。その独特な表現方法では他の"格好いい"をメインとするヒーローものよりも、スチームパンクをヒーローとして捉えることは中々難しいように一視聴者として感じたが、萩原が胸を張ってヒーローとして蒸気力甲冑を着込む姿に不思議と途中から少しの格好よさを覚えてしまった。忙しい生活の中で、クスッと笑いが欲しいとき。そんな時に本作はピッタリだ。ぜひともご覧あれ。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
大江戸スチームパンク
放送日時:2025年7月24日(木) スタート (月)~(金) 12:30~
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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