吉田羊が病気の謎を究明する解析診断医を演じた医療ミステリー「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」

知的な佇まいと、大人にしか出せない絶妙な可愛らしさが魅力の吉田羊。舞台女優として活動を開始した彼女は、2008年放送のNHK連続テレビ小説「瞳」で注目を集めて以来、確かな演技力と凛とした美しさを武器に、幅広いフィールドで活躍を続けている。そんな吉田の地上波連続ドラマ初主演作として知られるのが、2016年放送の医療ミステリー「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」だ。

脳神経外科医の橘志帆(吉田)は、どんな難しい手術も成功に導く、ゴッドハンドの持ち主。ある日、手術中に幻覚を見たことから医師を辞めようと決意するが、恩師の北畠昌幸(高橋克典)から、オペをしないことを条件に、北畠が院長を務める東光大学病院に新設された解析診断部の診断医として来ないかとヘッドハンティングされた志帆は、その誘いを受けることに。しかし新天地には、院長の座を狙う解析診断部チーフで内科医の岩倉葉子(伊藤蘭)とその取り巻きを始め、一匹狼タイプの外科医・新田雪野(相武紗季)といった個性的な人物が揃っていた。そんな状況下でも、患者の命を救うため、志帆は助手的存在の研修医・田丸綾香(吉岡里帆)と共に、さまざまな病状に立ち向かっていく。

吉田が演じるのは、娘の真央(藤澤遥)を女手ひとつで育てるシングルマザーの脳神経外科医・志帆。天才的な技術の持ち主として名を知られる存在だったが、ときどき現れる幻覚に悩まされていることを原因に、メスを持たない診断医として働くことになった志帆を好演。手術中はクールな表情を浮かべる一方で、新しい職場で加わることになったメディカルチームのリーダーでもある岩倉への飄々とした態度を始め、同僚となる田丸や気心の知れた北畠に対して見せる、どこかユーモラスな笑顔など、彼女の多彩な表情も大きな見どころのひとつと言えるだろう。中でも、娘や第1話で登場する保育園児の患者といった子どもたちに向ける母性たっぷりの優しい微笑みは、誰もがホッとする温かさに満ちている。

原因不明の病気の謎を究明し、患者を救う"解析診断部"に所属する医師が主人公とあって、刑事や探偵にも近い活躍をみせる志帆。患者と粘り強く接し、病の原因のみならず、その心の奥にしまい込まれた問題にも光を当て解決に導いていく志帆を、吉田は肩の力が抜けたナチュラルな演技で体現していく。その一方で、頭痛をきっかけに志帆が見る幻覚のシーンでは、それまでの柔らかな雰囲気を一変させ、困惑に満ちた固い表情と低い声で、彼女が隠している秘密の大きさを視聴者に予感させていく。

優しさと強さ、包容力と決断力といった、大人の女性ならではの魅力を持つ主人公・志帆を圧倒的なリアリティを持って表現した吉田羊。ラフにまとめた髪や、白いスニーカーにカットソー、当時大人気だったガウチョパンツというファッションも見事に着こなした彼女の魅力が堪能できる、未だかつてない医療ミステリー・ドラマだ。

文＝中村実香