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一丁の拳銃を巡る群像劇「リボルバー」で、沢田研二の演技力が光る!

2022/11/05

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「リボルバー」に出演する沢田研二
「リボルバー」に出演する沢田研二

60年代後半のグループ・サウンズブームでは「ザ・タイガース」のボーカルとして名を馳せ、ソロとなってからの70~80年代にはヒット曲を連発。それぞれの時代の音楽シーンにおいて圧倒的な存在を示した歌手・沢田研二。

俳優としても活躍していて、1979年に公開された「太陽を盗んだ男」では第4回報知映画賞の主演男優賞を受賞している。演技力は折り紙付きで、1981年公開の「魔界転生」の天草四郎時貞役で、妖しさに満ちた演技を見せたことが記憶にある方も多いだろう。11月11日(金)には主演映画「土を喰らう十二ヵ月」も公開される。

沢田が出演した数多くの映画の中にあって、独特の魅力を放つ作品が1988年に公開された「リボルバー」だ。原作は佐藤正午の同名小説で、脚本の荒井晴彦と監督の藤田敏八によってテンポの良い群像劇に仕上げられている。

(C)日活

沢田が演じるのは、うだつの上がらない鹿児島県警の巡査部長・清水信彦。清水はお見合い相手の山川亜代(南條玲子)と交際しているが、乗り気になれずにいる。そんな中、付きまとってくる山川を振り払った直後に、事件が起こる。自分を捨てて結婚した不倫相手のOLに殺意を抱く会社員・阿久根康男(小林克也)に襲われ、拳銃を奪われてしまうのだ。

この拳銃を巡って、さまざまな人物がすれ違いながら絡み合う。女性を暴行する現場を目撃したことでヤクザ紛いの男・石森慎二(山田辰夫)に殴られた高校生の出水進(村上雅俊)。そのガールフレンドの佐伯直子(佐倉しおり)。ひょんなことから知り合い、意気投合した競輪好きの蜂矢圭介(柄本明)と永井新(尾美としのり)。ホステスの尾崎節子(手塚理美)といった面々だ。

(C)日活

拳銃を奪われた責任を取って警察を辞めた清水は、ホステスの節子のもとに身を寄せ、ぼんやりとした生活を送り始める。一方、拳銃は阿久根が動物園のゴミ箱に捨てた後、その場に居合わせた出水の手に渡る。出水は自分を殴った石森を恨んでいて、拳銃を持ち復讐のため札幌に向かう。しかし佐伯の前で1発発砲したことがきっかけとなり、ついに清水も動き出す。

絶妙の構成で描き出される人間模様の中で、沢田は印象的な演技を見せてくれる。拳銃を奪われたことをなじる新聞記者にビールをぶちまけながら語るセリフには怒りとイラつきがあり、無精髭を生やし"ヒモ"として鬱屈した時間を過ごす清水の姿もよく似合っている。落ち着いた甘い声で節子と語らうシーンでは、清水という男の体温さえ感じられるほどだ。

そして拳銃の行方を追い始めた清水を、沢田は覇気に満ちた言動で演じ切る。物語の序盤では冴えない雰囲気を漂わせていた清水が、別人のようになって拳銃奪還に向けて走り出す。群像劇というスタイルのため、沢田が画面に登場している時間は決して長くはないが、その中でも清水という男の思いと人柄を体現しているといえるだろう。

小林克也が演じる阿久根や、柄本明が演じる蜂矢なども良い味を出していて、それぞれの人物や生き様がよく伝わってくる。それらが重なり、絡み合いながら軽快に物語が進むため、気づけば夢中になって見てしまっている。そんな不思議な魅力がこの映画にはあるのだ。

清水らが織りなす物語はどこへ行き着くのか?沢田をはじめとする俳優たちの演技を楽しみながら、ぜひその結末を見届けてほしい。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

リボルバー
放送日時:2022年11月7日(月)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくは
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