中井貴一の背中と緻密な表情が魅せる説得力、映画「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」
東野圭吾のベストセラー小説を原作とし、"泣けるミステリー"として人気を博した阿部寛の主演ドラマ「新参者」(2010年・TBS系)。その続編であり劇場版第1作となるのが「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」だ。
本作は、東京・日本橋の翼のある麒麟像にもたれかかるようにして死んでいた男の捜査に当たる加賀(阿部寛)を通したストーリー。被害者の青柳武明(中井貴一)は死の直前、ナイフを刺されたままの状態で8分間も歩き続けており、加賀はその行動に疑問を抱く。容疑者として浮上したのは、青柳のバッグを持って逃走した青年・八島冬樹(三浦貴大)。しかし彼は逃走中に車にひかれ意識不明の重体となっており、冬樹の恋人である中原香織(新垣結衣)は彼の無実を訴える......というものだ。
その中でも注目したいのは、被害者・青柳武明を演じた中井貴一の圧巻の演技。
原作では不器用な父親という存在が、中井貴一という名優の肉体を通すことで、人間としての厚みを増している印象だ。
特に胸を刺され、大量に出血しながらも、言葉を発することなく日本橋の「麒麟の翼の像」を目指して歩き続ける冒頭シーン。意識が遠のく中での足取りの重さ、荒い息遣い、視線の定まらなさによって狂気にも似た親心の執念を、セリフゼロで表現しきっているところは圧巻。
さらに、生前の回想シーンにも注目。中井貴一の硬質な表情や静かな発声は、一見すると冷血な人物に見える絶妙なリアリティを持っている。
しかし、それゆえに真相が明かされるにつれ、その無口さは冷淡さではなく「息子を想い、その責任すべてを誰にも言わずに背負って戦っていた証」へと意味が反転。前半で見せた冷淡な佇まいが効いているからこそ、後半の真実が明かされた際ギャップが強烈な悲哀となって押し寄せる印象を受けた。

これらの演技を振り返ってみると、同作は芸能界に40年以上身を置く中井のキャリアの蓄積を感じる一昨。映画「記憶にございません!」や「最後から二番目の恋」シリーズなどの影響から、コミカルな演技をものにしているイメージがあるが、言葉は少なめに、表情で表現することで武明という人間の厚みを表現する姿を見て「これぞ、中井貴一の魅力」と思う人もいることではないだろうか。
もちろん主演の阿部寛、物語の鍵を握る新垣結衣の演技も目を見張るものがある本作。ぜひとも役者陣のスキルフルな演技に注目してほしい。
文=於ありさ
放送情報【スカパー!】
麒麟の翼~劇場版・新参者~
放送日時:2026年8月22日(土)21:00~ほか
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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