本田武史が「ドリーム・オン・アイス2024」の見どころを解説「男子は鍵山優真選手と三浦佳生選手、女子は坂本花織選手と上薗恋奈選手に注目したい」

今回で21回目を迎える「ドリーム・オン・アイス」 は、2004年に始まったアイスショー。競技会以外にファンの前で演技をする機会がなかった当時、演技披露の場を創出することで選手の強化につなげたいという趣旨からスタートした。以来、新シーズンのプログラムのお披露目の場として、現役選手たちをバックアップするエキシビションとしてファンの間ではすっかり定着している。21回目となる今回は、KOSÉ新横浜スケートセンターで6月28日から30日まで開催される。今回は内容がリニューアルされ、ライティングは通常照明を採用し、グループごとに演技直前の6分間練習を取り入れるなど、より競技会に近い緊張感のある構成で開催される。日本代表選手が集結することでも楽しみが多いこの催しの見どころを、プロスケーターで解説者としても活躍する本田武史さんに語ってもらった。

「『ドリーム・オン・アイス』は、世界選手権や四大陸選手権など、大きな大会の代表選手たちが一堂に会するアイスショーです。最大の見どころは、今シーズンに向けて新しいプログラムを披露する場でもあるということ。今シーズンのショートプログラムでの演技を『ドリーム・オン・アイス』で初めて見せる選手が多く、選手にとっては、大勢の観衆の前で見せることで、反応を確かめることができます。出来立ての新しいプログラムを通しでお客さんに見せることは、とても意味が大きい。会心の演技を見せて拍手を浴びれば、選手のモチベーションが上がるし、新プログラムに対する自信を深めることができます。緊張感のある中で演技をすることで、プレッシャーをはねのけることにもなりますからね。新しいプログラムをどう表現するか、どんな反応をもらえるのか、あるいは滑りにくかったところなどがあれば改善する必要もあるので、今シーズンを戦う上でのヒントを得る貴重な機会でもあります。やはり、競技会に出場するだけでは得られないものがあるのです。特に今回は通常照明で行われることもあり、試合形式に近い形になるはず。選手たちは試合に向けた予行練習のようなモチベーションで臨むと思われ、例年以上に楽しみですね」

出場選手の中から、本田さんが注目する選手を挙げてもらった。

「男子では、まず鍵山優真選手と三浦佳生選手の二人ですね。共に世界選手権代表として活躍中であり、伸び盛りの年代でもある。鍵山選手は2年前のけがから復帰し、昨シーズンは新たに4回転ジャンプの種類を増やし、世界選手権では2位に入っています。成長著しい中で、あとは表現力の面でどれだけ見る人に訴えることができるか、その点を本人も課題に挙げているので、『ドリーム・オン・アイス』においても大いにアピールしたいところでしょう。一方の三浦選手は、スピード感のある滑りが特徴で、その長所をさらに磨き上げていくと思うので、そこが見どころの一つになりそうです。
今シーズンの男子フィギュアは、これまで日本代表をけん引してきた宇野昌磨が不在という点が何より大きい。今後の男子フィギュアの動向が大いに注目されるところで、次世代の選手たちの台頭にも期待したいです。今回の『ドリーム・オン・アイス』に出演する選手を見ても、顔触れが一段と若返った感じがしますね。最年長が24歳の山本草太選手ですが、ほとんどの選手は『ドリーム・オン・アイス』が始まってから生まれたことになる。この中から、世界のトップとしのぎを削る選手がたくさん出現してほしいと思います」

女子の日本代表選手も数多く出場するが、本田さんの注目選手は？

「やはり坂本花織選手が筆頭でしょうか。世界選手権3連覇中の女王ですし、その滑りを間近で見られるファンの方はうれしいはず。当日は、彼女のスピード感あふれる迫力の滑りを満喫してほしいと思います。坂本選手以外にも期待の若手が数多く出演しますが、私が特に注目しているのは上薗恋奈選手ですね。2010年生まれで、まだ14歳ながら豊かな表現力を持ち、力のある選手という印象を持っています。半年前の全日本選手権からどんな成長ぶりを見せてくれるか、大いに期待したいと思いますね」

今シーズンは、2026年開催のミラノ／コルティナダンペッツォ五輪へのプレシーズン的な意味合いとなる。そんな意味でも、『ドリーム・オン・アイス』に注目したいという。

「やはり、五輪を見据えての戦略とか、プログラムの立て方が垣間見られるシーズンになるでしょう、そんな視点で今回の『ドリーム・オン・アイス』を見てみると、より楽しみが増えてきますね。特に今回はゲストでイリア・マリニン選手(アメリカ)が滑ることも見逃せない。2024年世界選手権王者で、実力は飛び抜けています。女子の中心が坂本花織選手で、男子はマリニン選手が中心になっていくのは間違いない。競技会とはまた違った魅力があることに加えて、本気モードに近い代表選手たちの迫力ある滑りを満喫してほしいです！」

取材・文＝渡辺敏樹