「財閥家の末息子」が反響を呼んだソン・ジュンギが体現する「心の闇」...好青年というイメージを払拭した「大人のメロドラマ」

昨年末に最終回を迎え、2022年のミニシリーズとしては最高の視聴率を叩き出した主演ドラマ「財閥家の末息子」が反響を呼んだソン・ジュンギ。12月に撮影を終えたノワール映画「ファラン」も公開を控えるなど、昨今の出演作ではカリスマ性溢れる重厚な演技が、毎回話題を集めている。
俳優としてベテランの域に差し掛かり、順調なキャリアを築くジュンギ。そんな彼に、代表作「太陽の末裔~Love Under The Sun~」(2016年)のような身を焦がすロマンスを期待してしまうファンも多いのではないだろうか。
(C)KBS
今から約10年前、心に闇を抱えた大人の男を演じ、爽やかな好青年というイメージを覆した正統派のメロドラマが「優しい男」(2012年)。「太陽の末裔」がジュンギにとって除隊後復帰作であるのに対し、「優しい男」は入隊前最後の出演作にして、27歳のジュンギにとって初めてのドラマ主演となった話題作だ。
「トキメキ☆成均館スキャンダル」(2010年)や「根の深い木~世宗大王の誓い~」(2011年)でじわじわと注目度を高めていたジュンギが、その人気を確かなものにした作品でもある。

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「優しい男」は、幼い頃から一途に愛していた女性ハン・ジェヒ(パク・シヨン)に裏切られた元医大生のカン・マルが主人公。ジェヒのために罪を被り服役してもなお、想いを振り切れないマルの前に、心の冷え切った財閥の娘ソ・ウンギ(ムン・チェウォン)が現れ、心が揺れ動いていく。ジュンギはこの作品で、その年の「KBS演技大賞」最優秀演技賞を受賞するなど、俳優としても高い評価を得た。
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ジュンギ演じるマルはもともと、貧しいながらもまじめで誠実、優秀で将来を嘱望された医大生だった。だが、娼婦の母の下で孤独な幼少期を送ってきたジェヒを救うため、人生を棒に振ってしまう。一方のジェヒは、マルが服役している間に財閥のソ会長と結婚。そうとは知らず、出所後もジェヒを待ち続けたマルは昔とは違い、高慢で近寄りがたい存在になっていた。
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「優しい男」というタイトルに反し、出所後は女たちを翻弄する"ツバメ"として生きるマル。その姿は一見、優しいどころか"悪い男"と言いたくなるほど。だが、サディスティックな冷たい眼差しの奥には、ジェヒに裏切られたと知りながらも彼女に固執し、忘れることができない情の深さを隠している。そんなマルの深みのあるキャラクターにハマるファンが続出。2012年の放送時には"ソン・ジュンギ・アリ(病)"の名がつくほどの熱狂的視聴者を生み出した。
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傷ついたマルはウンギに出会い、次第に惹かれ合っていく。財閥の後継者として徹底的な教育を受けて育ったウンギは、人前で軽々しく感情を見せることのない冷酷な女性。誰も信じず、誰にも心を開かず生きてきたウンギだったが、マルと出会って徐々に気になり始め、やがて彼を手に入れたいと思うようになる。
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互いに心に痛みを抱えた2人は共鳴し、思いを通わせるうちに互いの心の傷を癒やしていく。2012年の「KBS演技大賞」では、ジュンギとウンギ役のムン・チェウォンが揃って最優秀演技賞を受賞。さらに、視聴者が選ぶベスト・カップル賞を受賞するなど、「優しい男」のマルとウンギはその年を代表するカップルとなり、それまで好青年のイメージが強かったジュンギにとっても、新たな境地を拡げ"大人の男"としての魅力を開花させた。
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ジュンス(XIA)が歌う情熱的なエンディング曲「愛は雪の花のように」も、その美しくも切ない作品の世界観を盛り立てる。苦しみばかりの人生を歩みながらも愛を期待せずにいられないキャラクターたちが、哀しくもいじらしくて、中毒的なストーリーにのめり込んでしまう。情熱がほとばしるジュンギの熱演にも目が奪われる名作だ。
文=酒寄美智子
放送情報【スカパー!】
優しい男
放送日時:2023年2月20日(月)23:20~、2月25日(土)15:00~
※毎週(月)(火)23:20~、毎週(土)15:00~
チャンネル:KBS World
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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