山寺宏一×園崎未恵×石見舞菜香が語る、"吹き替え"に込めた矜持 『ジュラシック・ワールド』新録版で感じたお互いの印象も

8月8日(金)に公開される劇場新作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』を記念して、洋画専門チャンネル ザ・シネマでは、『ジュラシック・パーク』『ジュラシック・ワールド』のシリーズ全6作を字幕版・吹替版で一挙放送。なかでも注目を集めているのが、ザ・シネマ独自のオリジナル企画として制作された"新録吹替版"だ。
今回は、『ジュラシック・ワールド』『炎の王国』『新たなる支配者』の3部作すべてに新たな日本語吹替を収録。主人公オーウェン役を山寺宏一、クレア役を園崎未恵、そして物語の鍵を握る少女メイジー役を石見舞菜香が務め、シリーズに新たな息吹をもたらしている。
この特別なプロジェクトに参加した3人に、長年愛され続ける本シリーズへの想い、吹き替えという仕事にかける矜持、そして収録現場で感じたお互いの印象について話を聞いた。

――まずは、今回『ジュラシック・ワールド』シリーズの新録版に参加されたお気持ちをお聞かせください
山寺「この『ジュラシック』シリーズの新録版に、再び参加できること自体がとても光栄です。しかも、クリス・プラット演じるオーウェンというキャラクターに再度声をあてられる。1作目が好評だったからこそ2作目、3作目と続いていると思うので、本当に声優冥利に尽きる仕事だなと感じます。それは僕だけではなくて、このシリーズに関わるチーム全員のチームワークの賜物だと思いますし、その一員でいられるのは本当にありがたいですね」
園崎「私自身も『ジュラシック・パーク』世代で、子どもの頃から大好きだった作品にこうして参加できて、しかも自分がよくご一緒している女優さん(ブライス・ダラス・ハワード)の声を何度も担当できるのは、本当に役者冥利に尽きます。やっぱりこの作品、シリーズ全体に子どもの頃からの憧れが詰まっているので、毎回現場に行くたびに夢みたいだなと思っています」
石見「私は『炎の王国』から参加したのですが、実写映画の吹き替え自体が初めての経験でした。しかも、『ジュラシック』シリーズの大切な役。最初は台本の読み方も慣れず、プレッシャーはものすごく大きかったのですが、家族で見ていた映画の中に自分が入るという夢のような機会をいただけて、正直、ドキドキや不安が先に立ちました。でも、現場に入ったら、山寺さんや園崎さんという"吹き替え界のレジェンド"のお二人が本当に温かく迎えてくださって。背中を見ながら、必死に喰らいついて演じました。この経験は一生忘れられない財産になりましたね」

――新録版という、すでにファンの多い大作を改めて吹き替えることへのプレッシャーや、やりがいについてはいかがですか?
山寺「精神的なプレッシャーは正直大きいです。『なんでまた新録版を作るの?前の吹き替えでいいのでは?』という声も当然あるでしょう。でも、より多くの人に"吹き替え版の面白さ"を届けたい、ベストを尽くすしかない、という使命感を持って臨んでいます。自分が憧れていた大先輩――たとえば富山敬さん、小川真司さん、永井一郎さんらが築き上げてきた吹き替え文化のバトンを受け継ぐ気持ちで挑んでいます」
園崎「私も、完成された吹き替え版がすでに存在する中で、どうやったら"新しい楽しみ方"を届けられるかを考えました。ディレクターやキャストも変わり、微妙にニュアンスや演出も異なります。同じ作品でも、何度も味わってもらえる面白さをどう作るか。それが新録版の意義だと思っています」
石見「私の場合は、前作の子役の方が本当に素晴らしかったので、自分に務まるのか不安もありました。でも、真剣に役に向き合うことで、新しい一面を引き出せたらと、全力で取り組みました」

