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2023/01/25

大沢たかおと石田ゆり子が繊細な演技で表現する恋人同士の思いに涙必至の映画「解夏」

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2023年7月に公開を控えている映画「キングダム 運命の炎」にも出演するなど、最新の話題作でも、その演技力と存在感を示し続けている俳優・大沢たかお。そんな大沢が主演を務め、日本アカデミー賞主演男優賞を初めて獲得したのが2004年に公開された映画「解夏」だ。原作はシンガーソングライター・さだまさしによる同名小説。実は大沢とさだの縁は深く、2015年には大沢がさだの名曲「風に立つライオン」に惚れ込んで小説化を直々に依頼し、その小説を原作とした同名映画を企画、主演したほど。

映画「解夏」は、大沢がまだ30代半ばだった頃に公開された映画で、メガホンをとっているのは磯村一路監督。ロケはさだの故郷でもある長崎で行い、大沢は徐々に視力を失っていく難病に冒された隆之を演じている。隆之の恋人で留学中の陽子を演じるのは大沢と同世代の石田ゆり子で、脇を固めるキャストには富司純子、林隆三、松村達雄、古田新太、柄本明など実力派が出演。美しい長崎の風景の中、眼が見えなくなる恐怖と闘う主人公・隆之と、そんな彼を必死で支えようとする恋人・陽子の姿が描き出されていく。タイトルの「解夏」とは「僧侶が世俗を離れ、夏の間90日間こもって修行する『安居』の終わり」を意味する言葉。切なくも生命の尊さや自然の息吹を浮き彫りにする本作で難役に挑んだ大沢と、変わらぬ美貌が「奇跡」とまで言われている石田が本作で見せた演技とは?

■お互いを思いやる大沢と石田の演技に涙する人続出!

「解夏」に出演する大沢たかおと石田ゆり子
「解夏」に出演する大沢たかおと石田ゆり子

(C)2003 フジテレビ 幻冬舎 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ

子供たちに慕われている小学校の教師・隆之は、ある時、経験したことのない発作に襲われる。医師をしている同郷の幼なじみ(古田新太)のもとを訪ねると「ベーチェット病」だと診断され、失明する可能性があることを告げられる。病の宣告を受けて教師を辞めることにした隆之は、モンゴルにいる恋人の陽子には連絡をとらず、自身の恩師でもある陽子の父親(林隆三)には本当のことを告げてから、母(富司純子)の暮らす故郷の長崎に帰ることを決める。

そんな中、父親から隆之の病気のことを知らされた陽子は日本に飛んで帰るが、陽子の夢を壊すわけにはいかないと荷物をまとめている隆之に「私の幸せを勝手に決めないでよ!」と激怒して出ていってしまう。しかし、水臭い恋人を放っておけない陽子。長崎で友人たちに会う日々を過ごしている隆之のもとを訪ね、「あなたの目になりたい」と隆之を抱きしめる。信じがたい事実を受け入れて、隆之と共に過ごす覚悟を決めた陽子と、愛する人の足でまといにはなりたくないと葛藤する隆之。長崎の海や寺を2人で歩き、高台から見える風景を陽子に教えたいと思っても、すでに隆之の視界にはモヤがかかり始めていた。雨が降ってきて土砂降りの中、階段から落ちてしまった隆之が、陽子の手を振り払い「1人にしてくれ!」と叫ぶシーンは一際切なく、胸が痛くなる。「相手に幸せになってほしい」「弱っていく自分の姿を見せたくない」と思うからこそ苦しむ主人公の心情を大沢が豊かな演技力で表し、好きだからこそ寄り添いたいと願う陽子の愛の深さを石田が表現している。

■徐々に眼が見えなくなる過程を細やかな演技で大沢が見せる

母親にも陽子にも自分の病気のことを明かさなかった隆之が心を開いた人物が、寺を訪ねた時に出会った老僧であり、大学で郷土史を教えている林先生(松村達雄)だ。視力を失う病気を患っていると話す隆之に「解夏」という言葉の意味を教え、「失明した瞬間に恐怖からは解放される。その時が隆之にとっての解夏だ」と穏やかな口調で話してくれたことがきっかけとなり、その後も隆之は彼のもとを訪ねるようになる。

林先生の自宅の庭の椅子の位置を手で確かめるようにして座る仕草、坂道と階段の多い長崎の街を歩く時の動作など、徐々に視力が落ちていく主人公の日常を大沢は細やかでリアルな演技で見せる。

ラブストーリーの枠にはおさまらない深いテーマが、観る人の心に余韻を残す作品だ。

文=山本弘子

放送情報

解夏
放送日時:2023年2月13日(月)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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