綾野剛にピンク映画監督が憑依!同じ女性を愛した2人の男性の奇妙な物語を紡ぐ「花腐し」に注目!
若手俳優の登竜門と言われる仮面ライダーシリーズ「仮面ライダー555」(2003年テレビ朝日)の怪人役でデビューして以来、数多くの人気作品に出演してきた綾野剛。役が憑依したかのようにどんな難役にも見事になりきる高い演技力からカメレオン俳優とも称される、日本を代表する俳優の1人だ。そんな綾野がデビュー20周年のメモリアルイヤーに主演を務めた映画「花腐し」(2023年東映ビデオ)が6月16日(日)にWOWOWで放送される。
(C)2023「花腐し」製作委員会
第123回芥川賞に輝いた松浦寿輝氏の同名小説を荒井晴彦監督が映画化した本作。日本屈指の名脚本家としても知られる荒井監督の経験に基づき、斜陽の一途をたどるピンク映画業界の裏話といった原作にはない要素を大胆に盛り込むことで、独自の世界観を作り上げているところも見所の1つといえる。例えば、面白いのが現在をモノクロ、過去がカラーで描かれている点だ。この表現手法からは、現在よりも過去のほうが色鮮やかに見えることもあるという荒井監督のメッセージ性が感じられる。
そんな本作で、綾野が演じる栩谷修一はピンク映画監督。しかし、作品を5年間撮っておらず、同棲していた桐岡祥子(さとうほなみ)と別れてからは家賃の支払いにも窮する暮らしを送っているのが現状だ。
(C)2023「花腐し」製作委員会
物語は、桐岡が同業者で友人の桑山篤(吉岡睦雄)と心中したことを知った栩谷が通夜に出かけるも親族から参加を認められず、焦燥感に襲われている中で、家賃滞納の交換条件として大家の金昌勇(マキタスポーツ)からアパートに居座る住人の立ち退き交渉を頼まれるところから始まる。そして現地に赴いた栩谷は、そこで売れない脚本家の伊関貴久(柄本佑)と出会い、2人がかつて桐岡と恋人関係にあった者同士であることが発覚するというのがあらすじだ。
憑依型俳優とも言われる綾野だが、本作でも随所にその片鱗を垣間見ることができる。例えば、対面当初の人を小馬鹿したような態度をとる井関を栩谷が突き飛ばすシーン。柄本の相手を不快にさせる演技も見事だが、井関に対して静から動へ徐々に切り替わる栩谷の心情を臨場感たっぷりに演じる姿は演技の域を超えたもの。まるでその場の緊迫感や空気感まで伝わってくるようだ。
色づいた過去とモノクロの現在という異なる世界を生きる栩谷をどう表現していくのか。栩谷という人間が抱える苦悩や葛藤を体現する綾野の演技に注目しながら物語の結末を見届けてほしい。
文=安藤康之
放送情報【スカパー!】
花腐し[R15+指定版]
放送日時:6月16日(日)22:00~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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