――今回は3人で一緒に収録されたそうですね。近年はコロナ禍もあり、個別収録も多かったと伺いますが、収録スタイルの違いや、それぞれ印象的だったことはありますか?
山寺「シリーズごとに収録の仕方も変わりました。1作目は僕一人で録ったんですが、2作目はキャストが集まり、3作目はこの家族3人での収録。かつては、みんなでスタジオに集まって、お昼も一緒に食べて......というのが普通でしたが、コロナ禍を経て個別収録も増えてきました。ただ、やっぱり全員で一緒に録ることで、同じ空気感・温度感が生まれますし、キャラクター同士の距離感や掛け合いの呼吸がよりリアルになりますね。今回、特に家族という役柄だったからこそ、3人揃っての収録はすごく意味があったと思います」
園崎「本当にそうですね。個別収録は一つのセリフにとことんこだわれる一方で、その場にいるからこそ生まれる"生"の反応や呼吸は、やっぱり全員収録ならではの醍醐味。今回は、劇中でも家族の距離感が大事なシーンが多いので、3人で共有しながら収録できたことで、作品の空気感を自然に醸成できたんじゃないかと思っています」
石見「私は初めての実写映画の吹き替えで、しかもお二人と一緒に収録ということで、もう緊張で手汗が止まらなかったです(笑)。ただ、やっぱり自宅で一人で練習しているのと、実際の現場で掛け合いをしながら演じるのでは、全く感覚が違いました。お二人の生の芝居を間近で感じられたことが本当に勉強になりましたし、息遣いや間、テンポの違いを肌で体験できたことは貴重な経験でした」

――それぞれが演じたキャラクターについて、魅力や成長、役作りのポイントなども教えてください
山寺「オーウェンは『ジュラシック』シリーズで初めて恐竜と心を通わせた人間。タフで、勇敢で、そしてとても人間らしい優しさとユーモアを持っています。クリス・プラット本人の魅力をどう日本語に乗せて届けるか、毎回自分なりに工夫しています。特に、メイジーを抱きしめるシーンには理屈を超えて大切なものを守る強さみたいなものが、オーウェンらしさに直結していると感じました」
園崎「クレアは、シリーズごとに家族や子どもとの距離がどんどん変化していく人物です。1作目では完璧なキャリアウーマンとして描かれていた彼女が、恐竜や子どもと関わる中で、人間的に成長していく。その過程を演じること自体が、私にとっても大きな挑戦でした。ブライス・ダラス・ハワードさんも、シリーズを重ねるごとにたくましくなっていって、最初はハイヒールで白のスーツだったのに、今やアクションも体当たりでこなす女優さん。そういう女優魂みたいなものにも背中を押されました」
石見「メイジーは、シリーズ初登場時は無邪気で少しイタズラっ子な面もありましたが、物語が進むごとに"自分が何者なのか"と向き合っていく繊細なキャラクター。クローンであることに悩みつつ、同じように"この世界に生きる意味"を探している恐竜たちに共感し、寄り添っていく姿が印象的でした。大人から愛情を受けながら、時には自分の殻を破って行動する......その成長を、できるだけ自然体で演じるよう心がけました」

――お互いの演技や、現場で「すごい!」と感じた瞬間があれば教えてください
園崎「マイク越しでは絶対に感じられない熱量や圧力、細かなニュアンスは、隣で一緒に芝居して初めて分かるものです。山寺さんのセリフのキレや現場での存在感は、改めて"さすが"と感じましたし、石見さんは今回、子どもからティーンへの微妙な心の変化を本当に自然体で演じていて素晴らしかったです」
山寺「いや、本当にそう思います。園崎さんは同じ養成所の後輩ですが、現場での安定感や細やかな芝居は、もはやベテランの風格。石見さんは初めての実写吹き替えなのに、自然体で役に入り込み、難しい年齢の変化も見事に表現していました。年齢を超えて、リアリティのある演技を出すというのは本当に難しいことなんです」
石見「私はもう、お二人は"テレビや映画館でずっと聞いていた声"の持ち主なので、現場でお芝居を間近で見られるだけで圧倒されっぱなしでした。テストや本番を重ねる中で、時にはご自身で違うなと感じて芝居をやり直していらっしゃる姿を見て、"プロフェッショナル"とはこういうことなんだ、と実感しました」

