田村正和といしだあゆみ、時代を駆け抜けたスターの若き日の熱演を見られる映画「われら劣等生」

代表曲「ブルー・ライト・ヨコハマ」など、聴く者の心にスッと入り込んでくるような温かな声と自然体の演技で、昭和から令和の芸能界に確固たる足跡をのこした女優・歌手のいしだあゆみ。彼女が、同じく日本の芸能界に唯一無二の個性で圧倒的な存在感を放った名優・田村正和と共演した青春映画が、1965年公開の「われら劣等生」だ。

(C)1965松竹株式会社
みち子(いしだ)らクラスメイトと青春の日々を過ごしていた東和高校3年生の新聞部員・横田大助(田村)。2人きりの家族である母・とき子(寺島信子)には松本という名の恋人がいたが、大助は「おふくろもまだ若いんだから」と割り切っていた。卒業も間近になり、金銭的な事情で大学進学を諦めなくてはならないと覚悟した大助は、勉強する目的を喪失。日頃の授業でも不真面目な態度を取り、大学進学組のクラスメイトと対立する。そんなある日、大助はとき子から「松本のサポートで大学に行けるかもしれない」と言われ、動揺をおさえることはできなかった。そんな折、大助と同じ新聞部員の清水哲夫(安達明)が、編集会議の席上で「ミス東和高校人気投票」の企画を提案する...。
■時代を駆け抜けたスター!田村正和といしだあゆみのみずみずしい演技

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鈴木亮による書籍「現代高校生気質・われら劣等生」を原作に、1960年代前半の高校生たちの日常を味わい深いモノクロームの映像で綴る本作。主人公の大助を演じた田村は、"どこか影のある美少年"という、自身の生まれ持った個性を最大限に活かせる役柄をナチュラルに表現。冒頭シーンで見せる、クラスメイトの女子との口論でのリズミカルなセリフの掛け合いからも、当時20代前半だった彼のみずみずしさが伝わってくる。

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一方のいしだは、国語の時間に「ハムレット」のオフィーリアになる夢を見ており、教科書を朗読させられてクラスメイトに笑われるというシーンで初登場。みち子というキャラクターをいきいきと演じ、観る者に強い印象を残した。
2人が初めて言葉を交わすのが、とある放課後だ。今で言うワンルームに母と2人で暮らす大助は、家に母の恋人が来ていることを知り、道端で時間を潰していた。そんな大助の姿を発見し、みち子は無邪気に声をかける。友人とデパートでウィンドウショッピングをしてきたと笑顔を浮かべるみち子に「早く帰らないとだめじゃないか。勉強があるんだろ」と優しく注意する大助。ここから始まる2人だけのシーンでは、大助の家庭の事情や、あえて劣等生でいることを選んでいる理由などが明かされていく...。みち子が大助に特別な想いを抱いているのを伝えてくるいしだの少し甘えた声や、大助がみち子に心を開いていると感じられる田村の優しい声の調子など、遠景でのカメラワークだからこそ際立つ彼らの表情に頼らない演技力が味わえる名場面だ。
ミスコンテストの開催を知って密かに闘志を燃やす女子たちなど、当時の高校生たちの等身大の姿を流行歌も盛り込みながら描く本作。今観ても斬新なカメラワークや演出などにも注目しながら、いしだと田村という時代を駆け抜けたスターたちの若き日の熱演を堪能してほしい。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
われら劣等生
放送日時:2025年6月27日(金)0:15~、7月5日(土)11:30~、7月22日(火)8:15~ほか
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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