ニルヴァーナ、オアシス、宇多田ヒカル、幾田りら「MTV Unplugged」の名作ライブに酔いしれる

MTVの人気企画「MTV Unplugged(アンプラグド)」。ジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラの提案によって企画され、1989年に放送が始まった本番組は、エレキギターやシンセサイザーといった「プラグ」を挿して音を出す楽器を使わずに、アコースティックギターやピアノなどを使って演奏するライブ番組となっている。以後、ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、ロッド・スチュワートなど錚々たるアーティストが出演し、MTVの看板企画としての地位を確かなものにした。

8月はMTVの開局を記念し、これまでに国内外で制作されたMTV Unpluggedシリーズから厳選してアンコール放送。注目の国内外ライブをセレクトして紹介する。

■ロックからポップスまで、洋楽のビッグネームが名演奏を聴かせる

オルタナティブ・ロックの先駆者として1980年代末から1990年代前半にかけて活動した３ピースバンド、ニルヴァーナは、「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」でオルタナ界の枠を超え、世界的な社会現象を巻き起こした。そんなニルヴァーナの「MTV Unplugged」は、椅子に座って演奏し、じっくりと聴かせるスタイルが普段のライブとは全く違っていて、そのギャップも含めて必見のステージとなっている。カバー曲が多いのも特徴的。デヴィッド・ボウイの「世界を売った男」をカバーした他、アリゾナのバンド「ミート・パペッツ」のメンバーをゲストに迎えて彼らの曲を一緒に演奏。リラックスした雰囲気の中、味わい深い演奏と歌を聴かせてくれる。

トニー・ベネットとレディー・ガガというアイコニックなデュオも登場。「霧のサンフランシスコ」などの名曲を生み出したベネットは、グラミー賞を20回受賞、エミー賞も2回受賞しており、アメリカを代表する歌手／エンターテイナー。ガガも世界売上枚数7,000万枚を超えるアメリカの歌姫。「ポーカー・フェイス」「ボーン・ディス・ウェイ」など多くのヒット曲を放ち、奇抜な衣装も含めて彼女の個性となり、人気につながっていた。そんなベネットとガガは2014年にアルバム『チーク・トゥ・チーク』を発表。2021年10月にも『ラヴ・フォー・セール』を発売し、12月に「MTV Unplugged」に２人で出演した。グランドピアノを配したステージで、シックで大人な雰囲気のライブを展開。まさにこの２人だからこそ生み出せた素敵な空間と場所になっていた。

1990年代のロックシーンを盛り上げたバンド、オアシス。メイン・ソングライターの兄ノエル・ギャラガーとボーカルの弟リアム・ギャラガーを中心に1991年に結成され、「ホワットエヴァー」「ワンダーウォール」「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」などが世界的ヒットとなった。そんなオアシスの「MTV Unplugged」は1996年に行われた。アレンジはアンプラグド用になっているが、ヒット曲・代表曲を連発。ただし、リアムが喉の不調のため急遽出演を見合わせ、ノエルが代わりにボーカルを務めている。持ち曲でノエルが歌う曲もあるが、全編ノエルがボーカルというのはこの頃としてはレアなものと言える。

■日本人アーティストも個性派ぞろい！楽曲とボーカルの良さが際立つ

2022年10月に「MTV Unplugged」に登場したのは、CMやドラマ主題歌などを多数手掛けるシンガーソングライター幾田りら。中学生の頃からギターでの弾き語り活動を行ってきた幾田は、アコースティックが原点。ソロライブは2年半ぶりということで、貴重さもあるライブとなっている。

愛知県出身の４人組バンド、緑黄色社会。「リョクシャカ」の愛称で親しまれている彼らは2023年2月に「MTV Unplugged」に出演。「ミチヲユケ」「Mela!」といった代表曲のほか、椎名林檎の「ありあまる富」のカバーも披露し、バンドとしてのいろんな一面を垣間見せてくれた。

日本版「MTV Unplugged」を語る上で欠かせないアーティスト。それは宇多田ヒカル。2001年、MTVジャパン初制作となる宇多田ヒカルのステージが天王洲スタジオで収録された。120人ほどの観客の前で、「Addicted To You」「Automatic」「FINAL DISTANCE」などの自身のヒット曲を披露したほか、U2の「With Or Without You」なども歌唱。当時、宇多田ヒカルは18歳だったが、圧巻のステージを見せてくれていた。

文＝田中隆信