比嘉愛未と窪田正孝が、希望、そして苦悩を抱えた終戦後の若者たちを熱演!映画「飛べ!ダコタ」

太平洋戦争が終わってから、今年で80年目を迎える。終戦後の混乱の中にあって、国境を超えた温かい交流が新潟県・佐渡島であったことをご存知だろうか。
終戦から5カ月後の昭和21年1月、悪天候により英空軍機"ダコタ"が佐渡島に不時着した。着地地点となった高千村の人々は、かつて敵国だったイギリス兵が突然現れたことに戸惑うが、困っている人を見捨てられないという想いから、ダコタが再び飛び立てるよう力を尽くしたという。
2013年に公開された映画「飛べ!ダコタ」は、そんな実話をもとにした感動の物語だ。主演は比嘉愛未で、村の旅館の娘・森本千代子を演じた。比嘉は今年の活躍も目覚ましく、ドラマ「フォレスト」で岩田剛典とW主演したり、12月公開予定の劇場版「緊急取調室 THE FINAL」への出演も決まっている。実は「飛べ!ダコタ」は、そんな比嘉の映画初主演作品となる。
また、千代子の幼馴染であり、物語における重要な存在となる木村健一を、窪田正孝が演じている。この作品に込められた人々の温かさや苦悩、そして想いを、2人がどんな演技で表現したのか、見ていくことにしよう。
■未来に希望を持つ千代子を表情豊かに演じた比嘉愛未

(C)「飛べ!ダコタ」製作委員会
比嘉が演じる千代子は、冒頭、海辺の丘の上の小屋で1人佇んでいる。"ここで海を見ていれば必ずいいことがある"というのがその理由で、表情は物憂げでありながら、柔らかな温かさも漂っている。恐らくは戦争が終わったことへの安堵と未来への希望が、千代子の中で静かに息づいているのだろう。
冒頭での印象の通り、千代子は明るく表情豊かな女性として描かれる。ダコタが不時着した時は必死さと焦りが入り混じった表情を見せ、降り立ったイギリス兵とは言葉が通じず、戸惑うような面持ちとなる。また、村の女性たちとの井戸端会議では、屈託のない様子で会話に参加する。
村人総出で作業している時に笑顔でおにぎりを握ったり、友人たちと女子トークに花を咲かせたり、笑顔であっても、不安げであっても、常に柔らかな生命力が感じられるのは、比嘉がごく自然に、未来への希望を持ち続ける千代子を演じているからだろう。同時にそんな千代子の存在によって、物語の空気が明るく保たれていると言える。
■道を見失った若者を窪田正孝が鬼気迫る熱演で体現
窪田が演じる健一はかつて海軍兵学校に進んだが、怪我により足を悪くしたため、戦地に赴くことなく村に戻った。戦争は終わったが、友人が戦死したこともあり、突然村に現れたダコタやイギリス人将校を敵視している。ダコタを遠くから睨みつけたり、千代子に通訳を頼まれても冷たく断ったりする様子から、そんな心情が読み取れる。さらに、怒気を含んだような眼差しや重苦しい空気を抱えている様子などからは、まだ彼の中で戦争が終わっていないことが伝わってくる。
物語の中で健一は、臨時教員となることを勧められる。しかし、「お国のために死ねと教えられた自分が子どもたちに何を教えられるというのか」と、声を荒げる。彼自身の戦争が終わっていないだけでなく、これからどう生きていくかに迷い、苦悩する青年の姿がそこにあり、それを刺さるほどに熱演する窪田の力量はさすがと言うほかない。
本作は不時着したイギリス軍関係者を救うと同時に、新しい時代をどう生きていくかという物語でもある。村には戦争で家族を失った者も数多くいるが、イギリス兵と触れ合うことで、新たな生き方を見つける者も現れる。
そして健一も、やがてそうなってゆく。物語の終盤、健一は己の中にある苦悩を、狂気に取り憑かれたような凄まじさで爆発させる。そして千代子と想いをぶつけ合うことで、自分を取り戻し、新しい道を歩むようになっていく。
ラストでダコタが青空に飛翔したように、比嘉と窪田もその演技を通じて、敗戦と戦後の混乱から立ち直る若者の姿を見事に体現して見せてくれる。人々の温かなふれあいや想い、そして未来への希望が込められている本作。終戦80年を迎えた今こそ、ぜひ見てほしい作品だ。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
飛べ!ダコタ
放送日時:2025年9月7日(日)21:00~、9月21日(日)12:00~ほか
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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