「ヴィンチェンツォ」と並ぶクァク・ドンヨンのアタリ役！パク・ボゴムとの絆に涙する「ブロマンス」的な面白さ

イ・ジョンソクの除隊後復帰作としても注目を浴びた「ビッグマウス」(2022年)や、コ・ソンヒ＆カン・ミナらと共演したオフィスドラマ「ガウス電子(原題)」(2022年)など、話題の新作が韓国で次々と放送されたクァク・ドンヨン。彼の人気が爆発した「ヴィンチェンツォ」(2021年)以降、新たな映画やドラマのオファーが引きも切らない状態だ。

「ヴィンチェンツォ」では、巨大企業・バベルグループの若き会長・ハンソを演じたドンヨン。敵対していたはずの主人公・ヴィンチェンツォ(ソン・ジュンギ)を無邪気に慕うキャラクターが日増しに注目を集め、身を挺してヴィンチェンツォを守ろうと終盤で見せた"男気"がダメ押しに。主演のジュンギや、初の悪役に挑んだテギョン(2PM)に勝るとも劣らないインパクトをもたらした。

今やスター俳優として熱い視線を集めるドンヨンだが、そのキャリアはFNC ENTERTAINMENTの練習生が始まり。その後、15歳でCNBLUEのカン・ミンヒョクと共演したKBSドラマ「棚ぼたのあなた」(2012年)で俳優デビューを飾った彼は、大ヒット時代劇「雲が描いた月明り」(2016年)で知名度を飛躍的に高めることとなった。

「雲が描いた月明り」は、パク・ボゴム演じる世子イ・ヨンと、訳あって男装で内官として出仕するヒロイン、ホン・ラオンとの恋物語。ボゴムをトップスターの座へと押し上げたこの作品で、ドンヨンが演じたのは世子を陰ながら支える護衛官キム・ビョンヨン役。世子にとっては部下でもあり、唯一本音を打ち明けられる親友という役どころだ。

ボゴム演じる世子をはじめ、B1A4のジニョン演じるエリート官僚キム・ユンソンなど爽やかなイケメンキャラクターに対し、ビョンヨンは黒髪を無造作に束ねたワイルドなルックス。全身真っ黒の衣装も異彩を放ち、ミステリアスな男の色気を見事に体現した。

寡黙で誠実なキャラクターで、忍者のようなしなやかな身のこなしと鮮やかな太刀さばきも、見惚れるほどにカッコいい。激しい殺陣シーンの後、「またつまらんものを斬ってしまった」とでも言いたげな冷めた目つきには、日本のサムライに通じる美学が見え隠れする。

「キム兄貴、大好きです！」とじゃれつく男装のラオンに対して、「馴れ馴れしくするな！」とあしらいながらも人知れず照れている...そんなギャップも堪らない。

一般的にはツンデレ王子(世子)と男装ヒロイン(ラオン)のシンデレラストーリーが主軸として知られているが、明るく奔放な世子と無骨なビョンヨンとの"ブロマンス"的な絆もまた、本作の欠かせない魅力の1つ。

女官たちにキャーキャー騒がれるビョンヨンに世子がヤキモチを焼いたり、お忍びで出歩く世子がつい羽目を外しそうになると、チョンチョンとつついて警告したり...。そうした2人のじゃれ合うような"ケミ"が何とも微笑ましい。実際この共演以降も、ボゴムとドンヨンがプライベートで親しい間柄にあることは広く知られている。

しかしストーリーが佳境に入っていくと、ビョンヨンが厳しい立場に立たされ世子との親しみ溢れる主従関係にも危機が訪れる。命をも預け合える信頼を築いてきた2人の関係性そのものが、ドラマ全体を左右するカギになっていくのだ。

「雲が描いた月明り」以降、「サム、マイウェイ～恋の一発逆転！～」(2017年)でキム・ジウォン演じるヒロインの浮気性な年下彼氏、「サイコだけど大丈夫」(2020年)で露出癖のある国会議員の息子など、特別出演ながらクセのあるキャラで話題を振りまいてきたドンヨン。

その一方で、チャ・ウヌ(ASTRO)演じる主人公とライバル関係になる大学院生を演じた「私のIDはカンナム美人」(2018年)しかり、「ヴィンチェンツォ」しかり、共演俳優との"ケミ"が評判にあがることが多いのも、彼ならではの魅力がもたらす効果かもしれない。現在25歳、まだまだ若手とされる世代のドンヨンが、今後、主役級スターとしてどのようなキャリアを築いていくのか？目が離せそうにない。

文＝酒寄美智子