堺雅人が女性たちを翻弄した実在の結婚詐欺師をコミカルに演じる!松雪泰子、満島ひかり共演「クヒオ大佐」

主演ドラマ「VIVANT」の続編が2026年に放送されることで話題になっている俳優・堺雅人。彼の代表作といえば「リーガル・ハイ」シリーズや「半沢直樹」シリーズが印象的だが、それより前の2009年に主演を務めたのが、実話がモチーフのコメディ映画「クヒオ大佐」だ。
同作で堺が演じているのは米軍のパイロット、ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐を名乗り、何人もの美女たちを騙す結婚詐欺師。「桐島、部活やめるってよ」「騙し絵の牙」などを手がけた吉田大八監督がメガホンをとった。カタコトの日本語と神出鬼没の行動で周囲を翻弄するクヒオのターゲットになる独身女性たちを松雪泰子、満島ひかり、中村優子が演じるほか、安藤サクラ、新井浩文、内野聖陽も出演している。
髪を染め、整形をして米海軍の制服を纏い、"戦闘機パイロットのクヒオ大佐"を名乗る日本人が、数々の女性たちから約1億円もの大金を騙し取る事件が起きたのは、1970年代の出来事。堺はこの実在した人物を演じるにあたり、つけ鼻にも挑戦。制服をビシッと着こなし、甘いセリフを操る一方で、どこか憎めない空気を持つ詐欺師になりきった。
そんな堺の演技と、クヒオ大佐に翻弄される女性たちを演じたキャスト陣の立ち位置に注目したい。
■"クヒオ劇場"のような堺の演技と3人の女優たちの絡みが魅力

(C) 2009『クヒオ大佐』製作委員会
クヒオ大佐を巡る物語が軽快なテンポで描かれる本作の面白さの1つは、登場する3人の女性たちがそれぞれ全く違うタイプなところ。松雪が演じる弁当店の社長・永野しのぶは、尽くし型の情に厚い女性。一方の満島演じる小田山自由科学館の学芸員・浅岡春は内向的だが、気が強く、ややこじらせていそうな女性。そして中村が演じる銀座のホステス・須藤未知子は男性を掌で転がすタイプだ。しのぶと会う場所は主に旅館、春に近づく時はパイロットの制服を着て自然光の中で、未知子に会う時はミリタリー風のコートにハットを被り、夜の街で...というふうに、クヒオは女性と会う時のシチュエーションや演出まで計算しているかのようだ。
3人の女性たちとそれぞれ会うというだけで大変な労力なのだが、常にクヒオ大佐として振る舞い、駆け引きを楽しんでいるように思えるのは、堺の技ありの演技あってこそ。結婚の話を具体的にしているしのぶには、胡散臭さが隠しきれない笑顔を見せ、春には"パイロットが使う小道具を子供たちの体験授業に使えないか"と爽やかに微笑み、野心家の未知子には自分とエリザベス女王との関係を話し、投資話を持ちかける。先祖がハワイ出身だという話や、任務で体験したエピソードを嬉々として語る姿は、まるで「クヒオ劇場」。思わず突っ込みたくなる主人公のおかしみを、堺が持ち前の個性で生き生きと演じている。
■嘘の世界に生きるクヒオ大佐の姿は、悲喜劇を見ているよう

(C) 2009『クヒオ大佐』製作委員会
クヒオ大佐の天敵として登場するのが、しのぶの実の弟・達也(新井)だ。姉が騙されているのではないかと心配する達也の容赦ない追い込みに、「しまった!」と顔に書いてあるような表情を浮かべるクヒオ大佐を演じる堺のコミカルな芝居は、悪人になりきれないクヒオ大佐の詰めの甘さを浮かび上がらせる。
伏線が回収されていく後半の展開にも意外性があり、嘘と本当の境界線が消滅してしまったのではないかと思わせられるクヒオ大佐の言動に興味をそそられる。そんな詐欺師であり、道化師を演じた堺の滑稽だからこそ切なくもある演技を物語と共に楽しんでほしい。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
クヒオ大佐
放送日時:2025年7月26日(土)16:00~、8月10日(日)9:15~ほか
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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