横浜流星「正体」で見せた"5つの顔"――逃亡犯を演じ分けた圧倒的な表現力
2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で主人公・蔦屋重三郎を熱演し、映画「国宝」では歌舞伎界の名門の御曹司・大垣俊介役で高い評価を獲得した横浜流星。2026年も広瀬すずとのW主演映画「汝、星のごとく」やTBS系金曜ドラマ「LOST10」といった話題作への出演が続いている。
そんな今だからこそ、あらためて振り返りたい作品が、横浜が"5つの顔"を持つ逃亡犯を演じた映画「正体」(2024年)だ。横浜の繊細な役作りが光る本作が、9月12日(土)に映画・チャンネルNECOで放送される。
©2024 映画「正体」製作委員会
染井為人(そめい・ためひと)の同名小説を原作に、藤井道人(ふじい・みちひと)監督が映画化した「正体」。横浜が演じるのは、殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた後に脱走した指名手配犯・鏑木慶一。逃亡を続けるなかで姿や名前を変え、さまざまな人々と出会っていく。
本作での大きな見どころとなるのが、鏑木が潜伏先で見せる"5つの顔"だ。死刑囚となった「鏑木慶一」のほか、工場で働く日雇い労働者「ベンゾー」、フリーライターの「那須」、水産加工工場で働く「久間」、介護施設の職員「桜井」の5つの顔を演じる。
横浜は、髪形や服装だけでなく、目元や声、仕草、佇まいなどにも変化を加え、それぞれ異なる人物像を作り上げた。久間ではまぶたを一重に変え、桜井では目元の印象を隠すためにメガネをかけるなど、細部まで役柄に合わせて工夫されている。
しかし、横浜自身が完成披露舞台挨拶で語っているように、5つの顔は「別人格」ではない。どの姿でも"鏑木としての心"を意識し、監督やメイク部、衣装部スタッフと相談しながらリアリティーを追求したという。やりすぎれば"変装"が目立ってしまうからこそ、街の中に自然と紛れ込める人物として成立させている。この繊細な役作りこそ、本作で横浜が見せる表現力の核心だ。
©2024 映画「正体」製作委員会
鏑木と出会う人々も、それぞれ異なる形で彼を見つめる。
那須として現れた鏑木と出会う安藤沙耶香(吉岡里帆)は、交流を重ねるなかで彼の無実を信じるようになる。
一方、野々村和也(森本慎太郎)はベンゾーの正体に疑いを抱き、酒井舞(山田杏奈)は桜井として働く鏑木に恋心を寄せる。そして、刑事の又貫征吾(山田孝之)は、逃亡を続ける鏑木を追う。
「信じる」「疑う」「恋する」「追う」――鏑木をめぐるそれぞれの視線が交差することで、観る側にも「この男は何者なのか?」という問いが残り続ける。
ここで印象的なのが、横浜が鏑木の感情を大きな身振りだけで説明しないことだ。ふとした表情や目線、相手との距離感に、その人物が抱える思いをにじませる。姿を変えた先で人との関係が生まれるほど、逃亡者としての緊張感と、1人の人間としての揺らぎが同時に浮かび上がってくる。
だからこそ、5つの顔を見比べていくと、その奥にいる"同じ鏑木"の存在も見えてくる。外見を変えることそのものではなく、変化した姿の奥に一貫した人物を存在させる。そこに横浜の演技の確かさが表れている。
「正体」での演技が高く評価された横浜は、第48回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞。さらに2025年公開の「国宝」でも第49回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞している。役柄の輪郭に合わせて身体や佇まいを変えながら、人物の内面まで立ち上げていく表現力は、横浜流星という俳優の大きな魅力の1つだ。
さまざまな人物を演じる現在だからこそ、「正体」をあらためて見返してみると、横浜流星が1人の人物をどのように作り上げてきたのか、その役作りの確かさを感じられるはずだ。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
正体
放送日時:2026年9月12日(土)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
出演:横浜流星 吉岡里帆 森本慎太郎 山田杏奈/山田孝之
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