蒼井翔太と七海ひろき、信頼で結んだデュエット 演劇と音楽が交錯した「DRAMATIC LIVE "METEORA"」
9月6日に東京・Kanadevia Hall(TOKYO DOME CITY HALL)にて、「蒼井翔太×七海ひろき DRAMATIC LIVE "METEORA"」が開催された。
蒼井翔太と七海ひろき、2人の名前が並んだだけで胸が高鳴るファンは多かったはずだ。声優、俳優、アーティスト、それぞれ異なるフィールドで活躍してきた2人が、コラボミニアルバム『METEORA』を携えて初めて挑むツーマンライブ。その空間は、歌と物語が交錯しながら、観客の心を大きく揺さぶる濃密な時間となった。

撮影=hajime kamiiisaka
幕開けを飾ったのは、アオ(蒼井翔太)とウミ(七海ひろき)の出会いを描いた演劇パートだ。砂漠化が進む地の星で花を研究する青年と、不慮の事故にあった宇宙船の乗組員である青年。孤独を抱えた2人が通信を通じて心を通わせる様子は、シンプルな会話劇ながらも、歌が差し込まれることで一気に世界が広がっていく。

撮影=hajime kamiiisaka

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最初に披露されたのは「CosmoS」。ステージの両端に立つ2人が、それぞれの場所から放つ歌声を重ね合わせた瞬間、客席は息を呑む。スクリーンに映し出される宇宙の映像と生バンドの演奏が相まって、まるで自分自身もその通信に立ち会っているような没入感に包まれた。続いて披露されたのは「Stella」。互いに手を伸ばし合い、最後には腕をクロスさせる振り付けが加わることで、奇跡の出会いを歌う歌詞が立体的に浮かび上がってくる。歌い終えた瞬間、会場を包んだ拍手は2人の友情を祝福するようだった。さらに「砂漠の花」では、軽やかで希望に満ちたハーモニーが響き渡る。スクリーンには花々が咲き誇り、その映像と歌声が呼応するかのように、楽曲が現実を変えていく力をまざまざと感じさせる。終盤で自然と客席から漏れたどよめきは、その瞬間を確かに共有していた証だった。
撮影=hajime kamiiisaka
物語はやがて緊迫の局面を迎える。ウミの乗る宇宙船「メーティオ」が地の星を破壊するための兵器だったと明かされ、絶体絶命の中で再び歌われる「CosmoS」。冒頭とは全く異なる熱量を帯びたデュエットに、観客も固唾を呑んで見守る。システムが停止し、風の星に長らく存在しないはずの花が咲く場面で巻き起こった拍手と歓声は、フィクションを超えて音楽が奇跡を起こすことを確信させるものだった。
撮影=hajime kamiiisaka
幕間では、蒼井のマスコット「たむたむ」と七海の「773くん」が登場するユーモラスな映像で会場を和ませ、観客を次のステージへと誘う。そして黒衣装で現れた2人が放ったのは「革命デュアリズム」。水樹奈々×T.M.Revolutionの名曲を、蒼井が天空を突き抜ける高音で、七海が地に響く低音で分担する。声質の違いが完璧な補完関係となり、ホールは揺れるほどの熱狂に包まれた。改めての挨拶で固い握手を交わした2人は、お互いの存在の大きさを語り合う。客席もその姿に温かい拍手を送り、ステージとフロアの距離がさらに近づいた瞬間だった。
撮影=hajime kamiiisaka
七海のソロコーナーは「Not Over」からスタート。洗練されたリズムに乗せて伸びやかに響く低音がホールを包み込み、その余裕ある歌いぶりに自然と視線が集まる。続いて披露されたのは蒼井の「give me ♡ me」のカバー。アレンジを効かせた軽快なサウンドに合わせ、客席からは「カイちゃーん!」の声が飛び交い、場内は一気に祝祭的なムードへと変わった。観客に笑顔で応えながらステージを縦横無尽に動く姿は、表現者としての確かさに加え、会場全体を巻き込むエンターテイナーとしての魅力を強く放っていた。締めくくりとなった「Knock down night」では、ミュージカルさながらの芝居がかった身振りやリズミカルなステップを織り交ぜ、目と耳の両方を楽しませる。軽妙なジャズの香りと大人の余裕が同居したパフォーマンスは、七海ひろきというアーティストが持つ多彩な側面を鮮烈に印象づけた。
撮影=hajime kamiiisaka
再び蒼井がステージに登場し、披露されたのはデュエット歌唱による「It's My Soul」。赤いライトがステージを照らす中、七海の力強い歌声と蒼井の鋭いハイトーンがぶつかり合い、火花が散るような熱を放つ。アイコンタクトを交わしながら全身で歌をぶつけ合う姿に、観客の体温も一気に上がっていく。ソロパートに移ると、蒼井は「零」で空気を一変させる。凛とした立ち姿のまま放つ突き抜けるような高音と、しなやかな身振りを交えた表現が重なり合い、圧倒的な存在感で観客を引き込んだ。続いて七海の楽曲「ポラリス」をカバー。蒼井ならではの情感をたっぷりと込めた歌声と、スクリーンに広がる満天の星空がリンクし、会場全体がひとつの銀河のように変わっていく。言葉のひとつひとつを丁寧に紡ぐ歌唱に、客席は息を殺して聴き入った。そして「flower」では、色とりどりのペンライトが揺れ、ホールいっぱいに花畑のような景色が広がっていく。歌声と光が寄り添うように響き合い、演劇パートで描かれた"花"のイメージがそのまま現実に重なった。ステージと客席が自然とひとつになり、物語を共に描いているような温かな時間だった。
撮影=hajime kamiiisaka
蒼井が「カイちゃーん!」と呼び込むと、七海が再びステージに登場。蒼井の「ポラリス」を聴いた七海は、「しょーたんの歌声が、きっとみなさんの心にスッと届いていたと思う」と温かく語る。すると蒼井も「今回カイちゃんと一緒に曲と舞台を作り上げて、まさに掛け算みたいに化学反応が生まれたのを実感してる」と嬉しそうに笑顔を見せた。このやり取りこそ2人が互いを信頼し合い、共鳴し合う瞬間の象徴のように感じられた。
撮影=hajime kamiiisaka
2人が再び揃ったラストナンバーは「BAD END」。蒼井の突き抜ける高音と七海の重厚な低音が、互いを押し上げるように響き合う。サビで放たれるエネルギーは凄まじく、観客の身体に直接ぶつかってくるようだ。お互いに顔を見合わせ、笑みを浮かべながら歌声を交わす姿は演劇パートで描かれたアオとウミの記憶が重なり、胸を熱くさせた。
撮影=hajime kamiiisaka
演劇と音楽を往還しながら、2人の個性と表現力が交錯する稀有なライブだった。蒼井翔太の圧倒的な声のレンジと色彩感覚、七海ひろきの包容力ある低音と舞台性。そのどちらもが単独でも十分に強い力を持ちながら、重なり合った時に生まれる化学反応は唯一無二のものだった。歌が物語を動かし、物語が歌を輝かせる瞬間をファンと共有したこの日の体験は、きっと誰にとっても忘れられない一日になったはずだ。
取材・文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
M-ON! LIVE 蒼井翔太×七海ひろき 「DRAMATIC LIVE “METEORA”」
放送日時:2025年11月9日(日) 22:30~
チャンネル:MUSIC ON! TV(エムオン!)(スカパー!)
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