中島裕翔が演じたスーツの似合う好青年がハマり役！名作ラブコメ「デート～恋とはどんなものかしら～」

男女の関係が逆転したパラレルワールド時代劇「大奥（8代・徳川吉宗×水野祐之進編）」に出演し髷姿が話題になったり、2月には主演映画「#マンホール」が公開されたりと、中島裕翔の俳優としての注目度が急上昇中だ。

アイドルグループ・Hey! Say! JUMPのメンバーである中島は2005年、12歳の時に木村拓哉主演のドラマ「エンジン」で役者デビュー。小学生の頃から役者経験を積んでいるだけあって、演技派として知られている。

いろいろな役柄がある中で、中島のハマり役という声が多いのが「半沢直樹」の中西英治や、「SUITS／スーツ」の鈴木大貴のようなスーツの似合う真面目な好青年役。2015年に放送されたラブコメドラマ「デート～恋とはどんなものかしら～」でもその本領を発揮。スポーツ用品の会社に勤める青年・鷲尾豊役として出演し、熱いキャラクターと演技力で見る者の心を揺さぶってくれる。

「デート～恋とはどんなものかしら～」は、杏が演じる藪下依子と、長谷川博己が演じる谷口巧が結婚を目指すことで巻き起こる騒動を描いた物語。主人公の依子はいわゆる「リケジョ」だが、理論的、合理的すぎて魅力に欠けるところがあり、巧は部屋に籠もり映画や小説、漫画に没頭する無職の「ニート」。お互い恋愛に興味はなく、周囲からも「恋愛不適合者」と呼ばれているが、やむにやまれぬ事情で婚活を開始する。

そんな変わり者の2人の間に割って入るのが中島演じる豊だ。彼は依子の父・藪下俊雄(松重豊)と剣道仲間で、さまざまな形で接している間に依子に惹かれていく。スポーツマンで真面目で、背も高くてイケメンな豊は、多くの女性にとって魅力的な男性に映るはず。しかし個性極まる依子が相手なだけに、物語の序盤は悲しいことに、三枚目的な役割を果たすこととなる。

依子と巧の初デート後の船内で、依子が巧に惹かれた理由を説明するシーンでは、顔を輝かせる依子の背後でその言動が理解できずに不思議そうな表情で佇む豊。依子と巧が「結婚に恋愛感情は必要ない」との意見で一致した時も、「結婚に必要なのは愛情だ」との信条を持つ豊はうろたえるばかりだ。挙げ句「展開についていけない...」とこぼす姿はやるせなさに満ち溢れている。

その後も依子からクリスマスプレゼントを誤って受け取って狂喜したり、クローゼットの中でうなぎパイを握りしめてすすり泣くシーンなどがあるが、何があろうとまっすぐな豊役を中島がしっかり演じているからこそ、依子と巧の個性が際立ち、ストーリーが盛り上がっていく。

物語の中盤で巧に「依子さん、奪ってみせます」と宣戦布告をしてからは、豊がより物語の前面に出てくる。依子に交際を求める時の真剣な表情、また依子との初デートではイキイキとした幸せな空気を纏い、依子がより美しくなるよう服やコンタクトをプレゼントしたりもする。好青年である豊が依子を愛する気持ちが、ごくごく自然に伝わる演技を見せてくれる。

そして紆余曲折を経て迎えたラスト前において、依子自身さえ気づいていなかった彼女の気持ちを知った時の潔い号泣には、多くの視聴者が瞳を潤ませることだろう。その瞬間は中島ではなく、「依子を愛していた鷲尾豊」が確かに画面の中にいる。そう言っても過言ではない名シーンだ。

本作は第84回ザテレビジョンドラマアカデミー賞で最優秀作品賞など5部門を受賞、他のドラマ賞でも受賞するほど高い評価を得た作品だ。中島をはじめ杏や長谷川博己の演技、そして秀逸なシナリオと構成を、それぞれの恋模様に泣いたり笑ったりしながら、ぜひ楽しんでほしい。

文＝堀慎二郎