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高良健吾と鈴木杏のラブシーンも!新宿・歌舞伎町からの男女の逃避行を描く「軽蔑(2011)」

2025/09/05

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高良健吾と鈴木杏がW主演を務めた「軽蔑(2011)」
高良健吾と鈴木杏がW主演を務めた「軽蔑(2011)」

公開中の映画「海辺へ行く道」で包丁売りの男・高岡役として出演している高良健吾。これまでにさまざまな役を演じ、朝ドラにも出演経験のある実力派俳優だ。そんな高良が朝ドラ「おひさま」に出演していた2011年に出演し、W主演を務めた鈴木杏とのエロティックなシーンも注目を集めたのが映画「軽蔑」だ。

原作は46歳で急逝した芥川賞作家・中上健次の遺作にして異色作の長編純愛小説。メガホンを「月の満ち欠け」「恋に至る病」の廣木隆一がとった。高良は実は地方の資産家の息子だが、欲望のままに生きている新宿のチンピラ・一彦こと二宮一彦を演じている。そして、鈴木が演じているのは、歌舞伎町のトップレスバーのポールダンサー・矢木真知子。一彦が引き起こした事件がきっかけとなって、互いに気になっていた2人は、衝動的に駆け落ちすることになる。

W主演の高良と鈴木の脇を固めるキャストは、一彦の父親・一幸に小林薫、賭博の元締め・山畑万里に大森南朋、一彦の祖父の愛人・杉田千代子に緑魔子、一彦の叔父役に田口トモロヲなど個性派揃い。特に1970年代のアンダーグラウンドな演劇界を知る人は、小林と緑の共演にも興味を惹かれるのではないだろうか。純愛ゆえに傷つき、"先の見えない今"を生きる男女を演じた高良と鈴木の体当たりの演技に注目だ。

■高良が演じるのは、愛されてきたことに無自覚な世間知らずの青年

悪ぶってはいるものの、スレンダーな体型や表情から青さとナイーブさを感じられる一彦を、高良は危なっかしい雰囲気も含めて全身で表現している。歌舞伎町にいられなくなった一彦は車で真知子と高飛びするものの、向かった先は田舎町の実家。そこで真知子は初めて一彦が資産家の御曹司だと知り、狭いコミュニティの中で、歌舞伎町の踊り子という職業に対しての好奇の視線に晒されることになる。

そんな現実さえ想像できなかった一彦は、父や叔父に真知子のことをそれとなく揶揄されるとカッとなり、自分の感情を制御できなくなるタイプだ。真知子や地元の友人の前では虚勢を張ってみせるが、体裁を重んじる名家のポンコツ息子というコンプレックスから抜け出せないまま、破滅的に突っ走っていくさまにハラハラさせられる。

印象的なのは、祖父から引き継いだカフェを営む千代子にだけ見せる寂しげな顔だ。「2人だったら、どこに行ったってやっていける」と励ます千代子に「どこに行ったらいいんだ」と本音を漏らすシーンが、心もとなくも切ない。そんな高良のヒリヒリした演技は、壮絶なクライマックスへと向かっていく...。

■全裸のラブシーンに挑んだ鈴木は複雑な女性の心理を表現

一彦と逃げることを決めた真知子が出したのが「五分と五分だからね」という条件。しかし、対等な関係を望んだ真知子を待っていたのは、"自由"とはほど遠い息苦しい環境だった。子供の頃から周囲に甘やかされ、守られて育ったのが一彦なら、身寄りもなく身体を張って生きてきたのが真知子だ。千代子が自分と一彦の祖父との関係をオペラで有名な小説「椿姫」の身分違いの恋に例えて真知子に話すシーンは象徴的だ。見知らぬ土地で疎外感と孤独に苛まれ、空虚な表情になっていくヒロイン・真知子を、鈴木は表情のみならず、湿気がまとわりつくような空気感と共に表現している。

しかし、やがて一彦を本気で愛してしまったゆえの想定外の感情が真知子を突き動かしていく。剥き出しの高良と鈴木の演技のぶつかり合い、楽園を目指すはずだった逃走劇の行方をその目で確かめてほしい。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

軽蔑(2011)
放送日時:2025年9月7日(日)2:05〜、9月20日(土)2:30〜ほか
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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