亀梨和也が敏捷なスパイ役、深田恭子が七変化のビジュアルで新境地を開く娯楽映画の王道「ジョーカー・ゲーム」
戦争や他国への侵略はあってはならないことだが、エンターテイメントである映画においては戦時にスパイが活躍する物語がいちジャンルを形成し、何度も題材になってきた。特に第2次世界大戦時、日本が上海などの国際都市を占拠していたときに日本軍と欧米各国のスパイが暗躍したという設定は、史実がベースになっているだけに魅力的だ。2015年公開の映画「ジョーカー・ゲーム」では、歴史サスペンスの得意な作家・柳広司による小説を基に、主人公の嘉藤次郎(亀梨和也)が架空の国際都市・虹楊でアメリカ大使邸から新型爆弾の製造法が書かれた極秘書類、通称ブラックノートを奪取するべく奮戦する。
嘉藤は偽装用の仮名で、もともと彼は陸軍士官だった。しかし、上官に暴力を振るったとして銃殺刑になったところを、極秘諜報組織である「D機関」を率いる結城中佐(伊勢谷友介)に救われる。スパイとしての訓練を受けた彼は街の写真館の主人と偽ってアメリカ大使に接近。大使邸で美しいメイドのリン(深田恭子)と出会い、彼が大使に関係を迫られているところを救う。そして、ある夜、ブラックノートを狙って大使邸に忍び込むが...。
ほぼ孤立無援でアメリカやイギリスの軍人たちと渡り合う嘉藤。バトルシーンが満載で、亀梨和也は彼ならではの敏捷さを活かし、スピーディーなアクションを見せる。10代、20代の頃は高校生役などで、今どきの男子をリアルに演じてきた彼だが、30歳になるときに出演したこの映画では大人の俳優へと新境地を開いている。誰も信用できないスパイの世界で、「情にもろい」と批判される嘉藤が失敗しつつも人間らしさを失わない姿は、応援したくなる。
また、ジェームズ・ボンドが活躍する「007」シリーズを例に挙げるまでもなく、このジャンルには美しいヒロインが付きもの。深田恭子は上品なメイド服姿やチャイナドレス、後の代表作「ルパンの娘」を連想させる体にフィットする衣装などを着こなしながら、二面性のある役を演じている。フカキョンのこんな姿が見たかった!というビジュアルが次々に出てきて、ファンなら一見の価値ありだ。
他にも原作小説のイメージにぴったりな結城役の伊勢谷友介、軍服姿と言えばこの人という"待ってました"感がある「帝都物語」の嶋田久作などが出演。監督はは映画版が2023年に公開される「ネメシス」の入江悠。新型爆弾について交わされるセリフなどに、娯楽映画の中にも日本の負の歴史に対する反省が込められており、監督たち作り手のこだわりが感じられる。
文=小田慶子
放送情報【スカパー!】
ジョーカー・ゲーム
放送日時:2022年1月12日(木)18:50~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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