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前田敦子の母性溢れる表情に引き込まれる...高良健吾、白洲迅らと表現する「戻れない青春時代」への郷愁

2023/01/13

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「葬式の名人」
「葬式の名人」

2023年の年明け早々、「そして僕は途方に暮れる」「あつい胸さわぎ」など出演映画が相次いで公開される前田敦子。

シネフィルとしても知られ、監督・黒沢清×企画・秋元康で製作された主演映画「Seventh Code」(2014年)など、"映画女優"として着実にキャリアを重ねる彼女が主演を務めたのが「葬式の名人」だ。前田は本作で、初の母親役にして、女手一つで息子を育てるシングルマザーのたくましさと葛藤を体現。味わい深い演技を見せている。

前田敦子が初の母親役を演じた映画「葬式の名人」
前田敦子が初の母親役を演じた映画「葬式の名人」

(C)「The Master of Funerals」 Film Partners

ノーベル文学賞受賞作家・川端康成の作品を原案に、川端が18歳まで過ごした大阪府茨木市で撮影を敢行した本作。ある日シングルマザーの雪子(前田)のもとに、高校時代の同級生・創(白洲迅)の訃報が届く。卒業から10年が経ち、久しぶりに母校で顔を合わせた面々が、これまで見たことも聞いたこともない、奇想天外なお通夜を開く姿を描く。映画評論家で、本作が2作目の監督作となった樋口尚文がメガホンをとった。

本作で前田は、全編にわたって関西弁&初の母親役というチャレンジを果たした。工場で働きながら、一人息子で小学生のあきおを育てている雪子。小さなアパートでの暮らし向きを見ると、生活は決して楽ではないことがわかるが、雪子は愛情を注ぎながらあきおを育てている。あきおの食べ物がついた口元を愛おしそうに拭ったり、眠る子供の頭を優しく撫でたりと、前田が自然と覗かせる母としての表情は胸がキュンとなるほど輝いている。

小さな頃に両親を亡くし、16歳で祖父を亡くした雪子は、創から"葬式の名人"と評されるなど、背景に孤独と悲しみを抱えている女性だ。創との間にも複雑な感情があり、前田は時には不機嫌な顔を見せながら、雪子の生き様を表現した。一筋縄ではいかない、雪子の繊細な心の揺れが本作の大きな見どころだ。

「葬式の名人」
「葬式の名人」

(C)「The Master of Funerals」 Film Partners

雪子と創の同級生で、創のことが大好きな青年・豊川大輔を演じるのは、高良健吾。死という極めて重いテーマを扱いながらも、「創を高校に連れて行こう」と同級生たちが棺を担ぎながら学校を歩き回るなど、軽やかでコミカルな色合いを持つ点も本作の魅力だが、高良が見事にコミカルパートの役割を見事に担っている。真っすぐで、どこかとぼけた大輔の登場シーンは、クスリと笑わせてくれる。そして元野球部のエースで、突然の死を迎える創に扮したのが、白洲迅だ。出演シーンは少ないものの、さわやかな風を吹かせるような演技を披露しており、大輔が憧れるような説得力もたっぷりだ。

また、川端康成の世界を象徴する謎の女役で、日本映画界の至宝・有馬稲子が出演している点も見逃せない。小津安二郎や内田吐夢など、日本映画界のレジェンドとも言うべき巨匠とタッグを組んできた有馬は、本作でファンタジックなシーンで登場。素晴らしい存在感を発揮している。実力派俳優が顔を揃え、戻れない青春時代への郷愁、大切な人との別れといった人生の悲哀を、笑いと優しさで包み込んだような人間ドラマとなった。

文=成田おり枝

放送情報【スカパー!】

葬式の名人
放送日時:2023年1月23日(月)19:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくは
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