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竹野内豊の静かな演技が心にしみる!激戦地で民間人を守り抜いた実在の人物・大場栄を演じた映画「太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−」

2025/07/28

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太平洋戦争が終わって、今年で80年となる。終戦を迎えた8月には、当時の苦難や命の大切さを切に描いた作品が数多く上映、放送されることだろう。

そんな中で注目したいのが、2011年に公開された映画「太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−」 だ。米軍の攻撃によって陥落したサイパン島を舞台に、民間人を守るために47名の兵と共に戦い続けた実在の人物・大場栄を主人公に、追い詰められた人々や兵士たちの悲哀を描き出している。

竹野内豊が実在の人物・大場栄を演じる
竹野内豊が実在の人物・大場栄を演じる

大場を演じるのは竹野内豊で、他にも唐沢寿明、井上真央、山田孝之といった名優が出演。それぞれが印象的な演技を見せる中で、ここでは米軍から「フォックス」と呼ばれ恐れられた大場を演じた竹野内の演技について見ていきたい。

■多くを語らない大場の心情を、まなざしと空気で伝える竹野内豊の絶妙な演技

物語が始まるのは1944年6月。日本の統治下にあったサイパンに、アメリカ軍が上陸作戦を敢行した。圧倒的な兵力に押され壊滅した日本軍は、残った兵力で玉砕覚悟の総攻撃を仕掛けるつもりでいた。

大場はこの時大尉で、部隊を指揮すると同時に、自らも戦場に立つ立場だった。大場はどちらかというと寡黙な印象で、感情もあまり出さないが、追い詰められた状況が繊細な演技から伝わってくる。総攻撃の命を受ける場面では、表情は変わらないが、身体の奥に死を覚悟したような冷たい決意が固まっているような空気がある。また、攻撃に向かう際、陣地に残してきた負傷兵が自害する銃声が響いた時は、心が空虚になったような眼差しとなる。多くを語らない大場だが、心の底にさまざまな感情がうねっている気配が感じられるし、それを眼差しや空気で伝える竹野内の演技はさすがだ。

そして総攻撃が始まり、多くの兵が命を落とす。生き残った大場はその後タッポーチョ山に逃れ、避難していた民間人を守るために戦うようになる。その過程や、潜伏という過酷な状況の中で、大場はさまざまな表情を見せる。

移動中にコーラの瓶を見つけ、米軍が近くまで来ていることを知った時の厳しい目つき。隠れている民間人の女性が大場に気持ちを寄せるような素振りした時には、視線を泳がせ、純な青年のような姿も見せる。実直かつ優秀な軍人としての大場の姿、また、1人の人間としての大場を、竹野内は要所で印象的に演じている。

■降伏を知った時に滲む絶望、投降の際の澄んだ空気...戦争の悲哀を深く体現した竹野内

大場たちが潜伏している間も、戦況は刻々と変わっていく。東京は空襲を受け、原爆も投下される。投降を勧めるために米軍が撒くビラや、日本人の収容所から伝わる情報によって、遠く離れた日本の状況が伝わるたびに、大場の表情も刻々と変わってゆく。

東京が焼け野原となった写真を見た時は、ビラを見つめたまま固く口を結び、驚きを飲み込む。さらに日本の降伏を知った時には、瞳に絶望の色が浮かび、苦しげに口元が歪む。命を懸けて戦いに臨み、また民間人を必死に守ってきた大場。そんな彼の悲哀が強く現れており、その演技から戦争の虚しさと悲しさが静かに伝わってくる。

最後、大場ら生き残った日本兵は上官からの命令という形で武装解除し、投降式が行なわれる。実はこの投降式は、本作の中で最も印象に残っているシーンだと竹野内がインタビューで語っている。

投降に際しても凛と米兵の前に立つ姿には、悲哀だけでなく、不思議と澄んだ空気が感じられる。その空気には、言葉では表せないほどさまざまなものが混じり合っていて、恐らく本作でしか感じ得ない空気となっているようにも思う。

終戦という歴史の境目に流れた人々の生き様や心情を、竹野内らの演技と共に、終戦80年の今、しっかりと味わってみてはいかがだろうか。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-
放送日時:2025年8月15日(金)21:00~、8月19日(火)8:00~ほか
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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