石原さとみがナチュラルな関西弁を披露!堤真一の鋭いツッコミと、ボケを封印した岡村隆史がW主演を務めた映画『決算!忠臣蔵』

幾度も映像化されてきた時代劇屈指の題材である、赤穂藩士の討ち入り事件、通称"忠臣蔵"。年末の風物詩とばかりに、時代劇スターを集めた王道から外伝、さまざまな視点から描くものまで多彩な作品が作らてきた。その中でも、2019年の映画『決算!忠臣蔵』は、これまでとは異なる斬新な切り口が注目を集めた。12月10日(土)19:00に時代劇専門チャンネルにて放送される本作は、歴史学者・山本博文『「忠臣蔵」の決算書』を原作に中村義洋監督が描いた、涙と笑いの予算達成エンターテインメント"忠臣蔵"だ。

元禄14(1701)年3月14日、江戸城・松の廊下で事件は起きる。清廉潔白な赤穂藩藩主・浅野内匠頭は、賄賂まみれの吉良上野介の態度が許せず、殿中にもかかわらず斬りかかった。本来なら喧嘩両成敗となるはずが、幕府からは浅野家のお取り潰しと内匠頭の即日切腹が言い渡される。藩主を亡くし、お家断絶となった赤穂藩士たちは路頭に迷うことに。藩は会社で、武士はサラリーマンとすれば、要は江戸時代の優良企業倒産事件だ。筆頭家老・大石内蔵助は勘定方・矢頭長助の力を借りつつリストラに励むが、お家再興の夢は断たれてしまう。江戸庶民は吉良への仇討ちを熱望するが、タダではできない。その総額なんと9500万円。予算の都合でチャンスは1回。果たして彼らは予算内で一大プロジェクト"仇討"を無事に決算することができるのか。
忠臣蔵を命懸けの忠義心による感動物語とせず、予算という視点からユニークに描く本作。筆頭家老・大石内蔵助役の堤真一と、勘定方・矢頭長助役の岡村隆史がW主演を務めた。生粋の関西人である堤と岡村の関西弁がテンポ良く展開する。堤はこれまでに数多のスターが演じてきたヒーロー然とした大石内蔵助のイメージを大胆に覆した。金欠と熱さゆえの藩士たちの自由さに悩まされ、「なんでやねん」とぼやく。振り回される様を真面目に演じれば演じるほど、面白い。それでいて、敵討ちの覚悟を決めた後の男らしさはさすがのかっこよさだ。幼なじみの勘定方・矢頭に扮した岡村は、コメディ作品でありながら芸人らしいボケを封印。金の使い方を知らない藩士たちをよそに淡々とそろばんを弾き、情に訴えようとする内蔵助を、無理なものは無理と冷たく突き放す。意味ありげな目線や表情で、複雑な心情を繊細に表現する。絶妙な間も堤との息のあった掛け合いも見事だ。俳優として抑えた演技に徹し、銭勘定に厳しく冷静なキャラクターを好演した。

主演の2人の他にも、浅野内匠頭を演じた阿部サダヲをはじめ、赤穂浪士役には、濱田岳、妻夫木聡、荒川良々、西村まさ彦、寺脇康文ら名優が出演。さらに上島竜兵や木村祐一に西川きよしらベテラン芸人も名を連ねる。そして、彼らを支える女性たちも見逃せない。

語りを務めるのは、藩主・浅野内匠頭の妻である瑤泉院を演じた石原さとみ。冒頭では当時の金銭の価値を現代のお金へ換算した説明を違和感のない関西弁を披露する。松の廊下での事件も殿の真っ直ぐさに呆れたような言い草で、物語に自然と入り込ませる。よからぬお金の使い方をしている内蔵助を厳しく問い詰め、怒りを露わにする。きりっとした強い口調に、質素ながらも品のある着物姿は貫禄たっぷりだ。うろたえて、争い、欲に走る男たちに対し、堂々とした立ち居振る舞いが美しく、藩主の妻らしい豪胆さが見てとれる。あけすけな物言いではあるが、結局は面倒を見てしまう姉御ぶりが気持ちいい。また、内蔵助の妻・理玖は竹内結子が演じた。家ではすっかり気の緩んだ旦那様へ冷たい視線を送り、無駄遣いしないよう釘を刺す。妾への気配りも忘れず余裕溢れる大人の魅力を見せながら、お産のため内蔵助と別れるシーンでは子供のように泣き喚く姿も可愛らしい。優しい歌声が胸に沁みた。
誰もが知る討ち入り事件の舞台裏、そしてお金の話を興味深く描いた、新しい忠臣蔵。豪華キャストが織り成すリアルな人間模様が楽しめる。人間味溢れる赤穂浪士たち、そして彼らを支えた女性たちにも親近感を抱くに違いない。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
決算!忠臣蔵
放送日時:2022年12月10日(土)19:00~ほか
チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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