福山雅治が演じる"ダークヒーロー"の新鮮さ 東野圭吾原作『ブラック・ショーマン』で見せた新たな顔
東野圭吾原作、福山雅治主演。この組み合わせから、まず『ガリレオ』シリーズを思い浮かべる人は多いだろう。2007年にドラマがスタートして以来、福山演じる天才物理学者・湯川学は、『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』『沈黙のパレード』と3本の劇場版でも活躍してきた。2026年8月には、東野による「ガリレオ」シリーズ最新長編『永遠の記憶』も発売。一方の福山も、9月9日に5年9カ月ぶりのオリジナルアルバム『超新星』をリリースした。そんな2人が『ガリレオ』とは異なる形でタッグを組んだ映画『ブラック・ショーマン』が、10月24日(土)に映画・チャンネルNECOで放送される。
©2025映画『ブラック・ショーマン』製作委員会
2025年に公開された本作で、福山が演じたのは神尾武史。かつてラスベガスで名を馳せた元マジシャンで、兄・英一(仲村トオル)が殺害されたことをきっかけに故郷へ戻り、姪の真世(有村架純)と事件の真相を追っていく。卓越したマジックの腕を持つだけでなく、人間観察にも長けている一方、金にはシビアで、必要とあれば平然と嘘をつく。いわゆる正義感の強いヒーローとは、少し違う人物だ。
実は、この武史が生まれたきっかけにも福山が関わっている。東野が新作の主人公を考えていた頃、福山から「ダークヒーローを演じてみたい」と聞き、それならば福山の"悪党"を見てみたいと思ったことが執筆につながったということが公式サイトで明かされている。長く作品をともにしてきた東野と福山だからこそ実現した役とも言えるだろう。
湯川と武史には、似ているところもある。どちらも頭の回転が速く、人より一歩先まで状況を見ている。何を考えているのか簡単には明かさず、周囲を置いていくように真相へ近づいていくところも共通する。
湯川が物理学の知識と論理をもとに不可解な現象を解き明かしていくのに対し、武史が駆使するのはマジックや話術、そして人間観察だ。相手の何気ない仕草や言葉の端々から違和感を拾い、ときには自ら仕掛けを施しながら、その胸の内を探っていく。謎そのものに向き合う湯川に対して、武史はその謎を生み出した"人"へと目を向けていくのである。
©2025映画『ブラック・ショーマン』製作委員会
そこに、福山の芝居の面白さも表れている。視線を動かすタイミングや、言葉を口にするまでの間。相手の話を聞いているようで、実は何かを見透かしているようにも感じられる。福山の持つ知的な雰囲気は湯川にも通じるが、武史ではそこに人を食ったような軽やかさが加わった。
さらに福山は、劇中で披露するマジックにも自ら挑戦している。武史のマジシャンらしさは、カードを扱う手つきだけに表れているわけではない。人前に立ったときの佇まいや視線の運び方、相手との距離の取り方まで、常に周囲を意識して振る舞っているように見える。アーティストとして長年ステージに立ち、多くの観客を惹きつけてきた福山だからこそ、武史の持つ"人に見られること"を熟知したショーマンとしての華やかさにも説得力が生まれている。
©2025映画『ブラック・ショーマン』製作委員会
そんな武史の隣で、観客に近い視点を担うのが有村架純演じる真世だ。父を突然失った真世は、長く疎遠だった叔父と行動をともにすることになる。武史の突拍子もない行動に驚き、怪しければ疑い、振り回されればきちんと反発する。その反応があることで、武史という人物がさらに面白く見えてくる。
武史だけを見ていれば、鮮やかな推理もマジックも当たり前のように進んでしまう。しかし真世が横で戸惑い、驚き、ときには食ってかかることで、武史の常人離れした部分が浮かび上がる。恋人でも仕事仲間でもなく、叔父と姪。少し距離のある関係だからこそ、2人の掛け合いにも独特の面白さが生まれている。
©2025映画『ブラック・ショーマン』製作委員会
有村は2026年にも映像作品への出演を重ねているが、『ブラック・ショーマン』でも印象に残るのは、福山の強いキャラクターを受け止めながら、真世自身の感情をきちんと残しているところだ。武史とのやり取りでは軽快に反応しながら、父の死に向き合う場面では空気が変わる。振り回されるだけの"相棒"ではなく、真世の物語としても見られるのは、有村の芝居によるところが大きい。
『ガリレオ』で長く作品をともにしてきた東野と福山が、その関係の延長線上でたどり着いたのが神尾武史という主人公だった。湯川学とは異なる方法で真相へ迫る武史を福山がどう立ち上げ、その隣で有村演じる真世がどう受け止めるのか。2人の掛け合いまで含めて、『ブラック・ショーマン』にはこれまでの東野×福山作品とは違った面白さがある。
『ガリレオ』を知っている人なら、湯川との違いを楽しみながら、福山が演じる新たな主人公像に触れられるはずだ。そこに有村との軽妙な掛け合いが加わり、『ブラック・ショーマン』ならではのバディものとしての魅力も生まれている。東野と福山が長い関係の先で生み出した神尾武史という男、そのショーマンぶりにあらためて注目したい。
文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
ブラック・ショーマン
放送日時:2026年10月24日(土) 21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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