JO1とFANTASTICSのメンバー6人が主人公！仲間との絆を克明に描いた「逃走中 THE MOVIE」

放送20周年を超えたフジテレビの大人気番組「逃走中」は、ゲーム終了まで参加者がハンターから逃げ切ることができれば、賞金を手にできる大掛かりなバラエティ。同番組の20周年記念プロジェクトして、2024年に公開された映画が「逃走中 THE MOVIE」だ。

東京23区を舞台に、芸能人と一般参加枠も設けた大規模な「逃走中」が開催されるが、何者かの陰謀によって命を懸けたデスゲームと化してしまうというストーリー。メインキャストにはJO1とFANTASTICSのメンバーから6人が起用され、「逃走中」常連のタレントたちも多数ゲスト出演している。

■高校時代の陸上部仲間の6人が「逃走中」に参加するが...

高校時代に陸上部の仲間として、強い絆で結ばれていた6人。全員でおそろいのミサンガをつけるほど仲が良く、良きライバルとして競い合っていたが、卒業後はそれぞれの道を歩んでいた。大学で陸上を続けていたが、選手として限界を感じている橘大和(川西拓実・JO1)。部では補欠だったが人一倍仲間想いで、今は名門大学の数学科に通う秀才の大澤瑛次郎(中島颯太・FANTASTICS)。大学生ながら株やFXなど投資に熱中する伊香賢(木全翔也・JO1)。卒業直後に父を亡くして町工場を継いだが、資金繰りに悩む北村勇吾(金城碧海・JO1)。明るく優しい性格で陸上部のムードメーカー。現在は服飾専門学校に通う西園寺陸(瀬口黎弥・FANTASTICS)。エース走者だったが、大会当日に姿を消したまま消息不明の寺島譲司(佐藤大樹・FANTASTICS)。

そんな6人の主人公たちが、賞金1億円オーバーの「逃走中」参加者招待のメールを受け取り、ゲームに参加する。必死にハンターから逃げる中で、バラバラになっていた元陸上部の6人は久しぶりの再会を果たす。だが、それぞれの事情を抱えてかつての絆は失われていた。やがて緊急事態が発生する。ゲームを管理するクロノス社が何者かに乗っ取られ、一部のハンターが暴走して制御不能となってしまったのだ。「これはゲームではない！」と謎のゲームマスターK(松平健)が宣言。参加者は、命がけのゲームに強制的に参加させられ、捕まったものは命を奪われてしまうことに。しかも数々の超危険なミッションも設定されている。ただし、生き残ったら賞金の100億円を山分けできるという。果たして彼らは生き残ることができるのか、そして6人の絆は戻るのか...。

■「デスゲーム」と化した命がけの逃走劇で、緊迫感溢れる展開に

「逃走中」の劇場版ということで、バラエティ色の強い映画を想像してしまうと見事に裏切られる。序盤こそ、小宮浩信(三四郎)、津田篤宏(ダイアン)、長谷川雅紀(錦鯉)、クロちゃん(安田大サーカス)、久保田かずのぶ(とろサーモン)など、おなじみの芸人たちが実名で登場して笑える場面もあるものの、デスゲームと化してからはハードな展開で、緊迫感に包まれていく。6人の主人公に加えて、ゲーム参加者である高校生の本郷マリ(田鍋梨々花)と弟の小学生・カイ(川原瑛都)も重要な役割を果たす。カイはある出来事がきっかけで心を閉ざして会話ができないため、リュックの紐につけたボタンの音声でコミュニケーションをとる。心優しい陸や瑛次郎らは、姉弟に寄り添って助けようとするが、主人公たちと触れ合う中でカイの心に変化が訪れる場面も必見だ。また、曲者の女性参加者・スズキ(長井短)が、トラブルメーカーとしてかき回すのも見どころ。長井は舞台を中心に「演劇モデル」として活躍し、ドラマや映画など映像作品にも数多く出演。個性的なキャラで本作での悪役ぶりもなかなかインパクトがあった。

■6人の個性をバランスよくまとめ上げた演出も秀逸

主人公の6人は、それぞれの個性を生かした役を与えられ、全員に見せ場があって大いに魅力を発揮している。特に、クライマックスでの熱演が光った川西、事情から仲間を裏切ってしまった過去を抱えて心を閉ざす佐藤の演技が印象深い。中島のキュートな魅力、木全のクールさ、金城の儚げな表情、そして華のある瀬口の存在感など、6人の個性を存分に味わうことができる。監督の西浦正記は主にフジテレビのドラマで演出を手掛け、近年では「華麗なる一族」(中井貴一主演)や「フィクサー」(唐沢寿明主演)など、WOWOWの「ドラマW」作品でも評価を高めている。本作では、主役が6人という難しさをうまくまとめると共に、サスペンス色を高めるカメラワークと悪役のワイルドハンターが恐怖感たっぷりで、演出に工夫が感じられた。

映画「逃走中 THE MOVIE」は、人気バラエティ番組を題材としながらも、緊迫感溢れるサスペンス作品として楽しめる。人気芸能人たちも多数登場するが、あくまでもJO1とFANTASTICSのメンバー6人の魅力を堪能する映画と位置付けるべきだろう。仲間との絆の大切さを克明に描き出し、青春映画のようなラストも感動的で、ファミリーで楽しむには絶好の一本と言える。

文＝渡辺敏樹