本田翼のナチュラルなリアクションに好感！町田啓太との好相性ぶりも際立つ「嘘から始まる恋」

遂に12月20日(火)に最終回を迎えるドラマ「君の花になる」では、7人組ボーイズグループ・8LOOM(ブルーム)を寮母として支えるヒロイン・仲町あす花役が大きな注目を集めた本田翼。教師時代のかつての教え子でグループの中心的存在・佐神弾(高橋文哉)との恋愛模様がSNSでも大いに話題を呼んだが、同じく等身大の"胸キュン"ロマンスとして、2021年6月に放送された単発ドラマ「嘘から始まる恋」では、とびきり明るい彼女の魅力が存分に発揮されている。

『四月は君の嘘』(2016年)や『午前0時、キスしに来てよ』(2019年)など、恋愛映画の名手として知られる新城毅彦監督が手掛けた本作で、本田が演じる葛西莉子は、10年付き合った彼氏に婚約を破棄され、失恋の末に青森から上京した27歳の女性。

自称・カリスマショップ店員の従姉妹・篠原友里(山本舞香)の家へ転がり込み、新たな出会いを求めて、銀座のナンパスポットを訪れた2人に、ナンパ上手で人当たりの良い泉晴彦(神尾楓珠)が早速言い寄ってくる。言葉巧みに近づいてきた晴彦は、大手商社勤務の先輩・鴨下淳之介(町田啓太)を引き合わせる。飲み過ぎて津軽弁でクダを巻く莉子は、自分を"ハズレ扱い"する淳之介と言い争いに...。こうして"最悪の出会い"を果たした2人のロマンスが始まっていく。

主人公の莉子は、婚約までした彼氏に二股をかけられた末にフラれたことから嘘にトラウマを抱えている。恋を信じられなくなってしまい、自分を幸せにしてくれる人を見つけるために上京した矢先、淳之介と出会う。飾らない素朴さと少し天然な雰囲気を持ちながら、「嘘偽りのない真実の恋を見つける」と熱く語り、酔ってクダを巻くなど意外な一面も見せる。初挑戦の津軽弁が何とも可愛らしい。笑ったり怒ったり感情表現も豊かで、不器用でも真っ直ぐな彼女に淳之介も少しずつ心を動かされていく。

一方の淳之介は、高スペックだが上から目線で口が悪く性格にやや難がある。さらに自分に嘘をつかないと恋が始められないという悪癖まで持っている。怪しいナンパ男からかっこよく助けるつもりが酔い潰れてしまったり、ムキになってコンプレックスを覗かせたり。完璧な男を演出しきれないところや、都会の男を自称するなど、なかなかに痛いナルシストぶりが笑いを誘う。正統派イケメンの町田が演じる"残念な三枚目"が、本作のコミカルな世界観を盛り立てている。

また、山本と神尾が演じる友里と晴彦の2人もそれぞれ嘘を抱えている。従姉妹ゆえに莉子には遠慮のない厳しいアドバイスもする友里は、勝ち気な野心家。恋愛に対しても現実的な考えを持つサバサバ系女子が、山本にハマっている。時折見せる弱さや可愛らしい姿とのギャップも絶妙だ。

友里に興味を抱くのは、淳之介の後輩で頼りがいのある晴彦。ちょっと残念な先輩・淳之介よりできる男の雰囲気を滲ませつつ、年下らしく上手に相手を立てながらちゃっかり甘えてくる。可愛すぎる寝顔まで見せてくれる、神尾の甘いビジュアルを存分に生かした"子犬系男子"がたまらない。

そして、本作には鉄板の"胸キュン"ポイントがふんだんに盛り込まれている。ごちそうを頬張る莉子の至福の表情や彼女につられてこぼれる淳之介の素の笑顔、ふいに触れ合う手と手、ハプニングで押し倒されるなど、ナチュラルな演者の表情にときめくこと必至だ。

さらに、心の声やチャットで本音と建前が行き交い、嘘に気づきながらも騙されたフリをしたり決定的な言葉を得ようと奮闘したりと、さまざまな恋の駆け引きも展開する。心にもない言葉をぶつけてすれ違う莉子と淳之介や、友里のピンチを救う晴彦の隠し事など、ここぞというところで効いてくる"嘘"の演出も心憎い。

出会いから恋愛へスイッチしていくリアルな姿が共感を生む本作。クセの強いキャラクターばかりだが、本田翼らキャスト達の自然体な演技からはリアリティが感じられた。恋愛映画の名手・新城毅彦監督が紡ぎ出す"恋のときめき"に存分に浸れる1作だ。

文＝中川菜都美