メインコンテンツに移動

2024/07/01

佐藤信人プロが世界最古の権威ある大会「2024全英オープンゴルフ選手権」を占う「松山英樹選手は今季好調で前大会のリベンジに燃えているはず」

この記事を共有する

昨年はブライアン・ハーマン選手(米国)が優勝を果たした (C)Getty Images
昨年はブライアン・ハーマン選手(米国)が優勝を果たした (C)Getty Images

7月18日(木)より、ゴルフの全英オープンゴルフ選手権が開催される。世界最古にして、最も権威あるメジャートーナメントとも呼ばれ、1860年にその第1回大会が開催された。日本では幕末の万延元年、あの「桜田門外の変」が起こった年に当たる。そんな歴史を誇る大会だけに、他のメジャー大会とは異なった特別な趣があるのも特徴。自身も4回出場している佐藤信人プロに全英オープンゴルフ選手権(以下全英OP)の特徴や、今大会の見どころを解説してもらった。

「全英OPは海岸に立地する『リンクス』と呼ばれるコースで行うという不文律があり、自然の地形を残したコースが使われます。強く湿った海風が吹いたり、雨が降ることも多く、自然との戦いを強いられるシビアな大会でもあります。ただ、天候に恵まれると一転してロースコアな争いになったことも。今回はロイヤルトルーンゴルフクラブで開催されますが、2016年に同コースで開催された時は20アンダーでの優勝という過去最高記録が出ました。ところが過去にはロイヤルトルーンでの優勝者が1アンダーだったことも。それほど天候に大きく左右されやすいのが特徴ですね。あとはリンクスにつきもののポットバンカーが何しろ厄介です」

リンクスコースに多い「ポットバンカー」は、かつて羊が風を避けて昼寝をする時に掘った穴が風化し、そこに砂浜の砂が入って作られたことに由来している。深くて小さいバンカーなので、選手を悩ませることになる。

「私は4回全英OPに出場しており、最初が1997年のロイヤルトルーンでしたが、バンカーに入れないことを一番に考えていました。最も短い8番ホールが有名で、120ヤードくらいしかないんです。『ポステージ・スタンプ(郵便切手)』の異名がある小さなグリーンで、向かい風でも吹けば本当に難しい。1997年にはタイガー・ウッズがここでトリプルボギーを出しました。あるドイツのアマ選手が19打をたたいたのも記録に残っています。一方、6番のパー5は新たなティーが作られて623ヤードに伸びて、全英史上最長のホールになりました。ただ、やはり天候次第で難度は激変しますからね。朝7時台から夕方4時台まで、全員1番ホールからスタートするので、運に左右されやすいんです。朝は穏やかで、午後から雨風が激しくなれば早いスタートの選手ほど有利。ゴルフは本来運も重要な要素になりますが、全英OPは特にそれが顕著です」

前回同コースで開催された2016年大会では、フィル・ミケルソン選手との一騎打ちを制したヘンリック・ステンソン選手が20アンダーで初優勝を遂げた。

「T・ウッズが持っていた19アンダーの大会記録を更新しましたが、死闘とも思える一騎打ちでまさに名勝負でした。ミケルソン選手は結果17アンダーでしたが、3位の選手は6アンダー。いかに2人が飛び抜けていたかが分かります。そのミケルソン選手も2013年大会では、最終日に9位から鮮やかな大逆転で初優勝を飾りました。同大会では松山英樹選手も6位に入っていますが、あの時はスロープレーでのペナルティーが痛かったですね。あとは2004年のトッド・ハミルトンの優勝が個人的に印象深いです。日本ツアーで共に戦った彼が米国ツアーに回ってすぐの全英制覇でしたからね」

松山英樹選手をはじめ、今回の全英OPでの日本人選手の活躍にも期待したいところだ。
 
「松山選手は、通算46回メジャーに出場して予選落ちが5回しかない。うち3回が全英なので、相性の悪さは指摘されるところではあります。前回のロイヤルトルーンも予選落ちでした。ただ、今季好調でもあり、リベンジに燃えて全英に臨むと思います。全米OPも優勝争いに絡み、パリ五輪への出場も表明して流れもいいので、すごく期待していますね。星野陸也選手、中島啓太選手、桂川有人選手の3人も欧州で活躍しているので楽しみです。彼らはPGAツアーへの昇格に向けて結果を出したいはず。そのPGAツアーで奮闘中の久常涼選手も全英でのポイントアップを狙って期するものがあるでしょう。今季予選落ちした大会でもほとんどが1打差で内容がいいので、彼にも期待したいと思います。あとは日本ツアーで活躍するマイケル・ヘンドリー選手も応援したい。白血病から復帰したばかりですが、病気で辞退した時の出場権を使って今大会に出場できるので、ひそかに注目しています」

世界のトップ選手が集うメジャー大会だけに、優勝争いは毎回熾烈(しれつ)を極める。そんな中で、佐藤さんが注目している海外勢は誰なのか?

「現地で最も声援を浴びそうなのが、地元スコットランドのロバート・マッキンタイア選手でしょう。1999年のポール・ロリー以来、スコットランド人が全英オープンで勝っていませんから。ゴルフ発祥の地でもあり、全英制覇はスコットランド人の悲願でもあります。今季はPGAツアーでも初優勝して上り調子だけに、相当注目されるでしょう。気持ちを全面に出す一方で技術も確か。地元の大声援を受けて乗っていくと面白い存在です。ロリー・マキロイ選手、ジョン・ラーム選手にも注目したいです。マキロイ選手は10年メジャーで勝っていないですし、前回の全米OPも非常に悔しい負け方でした。彼が全英OPであの悔しさを晴らせるのかも、楽しみなところ。ラーム選手も最近はメジャー大会で精彩を欠く印象がありますが、前回は2位に入っている実力の持ち主ですからね。虎視眈々(たんたん)と優勝を狙っているのがこの2人だと思っています。2人とも飛ばし屋で、穴がない万能型。体格こそ違いますが、プレースタイルはよく似ていて、全英OPにも適応しやすい選手だと思います」

取材・文=渡辺敏樹
※取材は6月中旬に実施



放送情報

全英オープンゴルフ選手権
放送日時:7月18日(木)14:30~
※7月21日(日)最終日まで全ラウンド生中継
チャンネル:ゴルフネットワーク
※放送スケジュールは変更になる場合があります



スポーツ総合の記事・インタビュー

more