山田裕貴、デビュー作の10年後を演じた「テン・ゴーカイジャー」で垣間見えたカメレオン俳優と呼ばれる所以

数々の作品に出演し、その役柄と印象のふり幅から「カメレオン俳優」と称され、今年エランドール賞新人賞を受賞した山田裕貴。舞台、映画、ドラマなどさまざまなフィールドで活躍し続ける彼の俳優人生は、スーパー戦隊シリーズの「海賊戦隊ゴーカイジャー」(2011年、テレビ朝日系)からスタートした。同作では、常に冷静沈着で口数の少ない不愛想でクールなジョー・ギブケン/ゴーカイブルーを熱演し、人気を博した。このデビュー作を皮切りに数多くの作品に出演し、俳優として成長した姿が堪能できる作品が「テン・ゴーカイジャー」(2021年)だ。
同作は、キャストもそのままに2011年の10年後を描いた新作で、「海賊戦隊ゴーカイジャー」ファンにとってはたまらない作品。10年後の地球では、スーパー戦隊の戦士の力が宿った鍵"レンジャーキー"を使った"スーパー戦隊実体化システム"により、スーパー戦隊のヒーローたちがバトルロワイアル形式で対決する公営ギャンブルが人気を博していた。そんな中、キャプテン・マーベラス/ゴーカイレッド(小澤亮太)が地球に降り立つ、というストーリー。
何と言っても「ゴーカイジャー」のキャストが10年ぶりに揃った姿が見られるというのが醍醐味なのだが、加えて"レンジャーキー"を使ってスーパー戦隊の戦士に変身できるという「ゴーカイジャー」の特性上、さまざまな懐かしいスーパー戦隊の戦士も見ることができ、スーパー戦隊ファンにとっても心が震える内容となっている。ストーリーに関しても、人間の"業"をテーマに描かれており、大人が見ても思わず考えさせられるような話で、観る者を飽きさせない。

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そんな中で、やはり注目すべきはキャスト陣の演技だ。「10年という時を経て、変わっていてほしい部分・変わっていてほしくない部分」といった往年のファンのナイーブな期待に見事に応えている。山田も期待以上の演技を披露し、かつてのキャラクター性を保ちつつも、しっかりと10年後のジョーを表現した。
ジョーといえば冷静沈着でクールな孤高の戦士で、情に厚いというキャラクターなのだが、山田は精悍な顔つきと鋭い目つき、そして話し相手を見ずに会話するという所作で、ジョーらしさを表している。加えて、敵と相対しても余裕がある達人然とした佇まいでジョーの10年間の成長を体現。10年前と比べて、明らかに悠然と立ち、アクションもどこか余裕が感じられる。簡単にいうと敵を前にしてバタついていないのだ。これこそが山田の表すジョーの精神的な成長であり、同時に10年という時間の経過も感じさせる。
山田は演じるにあたり、10年ぶりに同じ役をただ演じるのではなく、役が過ごした時間までもしっかりと役作りに取り入れた。10年間の成長をも表現するというのは、山田がこの10年間で数々の役と真剣に向き合い全力で演じ抜いてきたからに違いない。その演技に対する姿勢こそが「カメレオン俳優」と称される所以となっているのだろう。
10年という時を経て同じ役を演じた山田が表現した役の成長と共に、彼自身の役者としての成長にも注目していただきたい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
テン・ゴーカイジャー
放送日時:2022年9月4日(日)11:30~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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