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2022/08/18

当時20歳の薬師丸ひろ子が主演を務めた80年代アイドル映画の傑作『Wの悲劇』

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昨年、歌手活動40周年を迎え、名女優としても広く知られる薬師丸ひろ子。薬師丸が20才の時に主演を務め、女優としての大きなステップを踏み出したきっかけとも言えるヒット作が映画『Wの悲劇』だ。

『Wの悲劇』に出演する当時20歳の薬師丸ひろ子
『Wの悲劇』に出演する当時20歳の薬師丸ひろ子

(C)KADOKAWA 1984

原作は夏木静子の同名小説で、後にドラマ化。2019年にはリメイクドラマも放送された。監督は本作で日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した澤井信一郎が務め、実力派の三田佳子を相手に、女優を目指すヒロイン・静香を堂々と演じた薬師丸のかわいさと芯の強さが印象的だ。静香に猛アタックする青年・森口を世良公則が演じていたり、劇団の演出家を蜷川幸雄が演じていたりと1980年代の空気感を感じられるセリフや映像には懐かしさもあり、今改めて見ると、いろいろな発見が散りばめられている。本作で薬師丸が見せた女優魂を振り返りたい。

■女優になることしか頭にない劇団研究生を熱演

本作は、衝撃的なシーンから始まる。研究生の静香は劇団員の五代(三田村邦彦)と一夜を共にし、帰り道に犬に向かって「私、変わった?」と話しかける。誰もいない夜の野外ステージでセリフを言っていたところにたまたま居合わせ、「君、役者さんかい?」と拍手を送られたのが森口との出会いだった。劇団の公演「Wの悲劇」のオーディションで狙っていた役がとれず、脇役に甘んじることになった静香は、花束を持ってアパートの前で待っていた森口に八つ当たり。気を取り直して飲みに行くものの、泥酔し、「美人でもなく、個性的でもない私は何なのよ?」と絡み、「演技派っていう手があるでしょ」と諭される。

(C)KADOKAWA 1984

そんな静香はある日、巡業先で劇団のスター女優(三田)が起こしたスキャンダルに否応なしに巻き込まれることに。何度も拒否するものの、「役者でしょ?」と強く言われ、ホテルの部屋で開演をイメージしながら、スイッチをオンにして演技するところは女優魂を感じさせる場面。清純派から脱皮しようとする薬師丸のエネルギーが映像からも伝わってくる。

■「顔、ぶたないで!私、女優なんだから!」語り継がれるセリフ

現実に起こった悲劇とシンクロするような舞台「Wの悲劇」はキャストを交代して上演されることになる。巻き込まれた静香は記者会見に出席するなど、一躍、時の人となるが、事情を知らない森口は静香を待ち伏せして、何があったのか問いつめ、口を割らない静香を平手打ち。そこで放ったのが、当時視聴者から真似されるほど流行った「顔ぶたないで!私、女優なんだから!」の有名なセリフだ。

(C)KADOKAWA 1984

静香が活躍するようになることを誰よりも願いながらも恋愛感情との間で揺れる森口と、その気持ちを知りながら女優という仕事の魅力にますます取り憑かれていく静香。雲の上の存在のような三田の女優然とした演技も素晴らしく、森口の前でも最後まで女優を貫き通す薬師丸の強くて切ない一挙一動から目が離せない。なお、主題歌に起用された松任谷由実作曲の「Woman"Wの悲劇より"」
も大ヒットを記録。薬師丸の澄んだ歌声が映画を締めくくる。

文=山本弘子

放送情報

Wの悲劇
放送情報:2022年9月3日(土)14:00~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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