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「原作ものの主人公」を演じる姿でわかる、綾野剛という稀有な役者の底知れない実力

2022/10/01

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「新宿スワン」シリーズで主人公の白鳥龍彦を演じる綾野剛
「新宿スワン」シリーズで主人公の白鳥龍彦を演じる綾野剛

クールなルックスとミステリアスな雰囲気を持つ俳優・綾野剛。陰のある役から繊細な青年の役、王道の主人公まで、さまざまな役柄を演じ切る"憑依型"のカメレオン俳優だ。どの役を演じてもまさにその人物がリアルな世界を生きているかのように感じさせる説得力のある芝居で、作品に彩りを与えている稀有な役者の1人。その説得力のある芝居が堪能できる作品が、映画「新宿スワン」シリーズ(2015年、2017年)だろう。

(C)2015「新宿スワン」製作委員会

同作品は、「東京卍リベンジャーズ」でも知られる和久井健の人気漫画を映画化したもので、東京・新宿の歌舞伎町のスカウトマンを主人公に、彼の成長と裏社会の諸事を描いたもの。綾野は新人スカウトマンの白鳥龍彦(通称:タツヒコ)を演じる。

人生どん底の中、歌舞伎町を歩いていたタツヒコは、スカウト会社「バースト」の幹部・真虎(伊勢谷友介)に見初められてスカウトの道を進むことになるのだが、キャラクターとしては、自身が仕事を紹介した女性の幸せを願い、人道に外れることを許さない実直な性格の持ち主。向こう見ずで、1人で突っ走るところがある3枚目という人物だ。夜の街の裏の部分を描く同作において、登場人物たちはそれぞれ違った境遇の中で悩みを抱えており、彼らと相対するタツヒコは視聴者の目線を担う立ち位置でもあるため、劇中で最も"まとも"である必要がある。

(C)2015「新宿スワン」製作委員会

そんなタツヒコを、綾野は実にナチュラルに演じている。もちろんコミカルな部分はコメディー要素満載に、バイオレンスな部分は持ち前の運動神経の良さを存分に振るったアクションで魅了し、感情を揺さぶるシーンでは情感たっぷりの芝居で魅了してくれるのだが、どんな時も"真っ当"で居続けてくれるため感情移入しやすく、手を引かれるように自然と観る者の感情を誘導してくれる。それはまさに原作の2Dの主人公がリアルに3Dで現れたかのように錯覚してしまうほどに綾野がタツヒコを"憑依"させて演じているからこそ、言葉に、所作に、目線に、表情に、雰囲気に、魂が入っているからに違いない。

(C)2017「新宿スワンⅡ」製作委員会 原作:和久井健『新宿スワン』(講談社『ヤンマガ KC スペシャル』所載)

さらに、物語では、何もできない新人時代から少しずつ仕事を覚え、さまざまな人々との関わりの中で成長していくのだが、彼の芝居そのものが周りのキャストの芝居を際立たせる効果をもたらしている。というのも、訳ありの女性や腹に一物を抱えている男たちといった濃いキャラクターが周りを固めているため、タツヒコも十分濃いキャラクターであるにも関わらず、相対する人物たちのキャラを邪魔しない"受け"としての立ち位置がデフォルトで、彼がナチュラルに演じているからこそ、相手の芝居が生む"キャラクターの濃さ"とのコントラストが強まるからだ。これは、特にタツヒコがホームタウンである歌舞伎町から横浜に舞台を変えて、アウェイの地で奮闘する姿を描いたシリーズ第2弾の映画「新宿スワンII」で顕著に表れている。

原作ものの主人公を演じることでより堪能できる綾野の"憑依"した芝居と、その芝居が作品にもたらす効果を感じながら、稀有な役者の底知れない実力を見届けてほしい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

新宿スワン
放送日時:2022年10月10日(月)0:00~

新宿スワンII
放送日時:2022年10月10日(月)2:20~

チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくは
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