映画「国宝」でも注目の吉沢亮、「PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024」で見せた無限大の優しさ

吉沢亮演じる"しこちゃん先生"が、小さい体で病と闘う子どもたちへ向ける視線は、限りなく優しい。
「PICU 小児集中治療室」は、フジテレビ制作らしい地域性のある医療ドラマだ。2022年放送の連続ドラマでは、北海道の丘珠病院に新設された小児集中治療室(PICU)に異動した志子田武四郎(吉沢)が失敗や挫折を経験しながらも、救命ドクターとして成長していく姿を描いた。そして2024年4月には「PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024」も放送された。

「PICU 小児集中治療室」(C)フジテレビジョン
志子田を優しく、時に厳しく指導してきたのは、"広い北海道で救急医療にたどり着けずに命を落とす子どもの数を少しでも減らしたい"と願う植野医師(安田顕)。スペシャルドラマでは、連続ドラマの1年後が舞台となり、事故や急病で子どもたちが担ぎ込まれてくる中、志子田や植野ら、PICUのメンバーが変わらずに懸命に働く姿を展開しつつ、そこに2人の研修医が入り、先輩の立場になった志子田が戸惑う様子も描かれている。
武田玲奈と小林虎之介が演じる研修医は、救命医療の現場では、いかに細心の注意を払って子どもたちに接しなければならないかを、すぐには理解できない。1年前の志子田と同じような失敗もやらかすし、今時の若者らしくクールで、職場のみんなでご飯に行くなどのコミュニケーションを取りたがらないので、志子田たちも扱いに困ってしまう。
2024年に放送され好評だったドラマ「宙わたる教室」(NHK)で定時制高校の金髪の生徒を演じた小林が、ここでは両親とも医師というエリートのサラブレッドを演じているのも、ギャップがあって面白い。
■どこまでも優しい志子田を吉沢亮が演じる

「PICU 小児集中治療室」(C)フジテレビジョン
志子田はイケメンで優しいけれど、ちょっと間が抜けていて女性に対しては押しが弱い。"残念ハンサム"とでも言うべきキャラクターで、患者である子どもたちにも"しこちゃん先生"と呼ばれて慕われつつも、「彼女いないの?」などとツッコまれ、からかわれる。研修医たちからも"この人から学ぶことはない"とばかりにスルーされるが、そんな彼らに怒ることも否定することもなく接していく。
その心には、父亡き後、女手一つで自分を育ててくれた母(大竹しのぶ)に対する思慕がある。その母も今はもうこの世になく、出産後すぐに捨てられた赤ちゃんに「母ちゃんに会いたいよな...」と語りかける志子田の表情が切ない。志子田がどこまでも優しいのは、生来の性格でもあるが、これまでに大切な家族を失ってきた彼の心の痛みがそうさせているのだ。

「PICU 小児集中治療室」(C)フジテレビジョン
吉沢の自然体の演技は、スペシャル版でも変わらず。強がりや空元気、戸惑いや、命の選択をしなければならないという葛藤を微妙な目の動きや沈黙する様子で表現している。「武四郎として、ただただその場で生きる」という思いで演じてきたと語った吉沢の言葉通り、彼の演技には芝居を越えた"体温"があり、観る者の心に静かに問いを投げかけてくる。
吉沢は、2025年6月6日公開予定の新作映画「国宝」では、任侠の家に生まれながらも歌舞伎の世界に飛び込み、稀代の女形として名を馳せる立花喜久雄を演じる。大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)の横浜流星や渡辺謙との共演も見どころだ。本作に出演するにあたって、吉沢は歌舞伎の所作を一から学び、難しい踊りを習得できるか不安を抱えながらも、撮影直前まで歌舞伎の稽古を重ねたという。医療ドラマとはまったく違う芸能の世界を舞台に、どんな演技を見せてくれるか楽しみだ。
文=小田慶子
放送情報【スカパー!】
PICU 小児集中治療室
放送日時:2025年5月31日(土)12:00~
PICU 小児集中治療室 スペシャル2024
放送日時:2025年5月31日(土)21:50~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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