深津絵里の変わらぬ透明感と圧巻の演技！恋に不器用なヒロインをナチュラルに演じた「スローダンス」

2021年度後期の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が昨年から今年にかけて大きな話題を集めた。3人のヒロインが紡ぐ100年のファミリーストーリーで、初代ヒロインの上白石萌音、3代目ヒロインの川栄李奈と共に抜擢されたのが2代目ヒロイン・るいを演じた深津絵里だ。

18歳のるいの可憐さは、お茶の間に衝撃を与えた。物語と共に成長し、母・安子へのわだかまりを抱える娘として、川栄演じるひなたの母として、不器用ながらも懸命に生きる女性の人生を演じきった。深津の連続ドラマへのレギュラー出演は「CHANGE」(2008年)以来となる約13年ぶりで、連続ドラマ主演は実に16年ぶり。久しぶりの連ドラ主演だが、変わらぬ透明感と圧巻の演技にSNSでも賞賛が相次いだ。

そんな"カムカム"前の主演作が、2005年の月9ドラマ「スローダンス」。12月12日(月)からフジテレビTWOで放送される本作は、恋することの素晴らしさを熱く爽やかに描くラブストーリーだ。

かつて映画監督を目指していた理一は、周りに流されて自動車学校で教官をしている。ある日、出勤途中のコーヒーショップで女性客・衣咲と言い争いに。彼女は理一が勤める教習所に通っていたが、名前を呼ばれるのを聞いて、理一は衣咲が高校時代の教育実習生だと思い出す。衣咲が理一の教習所に通う中で、理一の友人や兄の英介、衣咲の後輩・実乃との交流が生まれ、若者たちの心が揺れ動いていく...。

映画監督の夢を捨てきれない理一に妻夫木聡、強気だが恋には不器用な衣咲に深津と、実力派の2人がW主演を務めた本作。どこにでもいそうな等身大の男女のリアルな恋愛を2人がナチュラルに演じている。出会いから理一に物怖じせずにずけずけと意見する衣咲は、深津の出世作「踊る大捜査線」シリーズ(1997年～)で演じたすみれとはまた違うタイプの強い女性だ。それでいて感情豊かで、思っていることが素直に顔に出てしまうところも、ちょっと痛々しい空回りぶりも可愛らしい。

マイペースな彼女に振り回される理一の表情も良い。テンポ良く会話が展開し、お互い遠慮なく正直に言い合う姿は夫婦漫才のようだ。なんだかんだ放っておけない理一の優しさも、若さゆえの熱さと真っ直ぐさも心地良い。少しずつゆっくりと、遠回りしたり戻ったりしながら2人の関係は進展。自分らしく生きていくことに背中を押してくれる存在の大切さを実感させられる。

のちにモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞する映画『悪人』(2010年)で再タッグを組む深津と妻夫木だが、本作ですでに息の合った演技を見せていた。2人の他にも理一の友人・幸平役の田中圭や兄・英介役の藤木直人、ショップ店員の後輩・実乃に広末涼子、本社営業の八嶋に小泉孝太郎...と、豪華キャストも多数出演。さらに、西野亮廣(キングコング)など今となっては貴重な配役も楽しめる。

現在公開中の新海誠監督の最新アニメーション映画『すずめの戸締まり』では声優に初挑戦し、話題を集めている深津。第一線で活躍を続ける深津をはじめ、豪華キャストたちのフレッシュで生き生きとした演技を懐かしく堪能したい。

文＝中川菜都美