「山河令」のブロマンスとは一転、チャン・ジャーハンがラブ史劇で覗かせる強引なアプローチ

あの「陳情令」(2019年)に次ぐブロマンス時代劇として、2021年の話題をさらった「山河令」。善悪と愛憎が複雑に絡み合う武侠の世界観と、ブロマンスとの相乗効果は絶妙で、その人気は瞬く間に世界中へと波及。主演のチャン・ジャーハンとゴン・ジュンの知名度も一気に拡大していった。

特に、暗殺組織の元首領・周子舒(ジョウ・ズーシュー)を演じたチャン・ジャーハンは、それまでも「ハンシュク～皇帝の女傳」(2015年)をはじめ数々のドラマに出演。端正なルックスはもちろん、しなやかな身のこなしで見せるアクションに定評のある演技派として注目を集めてきた。

そんな彼が"ツンデレ"な皇子を演じ話題を呼んだ宮廷ラブロマンス「如意芳霏～夢紡ぐ恋の道～」(2020年)が、アジアドラマチックTV (アジドラ)にて10月6日(木)より放送される。高貴な身分の2人の男性の間で揺れるおてんばなヒロインの恋愛模様を描く本作で、ジャーハンが演じるのは、悲しい過去を持つ高潔な皇子・粛王こと徐晋だ。

一見、とっつきにくいクールな徐晋だが、心を許した相手のピンチには捨て身で駆けつけるという硬派で男らしい人物。皇子と言う立場上、宮廷での敵も多く、ジュー・ジンイー演じるヒロイン・傅容のことも初めは刺客の一味ではと疑うが、目の前のことに一生懸命で快活な彼女に次第に惹かれていく。

たびたび自分の前に現れる傅容に、「またお前か」と不信感を募らせたかと思えば、いきなり壁ドン。ややSっ気のある憎まれ口と、お姫様抱っこにおんぶ、バックハグなど、ロマンチックな行動とのギャップが絶妙で、その甘過ぎないアプローチがクセになる。生まれながらにして高貴な身分ゆえ、天然な徐晋の"ツン"と"デレ"のさじ加減が、視聴者をぐいぐい惹きつける。

そして、窮地に陥った傅容を間一髪で救い出す際の荒っぽい仕草が堪らない。「山河令」では本格的な武侠アクションをたっぷりと披露したジャーハンだけに、完成度の高い男前なアクションも彼の魅力をいっそう引き立たせる。

相手役を務めるジンイーとは、「芸汐〈ユンシー〉伝 ～乱世をかける永遠の愛」(2018年)以来2度目の共演。ジンイーは、SNH48時代は総選挙で2年連続1位に輝き"4千年に1人の美少女"と呼ばれ、女優に転身してからも"古装美女トップ5"に名を連ねる人気女優。そんな彼女とジャーハンとのコンビネーションは安定感抜群だ。

顔を合わせれば衝突し合っていた徐晋と傅容だが、次第にその空気感が一変。威勢よく丁々発止のやりとりを繰り広げていたかと思えば、ふと視線を絡ませ、指先が触れ合っただけで一気に恋愛ムードに切り替わる――恋愛感情を自覚した2人の絶妙な呼吸には序盤とは異なる魅力があり、さらに視聴者のドキドキを加速させていくのだ。

徐晋の恋のライバルであり皇帝の弟・安王こと徐平に扮するのは、ラブ史劇「若様！私がお守りします」(2020年)で主演を務めたリウ・イーチャン。こちらは、いつでも傅容の近くにいて優しく愛を囁くという分かりやすいアプローチで、徐晋の恋をおびやかす。回を重ねるごとに切なさを増していく三角関係の行方が、本作の最大の見どころだ。

さらに、なかなか距離が縮まらないサブカップル、傅容の姉・傅宣と粛王の部下・呉白起のじれキュンぶりもたまらない。ツンデレに甘々、じれキュンと、異なるタイプの恋愛模様がギュッと詰め込まれた、ある意味で超贅沢な宮廷ラブ史劇となっている。

本作の後すぐ「山河令」の配信も始まり、一気にスターダムへと駆け上ったジャーハン。「山河令」での無骨な首領と、「如意芳霏」でのツンデレ皇子――両者が醸し出す魅力の違いを味わってみてはいかがだろうか。

文＝酒寄美智子