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2022/08/17

竹野内豊の演技に圧倒される!石田ゆり子の葛藤する姿も魅力の「連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」」

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WOWOW開局30周年記念ドラマ「連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」」がWOWOW4kで放送される。ベストセラー作家・東野圭吾による170万部超えの問題作を連続ドラマ化した本作は、少年犯罪をめぐる人間の"罪と罰"への想いが描かれている。

長峰重樹は妻を亡くした後、男手一つでひとり娘の絵摩を高校生になるまで育ててきた。父親と娘は互いに支え合いながら慎ましく生きてきた。ところが、ある夜、絵摩がバイト先から戻らず、数日後に凄惨な遺体で発見される。悲しみに暮れる長峰のもとに、犯人の名と居場所を告げる密告電話がかかってくる。逡巡した末に教えられたアパートへ向かうと、部屋には絵摩があまりにもむごい手段で殺されていく様子を捉えた映像が残されていた。帰宅した犯人の1人であるアツヤを思わず殺害してしまった長峰は、主犯のカイジを追う。彼ら犯人は、現行法上はまだ死刑が適用されない少年だった。被害者の父親の行動は、是か非か。世論を二分する長峰の逃亡復讐劇が始まる。

WOWOWの連続ドラマWに初登場にして初主演を務めるのは竹野内豊。1994年に俳優デビューして以来ドラマに映画にCMにと活躍を続け、昨年50歳の節目にフリーランスに転向した。古くは1997年の月9ドラマ「ビーチボーイズ」での爽やかな美男子のイメージも根強い。近年では、2018年からの「義母と娘のブルース」シリーズに、自由奔放なクセ者裁判官を演じた「イチケイのカラス」(2021年)などのドラマや、タクシーアプリGOのCMでもコミカルな一面も披露する。来年は映画『イチケイのカラス』や山田孝之とのW主演作『唄う六人の女』の公開も控える。年齢を重ねて渋みと色気を増した二枚目俳優は、フリーになった今も変わらぬ活躍ぶりだ。

本作では、男手一つで育ててきた娘を少年たちに残忍な手口で殺され復讐に突き進む主人公・長峰重樹を演じる。2009年の映画版では長峰を追う刑事・織部を演じていた竹野内が、12年後に長峰役に挑むこととなった。良心の呵責や法の壁の間で苦しみもがきながら、娘の仇を討つため復讐に命を燃やすという難役。娘を愛おしそうに見つめる穏やかで幸せな親子のシーンから一転、怒り憎しみ悲哀が入り混じった表情の落差がすごい。娘の最期の姿を目にしたシーンでの凄みのある演技には圧倒されてしまう。窶れた頬に髭を生やし、憎しみを燃やす瞳は、パブリックなイメージとは全く異なる。一見すると竹野内とは思えないほどだ。

父親の経営するペンションを手伝う女性・木島和佳子には石田ゆり子が抜擢された。一人息子を突然の病で失った悲しい経験を持つ木島は、慈愛に満ちた眼差しで子供たちを見つめ、明るく朗らかに振る舞う。優しく澄んだ声が心地良く、重く苦しい作品の中でも爽やかな存在感を放っている。物語が進むにつれ長峰の正体を知り、それでも手を差し伸べてしまう葛藤も心の奥に秘めた悲しみも繊細に演じた。

犯罪小説史に残る問題作。数多くある東野圭吾の実写化作品の中で、完成度の高さはトップクラスなのではないだろうか。非常に重たいテーマだからこそ、キャスト・スタッフにはかなりの覚悟が必要だったはずだ。少年法改正や過熱する報道、SNSや世論などもうまく盛り込み、今の時代に即した細やかな演出も光る。竹野内や石田のほか、國村隼に古舘寛治や本田博太郎らベテラン勢に、三浦貴大や瀧内公美ら実力派も熱演を披露した。演技派俳優たちが片山慎三監督らスタッフとともに真摯に向き合って生まれた傑作。人を裁くのは人か法か社会か。自分ならどうするだろうか。それぞれが抱く正義の刃が、激しく強く心に訴えかけてくる。

文=中川菜都美

放送情報

連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」
放送日時:2022年8月28日(日)23:00~
チャンネル:WOWOW4k
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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