長澤まさみの健気さと涙の訴えが圧巻!明智光秀を演じる唐沢寿明の殺陣も魅力のドラマ「明智光秀-神に愛されなかった男-」

「敵は本能寺にあり」という名言を知る人は数知れないが、名言の主である戦国武将・明智光秀の真の姿を知る者はどれほどいるだろうか。そんな光秀の半生を彼の人間的な側面に光を当てて描いた時代劇「明智光秀-神に愛されなかった男-」が、1月2日(月・祝)に時代劇専門チャンネルで放送される。光秀を主人公とした本作では従来の「逆賊」「策略家」といったマイナスのイメージを払拭するような、戦のたびに苦悩し民と家族への思いを貫き通す光秀の姿が描かれている。

戦国時代、武将の明智光秀(唐沢寿明)は、織田信長(上川隆也)と足利幕府の後継者である義昭(谷原章介)を引き合わせた手柄により、信長の家臣として重用されるようになる。家臣の中には信長から"猿"と呼ばれ気に入られていた木下藤吉郎、のちの豊臣秀吉(柳葉敏郎)もいたが、何事にも生真面目な光秀は奔放で何かと信長に取り入ろうとする秀吉に対して不満を募らせるようになる。光秀が心安らぐひとときといえば、妻・ひろ子(長澤まさみ)や子供たちと過ごす時間だけであった。その後、功を重ね信長の信頼を得ていった光秀は、信長から驚くべき命を受ける。それは光秀を総大将とし、信長を狙う残党が潜むという寺を焼き討ちにする比叡山攻めだった。仏の座する寺を焼くという信長の命に、光秀は苦悩を深めてゆくことになる。

光秀は戦国一の愛妻家としても知られる人物だが、そんな光秀の妻・ひろ子を演じたのが長澤まさみだ。大河ドラマ「功名が辻」(2006年・NHK)で男をたぶらかす愛くるしい忍者を演じた長澤は、本作では一転して物静かでたおやかな武将の妻に扮している。深い苦悩を抱えた夫に静かに寄り添い、風格ある光秀の隣に立っても遜色ないほど落ち着きはらった妻としての姿を見せた長澤だが、当時19歳だったというのだから驚きだ。なかなか家に戻れない夫を健気に待ち、ときに少女のように愛らしい表情を見せる長澤。その可憐な笑顔を見れば、光秀が生涯ひろ子だけを愛したというのも納得がいくだろう。そんな彼女も、光秀の比叡山攻めには厳しい面持ちで異を唱える。夫と子らを愛するがゆえの涙の訴えは圧巻の一言だ。
従来の解釈を覆す新たな光秀を演じるのは唐沢寿明。生真面目で誠実、教養がありながら戦の場では見事な刀さばきを見せる文武両道の光秀を好演し、鎧をまとっての殺陣も披露している。このドラマで最も重要な軸となるのが過去にはあまり光の当たることがなかった光秀の人間性だが、唐沢はそれを見事に具現化した。妻・ひろ子から「眉間にお皺が」と言われるように、武勲を立てることと戦の世を終わらせたいという彼の願いは常に衝突し、光秀の表情には陰りが刻まれていく。天下布武へと突き進む信長に、なぜ光秀が反旗を翻すことになったのか。ここにはこのドラマの大胆な解釈があるのだが、謀反への決意を語る彼の清廉な表情には涙を禁じ得ない。光秀の人物像に新たなイメージを与えた本作の功績は、唐沢の演技なくしては語れないだろう。

唐沢と長澤の他にも、信長役の上川隆也、秀吉役の柳葉敏郎、光秀の婿養子である秀満役の大泉洋など、豪華な面々の重厚な演技が深い人間ドラマを紡ぎ出す本作。特に対照的なライバルとして反発しつつも絆を深めていく光秀と秀吉の関係性や、上川が見せる狂気じみた信長の姿は見どころだ。
文=本永真里奈
放送情報【スカパー!】
明智光秀-神に愛されなかった男-(主演:唐沢寿明)
放送日時:2022年1月2日(月・祝)11:45~ほか
チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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