小林旭が20歳で見せたスターの風格 「南國土佐を後にして」で味わう若き日の魅力
2026年に日活デビュー70周年、そして88歳の米寿を迎える小林旭。映画俳優として数々の作品に出演する一方、「熱き心に」「昔の名前で出ています」などのヒット曲でも知られ、長きにわたって第一線で活躍してきた。映画・チャンネルNECOでは、そんな小林の節目を記念した「【3ヶ月連続】小林旭 日活デビュー70周年&米寿 記念特集」を放送。そのラインナップの一作として、10月5日(月)に放送されるのが、1959年公開の映画「南國土佐を後にして」だ。
ペギー葉山のヒット曲「南国土佐を後にして」をモチーフに、斎藤武市監督が映画化した本作。小林は、かつて"ダイスの眼"と呼ばれた凄腕の賭博師・原田譲司を演じている。刑期を終えた譲司は、母と恋人の春江(浅丘ルリ子)が待つ故郷・高知へ帰ってくる。これまでの生活から足を洗い、まっとうに生きていこうとするものの、春江は亡き父が残した借金を理由に、北村組の北村(内田良平)との結婚を迫られていた。春江を救うため、譲司は封印したはずのダイスを再び手にすることになる。
©日活
本作が公開された1959年、小林は20歳。後に「渡り鳥」シリーズや「銀座旋風児」シリーズなどで一時代を築くことになるが、「南國土佐を後にして」でもすでに、そのスターとしての存在感を随所に感じることができる。譲司の立ち振る舞いを見ても、過去を背負った男という役柄もあり、感情を大きく表に出すことは少ない。それでも、背筋を伸ばして歩く姿や相手をじっと見据える視線には自然と目を奪われる。多くを語らずとも、その場にいるだけで画面の中心に納まってしまう。一方で、母親や春江を前にした時には表情を柔らかく変化させ、かつて賭博の世界に身を置いていた男の鋭さと、大切な人を思う青年としての優しさを見せている。"マイトガイ"と呼ばれる小林の魅力が、この頃からすでに形になっていたことが分かる。
©日活
そして、本作の大きな見どころとなるのがダイスを使った勝負のシーンだ。賭博から足を洗うことを決めていた譲司が、春江を救うために再び勝負の世界へ戻っていく。小林はダイスを巧みに操る手さばきも披露しており、その一連の動きにも譲司の格好良さが凝縮されている。派手なせりふや演出に頼るのではなく、手元の動きや視線、静かな間によって緊張感を作り出していくところも印象的だ。
さらに「南國土佐を後にして」は、音楽と映画が密接に結びついた作品でもある。タイトルにもなった「南国土佐を後にして」を歌うペギー葉山が本人役で出演し、劇中で響くその歌声が、故郷・高知を舞台にした物語や譲司の家族への思いと重なっていく。高知港やはりまや橋、桂浜、室戸岬などを映し出したロケーション映像も相まって、1950年代末の高知の空気を感じられるのも本作ならではだ。小林自身も俳優だけでなく歌手として活躍し、「ダイナマイトが百五十屯」「ズンドコ節」「北帰行」など数多くの楽曲を歌ってきた。映画の中に音楽が自然に入り込み、俳優と歌手という2つの魅力が共存するスタイルは、その後の小林のキャリアとも重なって見える。
©日活
「南國土佐を後にして」が公開された1959年には、「銀座旋風児」シリーズ、そして「渡り鳥」シリーズもスタート。小林は日活アクション黄金期を象徴するスターの一人へと駆け上がっていく。そんな時期の小林を捉えた本作には、若々しさと同時に、後の作品にも通じる独特の風格がある。鋭い視線、堂々とした立ち姿、身体を使ったアクション、そして音楽との親和性。長いキャリアを築いてきた"小林旭らしさ"の原点を、一つの作品の中で楽しめるはずだ。
日活デビュー70周年、米寿という節目を迎える今だからこそ、そのスターとしての出発点に改めて触れてみるのも面白い。映画・チャンネルNECOで10月5日(月)に放送される「南國土佐を後にして」は、小林旭がなぜ昭和を代表する映画スターとなったのか、その理由の一端を感じさせてくれる作品だ。
文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
南國土佐を後にして
放送日時:2026年10月5日(月)8:00~ほか
チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
こちら