佐藤勝利&神尾楓珠が「切り替え」の演技で魅せる役者としてのポテンシャル

人気アイドルグループの中心的人物である佐藤勝利と、デビュー後さまざまな映画やドラマなどに出演し、主演から助演までこなす神尾楓珠は、若手俳優の中でも群を抜いて引っ張りだこの人気実力派俳優だ。そんな2人の役者としての魅力が堪能できる作品が2022年に放送された「連続ドラマW-30『青野くんに触りたいから死にたい』」だろう。
同ドラマは、椎名うみの同名コミックをドラマ化したもので、交通事故で死亡し幽霊になってしまった主人公と、メンヘラコミュ障のヒロインが織り成すラブストーリー。佐藤は主人公の高校生・青野龍平、神尾は青野の友人・藤本雅芳をそれぞれ演じ、ヒロインの刈谷優里役を高橋ひかる(※「高」は正しくははしご高)が務める。

些細なきっかけで優里(高橋)に告白され交際を始めた青野(佐藤)は、その2週間後に交通事故で死んでしまう。青野の死に、冷めた反応を見せる藤本(神尾)に対し、受け止め切れない優里は後追い自殺を決意する。いざ、手首にカッターの刃を当てようとした時、青野が幽霊になって出現。青野に触れたい優里だが、青野が幽霊のため叶わない。何とか優里を思いとどまらせた青野と優里によるでたらめでピュアな生活が始まる...。

物語は優里目線で描かれていき、胸キュンシーンや悲しく切ない場面など、心を震わせる展開が盛りだくさんなのだが、青春恋愛ドラマだけではなくホラーな部分も有しているのが特徴で、ふとした瞬間に背中が寒くなるところが見どころだ。そんな内容の中で、佐藤と神尾の役者としての魅力が最も感じられる部分が"切り替え"だろう。
佐藤は幽霊になっても明るく優しい青野を演じている。いつも優里の隣にいて、励ましたりからかったりしながら優里の背中を押すキャラクターなのだが、ある瞬間に悪霊の"黒青野"になるところがポイント。序盤は、青野自身なぜ"黒青野"になるのか分からず戸惑っているのだが、話が進むにつれ物語を新たな展開に誘うキーポイントとなっている。その変化を佐藤は見事に表現。最初の"黒青野"の登場では、一瞬「佐藤ではないのでは?」と思ってしまうくらいの切り替わりようで、彼の役者の幅を感じさせてくれる。「正に別人」という表現が当てはまるくらいで、「これほど自身と全く異なるキャラクターを大胆に演じることができるのか」と驚かされる者も少なくないはずだ。普段、アイドルとしての佐藤に魅せられているファンも、役者としての佐藤の魅力に虜になってしまうこと間違いなしだ。
一方、神尾はクールな藤本を熱演。冷静で冷たい印象の藤本を"お家芸"かのようにナチュラルに演じる。言葉少なく目立つ行動はしないのだが、ついつい一挙手一投足が気になってしまうというキャラクターを作り上げ、視聴者を作品世界に引っ張っていく。そんな中で、特筆すべきは青野が藤本に取り憑いてしまうシーンだ。神尾は"体は藤本、心は青野"という状態を演じなければならないのだが、その"切り替え"が圧巻。佐藤が作る青野像を上手く再現し、藤本に青野が取り憑いていることに気付いた優里が発する「青野くんだよね?」というセリフに説得力を持たせている。藤本の身体に青野の魂が入っているという状況を、藤本にはない"青野の滲み出る明るさ"を損なうことなく表現することで、底知れない演技のポテンシャルを感じさせてくれる。
青春&恋愛に加え、ホラー要素も兼ね備えた見始めたら"沼"ってしまうストーリーもさることながら、次世代を背負うであろう若い2人が魅せる"切り替え"の演技から彼らの高い演技力も堪能してほしい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
青野くんに触りたいから死にたい
放送日時:2023年12月2日(土)0:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
こちら