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ギラギラした松方弘樹の圧倒的な存在感と真に迫った演技に震える映画「北陸代理戦争」【無料放送】

2022/12/09

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"昭和の銀幕スター"の一人である松方弘樹。だが、年配の方はまだしも多くの方は、松方が"昭和の銀幕スター"であることは知っていても、物まねのネタになるほどバラエティーで笑う姿が印象的な優しい人物だったり、巨大マグロと雄々しく戦う海の男というイメージも強く、俳優として圧倒的な存在であったことにピンと来ないのではないだろうか。そんな方々に、ぜひ観てもらいたい作品が映画「北陸代理戦争」(1977年)だ。

同作は、深作欣二監督が描く任侠映画で、雪と寒風吹き荒ぶ北陸を舞台に盃よりも土地を大事にするやくざの抗争劇を描いたバイオレンス異色作。主演の松方は親・兄弟・盃を一切無視し、生きるためならなりふり構わず手段を選ばぬ北陸やくざ・川田登を演じる。また、千葉真一、伊吹吾郎、ハナ肇、西村晃、野川由美子、高橋洋子、地井武男、小林稔侍ら数々の名優たちも出演。

現代社会同様、やくざ社会も地方の小組織はその存在を維持・拡大するために、中央勢力との結びつきを深めなければならない時代になっていた。こうした時世に一気に全国制覇を目論む西日本最大の組織・大阪浅田組は、山陰・中部に続き、北陸侵略を画策。そんな中、北陸富安組若頭・川田(松方)は、日頃から折り合いの悪い親分・安原(西村)と舎弟分・万谷(ハナ肇)が大阪浅田組の切り込み隊・金井(千葉)と盃を交わしたのを逆手にとり、浅田組の本流の若頭の舎弟となって自分の親に盾突く。

吹雪の中、親分である安原を地中に埋め、その周りをジープで走りながら引退宣言を要求する川田を映す冒頭から、圧倒的な画力と作品が発する熱量、息もつかせぬジェットコースター展開など、脂が乗り切っている当時の深作監督の、作品に懸ける並々ならぬ熱い思いが十二分に伝わってくるのだが、その監督の熱量に対等に渡り合っているのが松方の存在感だ。

作品の画力、ストーリー展開、迫力などに埋もれることなく放つ彼の輝きは、「松方でなければこの作品は成立しなかっただろう」と妙に納得されられてしまうほど。

川田は、やくざ社会ならではの上下関係など意に介さず、腕っぷしが強く何をしでかすか分からない人物で、組織としても目に余る存在というキャラクター。大組織にも臆することなく攻め入るシーンが続くのだが、その時の松方の「天上天下唯我独尊」を地で行くようなオーラに、息をするのも忘れてしまう。細かく言えば、相対する目上の人物に向ける眼差しの鋭さや言葉とは裏腹に本心は服従していないことを表す目の奥に宿した光、不遜な態度、強者ならではの声の荒げ方など、挙げるとキリがないのだが、それら全体を含めた体中から醸し出される日本刀のような圧倒的で鋭い存在感が、危険さ故の美しさや魅力をはらんでいてつい目を奪われてしまう。

大物のイメージとは一線を画す、ギラギラとした力がみなぎっている時代の松方の圧倒的な存在感を感じて、"昭和の銀幕スター"たるゆえんに触れてみてほしい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

北陸代理戦争
放送日時:2023年1月1日(日)15:00~(無料放送)
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくは
こちら

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