北村一輝が初主演し、小池栄子、上原美佐ら演じる女性に翻弄されるサスペンスドラマ「宿命1969-2010」

俳優・北村一輝は、コメディからシリアスまで数々の幅広い役柄をこなし、高い評価を受けている。しかしデビュー当時は仕事に恵まれず、いったん俳優業を休止して海外で放浪生活を送るなどの苦難を経験した。1999年公開の映画「皆月」、「日本黒社会 LEY LINES」の演技でキネマ旬報新人男優賞をした頃から頭角を現し、2003年のフジテレビ系ドラマ「あなたの隣に誰かいる」で演じた不気味な隣人役により、演技力への評価が決定的なものとなる。

そんな北村が、連続ドラマで初めて主演を務めた作品が、2010年にテレビ朝日系で放送された「宿命1969-2010 ~ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京~」だ。本作では、当時の実年齢と同じ40歳の超エリート官僚・有川崇を演じ、権力の頂点を目指すなかで金と愛欲にまみれた"ドロドロした世界"に落ちていく男をまさに体当たりで好演した。前年にはNHK大河ドラマ「天地人」にて寡黙で威厳のある上杉景勝を演じて評判となったが、本作では景勝とまったく異なり、欲望に忠実なエゴイスト役。制作発表では「この作品に主演することを"宿命"に感じています。自分の代表作、そして新境地開拓となるドラマにしたい」と意気込みを語っていた。

⒞ABC・テレビ朝⽇・東宝
本作は、楡周平原作の人気小説「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」をドラマ化したもの。欲望渦巻く上流社会を舞台に、富と権力に狂わされながらも、頂点を目指して突き進む男と、彼を巡る3人の女達、そしてその家族の攻防を豪華キャストで描いている。北村が演じる有川崇は、日本最大級の一大医療法人の御曹司にして、超エリートの財務官僚だ。知性とルックス、財力を併せ持ち、権力のトップに就くことを宿命づけられている。母親の三奈(真野響子)は、我が子を政界進出させるべく虎視眈々とうかがっていた。ある日、崇に縁談がもたらされ、相手は民自党政調会長・白井眞一郎(奥田瑛二)の長女・尚子(上原美佐)だった。白井の狙いが有川家の財力にあることを察した崇は、彼の財政基盤である白井国土建設が倒産寸前だと知る。しかし、与党政調会長とのパイプを重視する三奈の助言を受け、崇は尚子と会うことに。崇には十年来の恋人である笹山宣子(小池栄子)という女性がいたが、尚子の美貌と政界への野心により、結婚を決意。ところが、「富」と「権力」が手を組むこの結婚話には、大きな落とし穴が隠されていた...。

⒞ABC・テレビ朝⽇・東宝
実父の財政基盤が弱まり、財産目当ての政略結婚を狙う婚約者・尚子も一癖あるが、結婚の夢を絶たれた宣子に野心溢れる三奈という3人の女性に囲まれた崇が、複雑に絡み合う人間模様にもまれていく物語だ。「家族」「富と権力」「欲望」「運命」といった普遍的なテーマを巧みに紡いだ骨太のストーリーはまさに見ごたえ十分。脚本の坂上かつえは、2時間ドラマを中心に、サスペンスドラマの第一人者として活躍。本作ではハードボイルドな作風で人気を誇る楡周平の原作を生かし、現代の上流社会に渦巻く男と女の欲望を壮大なスケールで描き出している。
3人の女性に翻弄される宿命を背負った男を全力で演じ、初の主演作とは思えない貫禄十分の演技で魅了した北村は、東大安田講堂事件が起こり、自身の生まれ年でもある"1969年"がタイトルに入った作品ということで、「目まぐるしく変化を遂げていく時代は、自分の人生とも重なり、まさに宿命に感じている」と語った。1969年当時に青春時代を過ごした松坂慶子、田中健、奥田瑛二らのベテラン陣も名を連ね、人間の心の機微や絡み合う人間模様を鮮やかに描き出している。俳優として駆け上がっていく段階の北村の迫力と勢いも感じられ、共演陣も奮闘。昭和の学生運動の激動期などは、現代の若者にも見てほしいと思えるし、当時を知る昭和世代にはまさに大人のドラマとして大いに楽しめるはず。軽妙なドラマがもてはやされる現代にあって、こんな重厚さを持った作品も今見ると新鮮に感じられることだろう。苦難を経験したからこそ現れる北村の演技の奥深さにも注目して見てほしい。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
宿命1969-2010 ~ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京~
放送日時:2月24日(月)18:00~
放送チャンネル:テレ朝チャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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