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2023/07/30

当時20代の石田ゆり子がヒロインと極道の世界に生きる女性の2役を演じた「静かなるドン」

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「静かなるドン<中山秀征版>」(ファミリー劇場)
「静かなるドン<中山秀征版>」(ファミリー劇場)

柔らかい微笑みと癒やし系の声、そして自然体の演技で知られる女優・石田ゆり子。1988年11月放送のドラマ「海の群星」で女優デビューを果たして以降、清楚なビジュアルと親しみやすい存在感で、数々のドラマや映画で活躍している。そんな石田が1994年に出演したのが、ドラマ「静かなるドン<中山秀征版>」だ。

女性下着メーカー「プリティ」に勤務する落ちこぼれ社員・近藤静也(中山秀征)。実は、関東最大の暴力団・新鮮組二代目総長の息子である静也は、父親が何者かに襲われて命を落としたことを機に、三代目を襲名することになる。昼は平凡なサラリーマン、夜は三代目総長。思いを寄せる同僚の秋野明美(石田)にはそのことを絶対に打ち明けられない状況の中、静也はある夜、明美と会社の先輩たちがチンピラに絡まれているところを目撃する...。

石田が演じるのは物語のヒロインとなる秋野明美。第1話は、ランジェリーモデルが身につけている下着をクローズアップするという刺激的なシーンからスタート。「注目を浴びるならなんでもOK」だった昭和時代の影響が色濃く残るきわどい映像だが、不思議といやらしさを感じないのは、その背景に流れる石田の爽やかな声のおかげだろう。しっかりとした肩パット入りの赤いミニスカタイトスーツに、おでこを出すカチューシャスタイルといった放送当時の流行を反映したファッションに身を包んだ石田は、中山演じる静也が憧れる女性として登場。ランジェリーデザイナーとしての才能に溢れているだけでなく、大勢の前でデザインにダメ出しされ、「センスがない」と落ち込む静也を「自分の可能性を信じて」と励ます優しい心の持ち主でもある。そんな明美を石田は、持ち前の清楚な美貌に加え、温かな声で体現した。

中山秀征が主演を務める「静かなるドン<中山秀征版>」
中山秀征が主演を務める「静かなるドン<中山秀征版>」

(C)光和インターナショナル

明美という、誰もが「石田の当たり役のひとつ」と思える役どころを演じている一方、石田は、本作で「極道の妻」にも挑戦。全国制覇の夢を実現するために静也の命を狙った大阪の鬼州組四代目・坂本(美木良介)の未亡人・龍子を、1人2役で演じているのだ。
第18話のエンディングで、強めのメイクと美しい和装を披露したのを皮切りに、最終話となる第19話では、喪服姿と柔らかながら凄みを感じさせる関西弁で静也と対決。クールな表情と気品に満ちた立ち居振る舞いといった凛々しい一面を披露している。そして、華やかなロングパーマヘアにサングラスと赤いルージュをつけた今までにないファッションや、毛皮のロングコートに身を包みながら、自分に銃口を向ける静也に対し、嫌悪感を隠さない表情で「クズや。あんた、ほんまのクズや」と言い捨てるなど、石田の清楚なイメージを覆す熱演を残している。

静也と鬼州組の最終決戦のシーンでは、明美と龍子が向かい合いながら言葉を交わす場面も登場。清楚なOL・明美とゴージャスな極道の妻・龍子といった、正反対の女性に扮しながらも、それぞれのスタイルで眩いばかりの美しさを放つ石田を堪能することができるのだ。

落ちこぼれサラリーマンと極道の三代目という、まったく異なる2つの顔を持つ主人公・静也の活躍を時にコミカルに、時にハードボイルドに描く痛快エンターテインメント。静也役を熱演した中山秀征と同じく、極道の世界に生きる役柄にも挑戦した石田の新たな魅力を味わえる作品だ。

文=中村実香

放送情報

静かなるドン<中山秀征版> #1
放送日時:2023年8月18日(金)4:55~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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