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夏目雅子の凛とした眼差しが刻む、父と愛する男への思い...相米慎二監督作品「魚影の群れ」で見せた女優としての力量

2026/09/07

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「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

ドラマ「西遊記」(1978年~1980年)の三蔵法師役で一躍人気を集め、「鬼龍院花子の生涯」(1982年)や「時代屋の女房」(1983年)など、映画でも強い印象を残した夏目雅子。1985年に27歳で亡くなった後も、数々の作品を通してスクリーンに刻まれたその姿は、今なお輝きを放ち続けている。

そんな夏目の演技力を改めて感じさせるのが、1983年公開の相米慎二監督作品「魚影の群れ」だ。吉村昭の同名小説を原作に、青森県下北半島の港町・大間を舞台に、マグロの1本釣りに生きる男たちと、彼らを取り巻く女たちの姿を描く。夏目は、緒形拳演じる漁師・小浜房次郎の娘、トキ子を演じている。

その4Kデジタルリマスター版が、9月9日(水)より日本映画専門チャンネルでテレビ初放送される。さらに今回放送される4K版は、現在開催中の第83回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にも日本から唯一選出されており、1983年の作品が新たな形で世界へ届けられることでも話題になった。

夏目雅子演じるトキ子の父親を演じた緒形拳、恋人を演じた佐藤浩市の圧倒的なリアリティのマグロ漁シーンも見どころの「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
夏目雅子演じるトキ子の父親を演じた緒形拳、恋人を演じた佐藤浩市の圧倒的なリアリティのマグロ漁シーンも見どころの「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

小浜房次郎(緒形)は、マグロ漁に人生を懸けてきた漁師。娘のトキ子(夏目)は、町で喫茶店を営む依田俊一(佐藤)との結婚を望んでいた。俊一がトキ子との結婚のため小浜家の養子となり、漁師になることを決意したことで、父と恋人の間に複雑な感情が生まれていく。

本作で際立つのが、夏目が演じるトキ子の存在感だ。大間での撮影に臨むにあたり、夏目は現地の方言を身につけるため事前にカセットテープを渡され、撮影期間中は方言スタッフの家に通って食事をするなど、その土地に溶け込もうと努めたという。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

相米監督といえば、長回しを多用した演出で知られる。本作でも、緒形と夏目が食事をする場面では、朝8時から17時ごろまで、同じ芝居を繰り返しながら撮影が続いたという。助監督を務めた榎戸耕史は後年、夏目が相米組の撮影方法をつかんでいく早さに驚いたことを振り返っている。

その変化は、トキ子という人物の佇まいにも表れている。自転車に乗り、演歌を口ずさみながら坂道を下る場面では、大間の日常に生きる女性としての自然体の姿が印象に残る。一方、父の身支度を手伝い、漁へ送り出す何気ない所作からは、家族としての情愛がにじむ。海に命を懸ける男たちの世界に身を置きながら、トキ子自身もまた、自分の人生を生きようとしている。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

本作の見どころの1つが、長回しの中で捉えられる夏目の芝居だ。カメラが長時間動き続ける場面では、俳優の立ち位置や動きも重要になる。榎戸によれば、夏目はカメラの動きを把握し、自らも少しずつ動いて画面に収まり続けていたという。

さらに、俊一に海への思いを問いかける場面では、相手だけを見るのではなく海へ視線を向けるなど、何気ない視線の置き方からも、トキ子という人物を細やかに立ち上げていく夏目の芝居のうまさが伝わってくる。

海に出て命を懸ける房次郎と、その背中を追って一人前の漁師を目指す俊一。緒形が実際に巨大なマグロを釣り上げるなど、海上で繰り広げられる男たちの姿は圧倒的な迫力を放つ。そんな彼らに対して、トキ子は陸から父や俊一に自分の思いをぶつけていく。その対比が、夏目演じるトキ子を強く印象づけている。

夏目は本作と「時代屋の女房」で、第7回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。緒形も「魚影の群れ」「楢山節考」「陽暉楼」で同賞の最優秀主演男優賞に輝き、佐藤も「魚影の群れ」「日本海大海戦 海ゆかば」で優秀助演男優賞を受賞した。1983年当時、夏目が女優としてさらに評価を高めていた時期に、その実力を刻んだ1作となった。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

1985年に27歳で亡くなった夏目が、「魚影の群れ」に挑んだのはそのわずか2年前。華やかな存在感だけでなく、その土地に溶け込み、相米監督の長回しの撮影の中で身体と眼差しを駆使してトキ子を生きる姿には、当時の彼女が持っていた表現力が凝縮されている。

そして榎戸によれば、相米監督は後に夏目について「もう一度あいつとやりたかった」と繰り返し話していたという。現場を知る人物の言葉からも、夏目が相米作品の中で強い印象を残したことがうかがえる。

4Kデジタルリマスター版では、現存する35mmオリジナルネガを4K解像度でスキャンした映像を修復し、音声もオリジナル音ネガからデジタイズして修復。大間の海や波、そこに生きる人々の表情が、4Kの映像で改めて鮮やかによみがえる。2026年、時を超えてよみがえる「魚影の群れ」で、夏目雅子が刻んだ凛とした存在感を改めて確かめたい。

「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
「魚影の群れ」<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

©1983/2026松竹株式会社

文=HOMINIS編集部

放送情報【スカパー!】

魚影の群れ<4Kデジタルリマスター版><PG-12>
放送日時:2026年9月9日(水) 21:30~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

出演:緒形拳 夏目雅子 佐藤浩市 十朱幸代 ほか

詳しくは
こちら

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