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蒼井優が田中裕子と1本の線で繋がる表現力を見せた映画『おらおらでひとりいぐも』

2022/07/17

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映画『おらおらでひとりいぐも』で過去の桃子さんを演じた蒼井優
映画『おらおらでひとりいぐも』で過去の桃子さんを演じた蒼井優

田中裕子が15年ぶりに映画主演、ひとり暮らしの桃子さんの若き日を蒼井優が演じ、話題となった『おらおらでひとりいぐも』が日本映画専門チャンネルで7月19日(火)10:30よりに放送される。原作は、芥川賞と文藝賞をダブル受賞した若竹千佐子が63歳で書いた同名ベストセラー小説で、メガホンをとったのは沖田修一。岩手出身の桃子さんは2人の子供を育てあげた後に夫・周造(東出昌大)に先立たれ、一軒家で暮らす75歳。朝起きて、目玉焼きとトーストを食べながらTVを見て、図書館で古代生物の本を借りたり、自分で車を運転して病院に行ったりする生活を送っている。最近、ボケてきているのではないかと不安を抱いている桃子さんの心の声で話し相手になる賑やかな3人組、"寂しさトリオ"を演じるのは濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎。蒼井優が20代、30代の独身時代~結婚生活時代の桃子さんを演じ、現代のシーンでは桃子さんの脳内の声を担当している。淡々とした日常を描きながら、ひとりの女性の人間ドラマをユーモアとファンタジーを交えて描いた本作は田中裕子の存在感と演技力が映画の太い柱となっている。青春時代を演じた蒼井優も田中裕子と1本の線で自然と繋がる表現力を見せる。もうすぐ1児の母となる蒼井優が演じた桃子さんの人生を彩るシーンとは?

穏やかに微笑む蒼井優
穏やかに微笑む蒼井優

■東京に向かう列車の中での蒼井優の表情に引き込まれる

桃子さんは親の勧めで組合長の息子と結婚させられそうになるものの、直前で逃亡。地元の岩手県遠野市を飛び出し、東京オリンピックの年、1964年に列車で1人東京に向かう。たった1人、車内で涙を流す桃子さんの顔がゆっくりアップになり、やがて窓の外の景色を見て未来への希望にわずかに微笑む。その若き日の桃子さんの表情から年老いた桃子さんへと繋がっていったことを感じさせるシーンはとても印象的だ。食堂で働くことになり、仲良くなった山形県出身の店員と部屋の中で一緒に昭和の大ヒット曲「愛して愛して愛しちゃったのよ」を独自の振り付けで歌う姿も超キュート。ちなみに現在の桃子さんを見守る"寂しさトリオ"も急に歌い出したり、演奏したりするのだが、つい一緒になって踊ってしまうノリのいい桃子さんにも"あの頃と変わってないんだな"とほっこりさせられる。出身地が河童や座敷童が登場する「遠野物語」の舞台となった町であることも、不思議なことで満ちている本作の素敵な要素となっている。

■田中裕子と蒼井優が語り合うシーンには人生の深みが

食堂で周囲のことなど気にせずに自分のことを"おら"と言う周造に一目惚れした桃子さん、キッチンに出没したゴキブリを周造に退治してもらうものの、捕獲したゴキブリを持って追いかけ回されて悲鳴を上げる桃子さん、恋に落ちてからの時代では蒼井優の幸せで生き生きとした顔が映し出される。そして、映画の後半では現在の桃子さんと過去の桃子さんが会話する場面も。

「この幸せにいつか終わりが来るとは夢にも思わなかった」と言う蒼井優に田中裕子が返す言葉は意外でもあり、深みを感じさせる。人生の終わりを意識しながらもその表情がときおり少女のように見える田中裕子の凄さと、高度成長期の日本から飛び出したような雰囲気をまとった蒼井優の細やかな演技。初共演にして素晴らしいタッグとなった。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

おらおらでひとりいぐも
放送日時:2022年7月19日(火)10:30~、7月29日(金)6:30~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくは
こちら

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