9年ぶりの受験者が出た、三段リーグへの編入試験。過去に小山怜央四段なども受験したこの試験の歴史を解説!

将棋界の編入試験と言えば、フリークラス入りを懸けて、新四段との五番勝負のイメージが強いが、もう一つある。それが三段リーグへの編入試験だ。今回、赤旗名人の小林智晴が受験を申し込んだが、受験者が出たのは9年ぶりのこと。受験の資格者そのものは毎年何人も出ているが、その厳しさからこれだけの期間受ける人が出なかった。
三段リーグ編入試験の資格はアマチュア6大タイトル(アマ竜王・アマ名人・アマ王将・支部名人・赤旗名人・朝日アマ名人)のいずれかを獲得することで、獲得から1年(試験は年2回)以内に申し込むことができる。試験は奨励会の例会に二段扱いとして参加し、6勝2敗の成績を収めること。今回は8、9月の4例会(1日2局)で行う。これに合格しても待っているのは三段リーグの編入で、4期以内の昇段が求められる。今の三段リーグの人数の多さ、レベルの高さから、プロへの道は非常に険しい試験だ。
三段リーグ編入試験はこれまでのところ11回受験者が出た(うち1人は2回受験)。だが、三段リーグに入れたのは今泉健司(現五段)のみ。この時は菅井竜也八段、斎藤慎太郎八段、澤田真吾七段、都成竜馬七段など、現在も活躍する棋士を相手に6勝1敗で合格をしている。
三段時代から実力のあった今泉は二度目の三段リーグも奮闘したものの、4期戦って最高成績は二度の11勝と、昇段には届かなかった。ただ、ご存じのように、今泉は3度目の挑戦となる棋士編入試験に合格をし、現在は棋士として活躍している。
全国優勝をする実力者であっても、二段相手に一発勝負で6勝2敗を取る難易度は高く、場合によっては初段相手の香落ちも含まれるため、奨励会経験がないアマチュアでは雰囲気を含めて不慣れな戦いを強いられる。今泉と同じく、編入試験に合格した小山怜央四段も受験をしたことがある。結果は2勝3敗と奮わなかったが、2勝のうち1勝は当時初段の伊藤匠叡王(香落ち)からあげている。
藤井聡太竜王・名人も二段側で受験者を迎え撃ったことがある。相手は当時のアマ名人で、大熱戦の末に藤井が敗れた。この1敗は当然奨励会員側に付くため、これが響いて藤井は三段リーグ入りが約半年遅れることになった。
久しぶりに険しい道のりへの挑戦者が出た今回。まずは二段勢との戦いとなるが、果たしてどうなるだろうか。
文=渡部壮大
放送情報【スカパー!】
第37回 奨励会 三段リーグ戦 高崎一生三段 vs 石井直樹三段
放送日時:2025年8月8日(金)15:00~
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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