デビュー2年目の高倉健の瑞々しい演技!勝気な空中ブランコ乗り役が刺激的な「空中サーカス 嵐を呼ぶ猛獣」
数多の映画賞だけでなく、1998年に紫綬褒章、2006年に文化功労者、2013年に文化勲章を受章するなど、記憶にも記録にも残る名優・高倉健。
作品に関わった人たち全員に、上下関係なく丁寧にお辞儀をしてあいさつするなど常に敬意を払うことを忘れず、「焚き木に当たらない」や「待ち時間に椅子に座らない」など数々の腰の低さを表すエピソードが残っており、その生き様も伝説となっている人物だ。
役者としては、余計な表現方法を駆使するのではなく、必要最小限の言葉で演じる役の心の機微を表す"いぶし銀"の渋く深みのある演技が真骨頂。言葉以外の表現で伝えるものが多く、彼ならではの存在感も相まって、スクリーンに登場しただけで目が離せない稀有な役者だ。
■任侠映画での活躍以前の高倉健の演技を見ることができる
(C)東映
高倉といえば、晩年の渋い演技やストイックなイメージが確立した任侠映画での活躍が有名だが、その前はどんな役者だったのか...?その頃の姿が観られる作品が映画「空中サーカス 嵐を呼ぶ猛獣」(1958年)だ。2026年3月3日(火)に東映チャンネルで放送される。
同作品は、高倉のデビュー2年目の作品で、ジンタ、空中ブランコ、猛獣の曲芸など絢爛たるサーカスを舞台に、芸に生きる男の魂や女の恋など、悲喜こもごもとした人間模様を描いたヒューマンドラマ。高倉は、天才空中ブランコ乗りの千吉を演じている。
船乗りの千吉(高倉)は酒場で酔っ払い、サーカスのポスターをズタズタに破ってサーカス団員とけんかになる。複数の団員を一人で打ちのめした千吉のうわさを聞き、団長は千吉をリクルートする。一座の花形である空中ブランコの乗り手・健二(植村謙二郎)が盲腸を患い、その代役を探していたことに加え、千吉が5年前まで業界で有名な空中ブランコ乗りだったことに気付いたからだった。
千吉は、5年前に空中ブランコの相方・三郎(今井俊二)がブランコから転落したことを機にサーカスを辞めており、一度は断るもサーカスでの暮らしが忘れられず入団することに。天才的な千吉の技に興行はいつも好評で、退院した健二は激しい嫉妬を覚える。そんな中、歌手のエミ(佐久間良子)は千吉に憎しみの目を向けていて――というストーリー。
■高倉は腕っぷしが強く勝気な千吉を瑞々しく表現
(C)東映
同作品で、高倉は"渋さ"や"ストイック"とは違った一面を披露。腕っぷしが強く、終始強気で勝気、けんかっ早いという千吉を瑞々しく表現している。当時はデビュー2年目で27歳という若者であるため、演技のスタイルも、晩年のような周囲の人間や環境、その時の状況といった外的要因を受け止めた上で心の底からにじみ出てくるものを表現する受動的なタイプではなく、まず自らが動いて周囲を巻き込んでいくような能動的なタイプで刺激的だ。
観ると、白黒で昔の映画なのだが、高倉の演技の新鮮さを楽しむことができる上、周囲を巻き込みながら自分の存在感を濃くしていくスタイルを経て、"いぶし銀"なスタイルに進化していったことに気付かされて、彼が役者人生で積み上げてきたものの大きさに圧倒されてしまう。
一方で、後に迎える任侠作品での大ブレイクにつながる要素が散見されるところも醍醐味だ。腕っぷしが強く、誰に対してもひるまない気の強さ、それらの核ともいえる眼光の鋭さは顕在であるし、何より"重いものを背負って生きている"という人間的な深みを表す陰のある役柄の表現が絶妙で、"大ブレイク前夜"を感じることができる。
「名優は一日にしてならず」。今だからこそ新鮮な、晩年の"いぶし銀"の演技とはひと味違う若かりし頃のギラギラしたスタイルの演技を楽しみつつ、さまざまな経験と多くのトライ&エラーを繰り返しながら積み上げてきた彼の"役者道"の黎明期に触れることで、彼が築き上げてきた偉業の偉大さを感じてみてほしい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
空中サーカス 嵐を呼ぶ猛獣
放送日時:2026年3月3日(火)13:30~
放送チャンネル:東映チャンネル(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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