倍賞千恵子と寺尾聰が若き頃にW主演を務めた青春映画!過疎の農村で若者たちがミュージカルの上演を目指す「同胞」

2025年11月に、木村拓哉とのW主演で話題の山田洋次監督最新作「TOKYOタクシー」の公開が控えている倍賞千恵子。そして、2025年5月に公開された16年ぶりの主演映画「父と僕の終わらない歌」で圧倒的な演技力を披露した実力派俳優・寺尾聰。そんなベテラン俳優の2人が若き頃にW主演を務めた映画が、1975年公開の「同胞」だ。

(C)1975松竹株式会社
岩手県岩手郡松尾村(現在の岩手県八幡平市)で、酪農を営んでいる斉藤高志(寺尾)。まだ雪深い春の日、村の青年団長でもある彼のもとに、東京の劇団「統一劇場」のメンバー・河野秀子(倍賞)がやって来る。「この村でミュージカル『ふるさと』の公演を開催するにあたり、青年団にも協力してほしい」という秀子の話を聞いた高志は、出稼ぎなどで村を離れている青年団の幹部も揃う春の理事会で検討することを秀子に約束した。そして桜が咲く遅い春のある日、青年団の理事会が開かれたが、65万円という決して安くない公演費用を理由に反対意見が続出。何度も理事会が行なわれ、さまざまな意見が交わされる中、高志の「赤字になったら俺が牛を売って弁償する」という一言によって公演の開催が決定。しかし、さまざまな困難が彼らを待ち受けていた...。
■明るく元気な秀子を演じる倍賞千恵子と、不器用な青年・高志を演じた寺尾聰

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倍賞が演じる秀子は、各地でミュージカルを上演している劇団の組織部に所属するスタッフ。とにかく明るく元気で、高志やその家族ともすぐに打ち解けるほどの高いコミュニケーション能力の持ち主。1日限りの公演にも大金が必要だということを知って「僕、1万か2万かと思っちゃった」とおどけて言う青年団メンバーに対し、「最低限のお金でも構わないから村の人々に芝居を見てもらいたい」と熱く語る場面では、倍賞の穏やかさと力強さが同居する声が、高志を始めとする青年団メンバーのみならず、視聴者の心まで大きく揺さぶっていく。また、礼儀正しさや冷静さなど、秀子の聡明さも随所で鮮やかに印象づけている。

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一方の高志は、青年団に所属する佳代子(市毛良枝)へ想いを寄せているものの、東京で生活することを夢見ている佳代子の気持ちを知っているため、告白を思いとどまっている不器用な青年。そんな高志を寺尾は、爪を噛んだり片膝を抱えてうつむいたりと、どこか幼さが残るしぐさを交えて、その繊細な内面を表現した。佳代子に対する恋心と複雑な想いが心の中で吹き荒れていることを表現するような、寺尾の繊細な視線の演技が秀逸だ。

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農業に情熱を感じられない高志や、かつて住んだ東京での刺激的な生活が忘れられない佳代子ら若者と、「一生ここで暮らすんだ」と若者たちを縛り付けようとする大人たちなど、村の閉塞感も題材にしながら、村に「ミュージカルの上演」という新たな目標を持ち込んでくれた秀子の登場によって、若者たちが成長する姿を爽やかに映し出した本作。今から50年も前に制作された映画ながら、好きなことに打ちこむ秀子の情熱や、その熱に影響され、活気を取り戻していく青年団メンバーらの変化を描く普遍的なストーリーは、公開当時に高志たちと同年代だった世代はもちろん、今を生きる若者たちにも感動を呼ぶだろう。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
同胞(1975)
放送日時:2025年10月8日(水)18:15~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
出演:倍賞千恵子 寺尾聰 岡本茉利 渥美清 井川比佐志
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