綾瀬はるか×森井勇佑監督による新感覚ロードムービー!孤独な女性と風変わりな少女の珍道中を描く「ルート29」
綾瀬はるかが主演を務め、これまでとは異なる空気感を纏いながら主人公を演じたロードムービーが「ルート29」だ。監督・脚本を手掛けたのはデビュー作「こちらあみ子」で第27回新藤兼人賞・金賞を始め、数多くの賞を受賞した森井勇佑。
森井の2作目となる本作は、中尾太一の詩集「ルート29、解放」からインスピレーションを受け、姫路と鳥取をつなぐ国道29号線を1カ月近く実際に旅しながら、オリジナル脚本を書き上げて完成したという。森井の映画が大好きだったという綾瀬は台本を読んで感銘を受け、「こちらあみ子」で強烈な個性を放っていた大沢一菜との共演にも心惹かれたと語った。
(C)2024『ルート29』製作委員会
綾瀬演じる主人公・のり子は、鳥取で清掃員として働く寡黙な女性。ほとんど他者と交わろうとせず、部屋に帰ると壁に向かって食事をとり、ノートにその日にあった出来事を短い言葉で書きとめている。無表情で日々を淡々と過ごしていたのり子の人生が少女・ハル(大沢)と出会ったことで動き出す。
■旅の美しい風景に溶け込む綾瀬の自然体な佇まい
(C)2024『ルート29』製作委員会
病院の清掃をしていたのり子はある日、患者の理映子(市川実日子)から「この子をここに連れてきてください」と、姫路にいるという娘の写真を渡され、ノートに「久しぶりに人とちゃんと話した」と書き込む。後日、のり子は作業着のまま清掃会社の車で姫路へと向かい、森の中で仙人のような人物と暮らしているハルを発見。野生児のような瞳をして助手席からのり子を見るハルに「オマエは今日からトンボな」と呼び名をつけられ、国道29号を走る2人の珍道中が始まっていく。必要最低限のことしか話さず、小学生のハルを子供扱いしないのり子の脳内はミステリアスだが、起こることの全てを受け入れていくような在り方で、そこにいるだけなのに何かを託されたり、本心を打ち明けられたりする不思議な魅力は、素の綾瀬と通じるものがあるのではないかと想像させられる。それほどに綾瀬の佇まいは自然で、歩き方も含めて芝居をしていない境地に達している。
木々の緑や差し込む陽射しなど映像の美しさも本作の醍醐味だが、森の中で生きる鳥や昆虫や動物と共生しているように風景に溶け込む綾瀬と大沢のコンビネーションも素晴らしい。
■旅先で出会う不思議な人々...いつしかのり子の心境に変化が
2匹の大型犬を連れた赤い服の女(伊佐山ひろ子)、車を失った2人の前に現れる逆さになった車の中にいたじいじ(大西力)、文明社会を憂い、森の中で暮らしている父(高良健吾)と息子(原田琥之佑)、時計屋のおばあさん(渡辺美佐子)。2人は現実と夢の境目で生きているようなストレンジな人たちと出会い、旅を続けていく。
年齢も性別も関係なく、人と接し、生きることも死ぬことも全てが世界の一部であることを本能で知っているかのようなハルの生命の輝きに、いつしかのり子の無色だった世界が色づいていく。旅の後半で綾瀬が初めて涙を流すシーンも、ハルとのり子のどちらが子供だかわからないぐらいにチャーミングだ。
素敵なロードムービーを、綾瀬の体温まで伝わってくるような演技に触れながらひととき、時間を忘れて楽しんでほしい。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
ルート29
放送日時:2025年11月2日(日)21:00~、11月13日(木)16:40~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2025年11月5日(水)17:50~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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