反町隆史、中村獅童、渡哲也、鈴木京香ら俳優陣が熱演!戦後80周年の今見直したい貴重な大作映画「男たちの大和/YAMATO」

太平洋戦争の終戦から80年。当時の生き証人も少なくなったが、戦争を扱った映像作品を通じて現代人が学び、考えるべきことは多いはずだ。2005年に公開された映画「男たちの大和/YAMATO」もそのひとつ。本作は、戦後60年記念作品として東映と角川春樹が企画した大作映画。世界最強と謳われた「戦艦大和」の乗組員たちの悲劇を壮大なスケールで描き出した。角川春樹の姉・辺見じゅんの原作を映像化し、監督は「新幹線大爆破」の佐藤純彌が担当した。ちなみに辺見は本作で1984年に新田次郎文学賞を受賞している。超大作らしく出演者も反町隆史、中村獅童、渡哲也、鈴木京香、寺島しのぶ、奥田瑛二、林隆三、仲代達矢ら豪華キャストが顔を揃えている。若手も松山ケンイチをはじめ、蒼井優、池松壮亮、渡辺大らが奮闘した。
■特攻作戦の壮絶さと乗組員たちの人間ドラマを鮮やかに描く
2005年4月、鹿児島県枕崎の漁港を訪れた女性・内田真喜子(鈴木京香)は、北緯30度43分、東経128度4分まで船を出してほしいと老漁師の神尾克己(仲代達也)に懇願する。そこは戦艦大和が60年前の昭和20年4月7日に沈んだ場所だった。神尾はかつて新兵として大和に乗艦していた。操船しながら彼の胸に60年前の光景が甦っていく...。ミッドウェイ海戦での大敗によって窮地に追い込まれた日本軍。太平洋各地では守備隊の玉砕が相次いて日本軍の劣勢は明らかだった。昭和19年春、神尾ら特別年少兵たちが戦艦大和に乗艦した。大和に憧れる若者たちは、烹炊所班長の森脇庄八(反町隆史)や機銃射手の内田守(中村獅童)に励まされて艦内での厳しい訓練に耐える。しかし、初の実戦となったレイテ沖海戦において連合艦隊は事実上壊滅状態となり、多数の戦死者を目にしてたじろぐ若者たち。そして運命の昭和20年4月。最後の上陸を許された彼らは、母や妻、恋人に、それぞれ別れを告げる。全員が死を覚悟し、苦渋の決断をした伊藤整一司令長官(渡哲也)の指揮の下、戦艦大和はアメリカ軍との壮絶な戦いが待ち受ける「決戦の海」へと向かう...。
映画のクライマックスは、沖縄水上特攻作戦だ。空母を失って航空支援が得られないことを思えば無謀な作戦である。600機近い圧倒的戦力を誇る米軍機から容赦ない空中攻撃を受け、乗員数千名と共に大和は東シナ海の藻屑と消えた。特攻作戦ゆえに、勝算のない戦いだったかもしれない。劇中でも「我々の死に意味があるのか。無駄死にではないのか」と、作戦に異を唱える兵士と上官が激論する場面がある。そこで長嶋一茂演じる臼淵大尉が、幕末の歴史を紐解きながら「薩摩は英国に敗れて攘夷を捨て、欧州から武器を輸入して幕府を倒した」と、敗れて目覚めることを説く。「日本が新しく生まれ変わるために先駆けとして散ることこそ本望だ」と、兵士たちを諭して戦いに臨む。主要な俳優たちこそ登場しないものの、本作の中で非常に印象的な場面になっている。ただし、この後に展開する戦闘シーンは衝撃的だ。丸裸の大和は、懸命に砲撃を繰り返すものの米軍機の容赦ない機銃攻撃の前に、無惨な死体を積み重ねる。肉片が飛び散る凄惨な場面の連続で、正視に堪えない。ただ、命が軽んじられる虚しさと戦争の悲惨さを伝えるには余りある。ただ、本作の本当の価値は、乗組員とその家族、恋人たちに焦点を当てた人間ドラマであることだ。彼らがどんな思いで戦いに挑み、死を迎えたのか。その点を丁寧に描いている点に好感を持てる。日本軍の兵士を、血の通った人間として描き、洗脳されたのではなく、明確な国家防衛の志を抱いて自ら戦いに挑んだ若者たちの姿に視聴者は感動を覚えるはずだ。特に「生き残った者」の苦悩も描いている点もよかった。
■若き松山ケンイチの出世作。中村獅童の熱演も素晴らしい
俳優陣では、内田を演じる中村獅童が飛び抜けて素晴らしい。目を負傷して入院中だった内田は大和に乗艦する必要はなかったが、病院を抜け出して強引に乗り込む。鬼気迫る表情で戦い、傷つきながらも戦おうとする神尾を制して「生きろ」と伝える場面が印象深い。鈴木京香演じる真喜子は彼の娘であり、最初と最後に彼女が登場する意味を考えると、本作の事実上の主人公は内田であったのではないかとも思わせるが、中村獅童の演技は本当に見事だった。松山ケンイチは2002年に俳優デビューし、本作ではオーディションで神尾役を射止めた。松山は「ターニングポイントになった作品」と本作を語り、以降は戦争や平和を深く考える契機になったという。同年の日本アカデミー賞新人俳優賞も受賞し、出世作となった。
反町は戦争映画としては地味な存在の調理担当の兵士役だが、最後の海戦では血みどろになって戦い抜く。神尾たち若い兵士の心の支えにもなる人徳のある役どころを好演した。
女優陣では、鈴木京香をはじめ、神尾の同級生・妙子を演じる蒼井優も魅力的。内田と馴染の呉の芸者を演じる寺島しのぶも出番は少ないものの、じつに味わい深い演技を見せてくれる。
単純な反戦映画に留まらず、重厚なヒューマンドラマに仕立てた大作映画「男たちの大和/YAMATO」は、中高層はもちろん、現代の若い世代にも見てほしい作品だ。本作で兵士を演じた俳優たちは、実際に大和に乗艦した人に艦内での作法や立ち振る舞いの教えを受けて撮影に臨んだという。今はそれも難しくなってしまった。そう思えば、改めて貴重な作品であることがわかる。戦後80年の節目に改めて観賞して、戦争の愚かさと平和の意味をかみしめてほしい。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
男たちの大和/YAMATO
放送日時:2025年8月7日(木)20:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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