――声優といえばまだまだアニメのイメージが強いですが、"吹き替え"というお仕事に、どんな意義や面白さ、あるいは難しさを感じていらっしゃいますか?
山寺「日本のアニメーションが世界的にも評価されている一方で、実写の吹き替えにももっと注目が集まってほしい、というのは僕の願いです。アニメは0からキャラクターを作り上げていく仕事ですが、洋画吹き替えはすでに完成した俳優の演技をどう日本語で伝えるかが勝負。どちらも"声優"という職業の中で、大きな意味を持っています。若い世代にも吹き替えを目指してほしいし、もっと多様な人材がこの世界に入ってくると嬉しいですね」
園崎「そうですね。よく『声優さんなんですね。どんなアニメに出てるんですか?』と聞かれることが多いですが、私自身はやっぱり"吹き替え"をメインフィールドだと思っています。実写映画の吹き替えは、俳優さんの存在感や表情、演技をどう"日本語の声"で支えられるかが醍醐味。その難しさ、奥深さを知れば知るほど、この仕事に誇りを感じますし、吹き替えという仕事の魅力をもっと多くの人に知ってほしいです」
石見「私はまだ吹き替えの現場の経験は少ないですが、今回のお二人との出会いや、現場で感じたプロフェッショナルの凄みは、今後の自分にとって大きな糧になると感じています。アニメも大好きですが、また洋画の吹き替えにもどんどん挑戦していきたいです」

――私自身、シリーズを観るたびに、単なる恐竜映画にとどまらない"生きることへの問いかけ"や家族・仲間との絆に心を動かされてきました。最後に、長く愛され続ける「ジュラシック」シリーズの魅力について、聞かせていただけますか?
山寺「このシリーズの魅力は、何よりもスケールの大きさ。恐竜が復活し、人類と共存できるのかというテーマにとどまらず、科学、社会、家族の在り方など様々な問いが詰まっています。映像の圧倒的な迫力はもちろんですが、物語を通じて進歩と調和、それに伴う"人間の選択"という普遍的なテーマが描かれていることも大きな見どころです」
園崎「シリーズそれぞれの時代背景や時事ネタが巧みに盛り込まれている点も大きな魅力です。DNAやクローンの問題など、公開当時の社会を反映した要素がたくさん登場しますし、キャラクターたちの"変化"や"成長"も味わい深い。個人的には『新たなる支配者』で映画のタイトルロゴが本編に登場するシーンが印象的で、何度観てもワクワクします」
石見「子どもから大人まで、どんな世代の方にも何か響くものがあるシリーズだと思います。ワクワクするアクション、大迫力の映像、そして家族や命の物語など見方次第で何度でも楽しめるのがこのシリーズの魅力です。私自身、この作品で得たたくさんの刺激を糧に、今後も役者として成長していきたいと思います」
取材・文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
『(吹)ジュラシック・ワールド【ザ・シネマ新録版】』
吹替:2025年7月21日(月・祝)16:15~、25日(金)18:45~
字幕:2025年7月21日(月・祝)8:15~、25日(金)10:15~
『(吹)ジュラシック・ワールド/炎の王国【ザ・シネマ新録版】』
吹替:2025年7月21日(月・祝)18:30~、26日(土)18:30~
字幕:2025年7月21日(月・祝)10:30~、26日(土)10:15~
『(吹)ジュラシック・ワールド/新たなる支配者【ザ・シネマ新録版】』
吹替:2025年7月21日(月・祝)21:00~、27日(日)21:00~
字幕:2025年7月21日(月・祝)13:00~、27日(日)12:45~
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