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2024/08/20

スン・リーが見せる真骨頂...才覚によって紀元前中国の頂点へと上りつめた実在の女帝役を好演

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「ミーユエ 王朝を照らす月」
「ミーユエ 王朝を照らす月」

ドラマ化もされた長い歴史を誇る中国で唯一の女帝・武則天が在位したのは、西暦690年からといわれる。それよりもはるか1000年近く前となる紀元前に女性として初めて政治の世界でも活躍したのが宣太后だ。彼女は中国統一を始めて成し遂げた秦の始皇帝の高祖母にあたる。

その宣太后をモデルにした「ミーユエ 王朝を照らす月」は、2016年度の中国ドラマ視聴率1位となったほか、中国版エミー賞など多くの賞を受賞して高い評価を得た。

のちの宣太后となるミーユエを演じたのは、18世紀清王朝の宮廷ドラマ「宮廷の諍い女」(2012年)で人気を博したスン・リー。時代をさかのぼり、華やかだがさまざまな思惑が渦巻く後宮で生き抜く女性を再び熱演した。

物語は、ミーユエが生まれる前から始まる。戦国時代、楚の国の夜空に"覇星"が現われ、まもなく生まれる子が国を制するという予言が国王のもとに届く。ところが、産まれたのは男児ではなく女児。ユエ(月)と名付けられた少女は、母の身分などから王后に目をつけられ不遇な時を過ごしながらも利発に育つ。やがて隣国である秦の王・嬴駟(アレックス・フォン)に嫁ぐ異母姉・羋姝(リウ・タオ)に同行することになるが、自身も秦王の寵愛を受け、さらには政治的手腕を発揮していくことに。

生まれてから祖国を出るまでも、かなりの試練に見舞われるミーユエ。全81話という長編だけあって15話ほどかけてじっくりと描かれるのだが、その時代もあってこそ、後の変化や活躍につながる面白さが醍醐味でもある。

楚の国も秦の国もしかりで、後宮は気に入らない相手を陥れ、毒を盛られるなんてことも当たり前にある世界。そこでミーユエの力になるのは、持ち前の運や聡明さはもちろんだが、出会う人々との愛がある。ミーユエを愛し、その才腕にほれ込む秦王、つらいときも力になってくれた幼なじみの初恋相手・黄歇(ホアン・シュアン)、ミーユエが秦に赴く途中で出会った異民族の王・翟驪(ガオ・ユンシャン)。三者三様の愛をミーユエに注ぐ姿は胸が熱くなる。

またもう一つ、物語の大きなポイントにもなるのが、羋姝との関係。ミーユエ自身が「下の者を見下す人ばかり」と言っていた後宮において、心を寄せてくれた羋姝。2人のシスターフッドな愛ある関係は魅力的だった。ところが、その愛は、秦王が絡んだことで壊れていってしまう。愛情から嫉妬と憎しみへ、羋姝の驚くべき変化は、リウ・タオの素晴らしい好演で見事なものになった。

欲望渦巻く後宮も、表舞台のまつりごとも決してきれいごとだけでは済まない。だが、逆境をはねのけ、強さと凛々しさが増していくミーユエ。"覇星"の元に生まれ、愛に包まれ、愛に反しながら、己の才で前人未踏の地位に上りつめ、のちの大国の礎を作り上げる。フィクションが多分に加えられているが、歴史的な見応えも存分にありつつ、1人の女性の波乱に満ちた生涯は一度見始めたら止まらなくなるはずだ。

文=神野栄子



放送情報

ミーユエ 王朝を照らす月(全81話)
放送日時: 9月9日(月)11:00~(2話連続)
放送チャンネル: WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります



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