コン・ユの「高校生」役が愛おしい！「コーヒープリンス1号店」と「トッケビ」の狭間で見せた豊かな表現力

韓流ドラマファンに愛され続ける「コーヒープリンス1号店」(2007年)や「トッケビ～君がくれた愛しい日々～」(2016年)で知られる人気俳優 コン・ユ。7月10日に43歳を迎えた彼は、年齢を重ねたこその深みのある演技で、『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)や『SEOBOK／ソボク』(2021年)、「静かなる海」(2021年)といった話題作で近年も変わらぬ存在感を発揮。今や韓国俳優における"イケおじ"の代表格と言っていいだろう。

そんなコン・ユが今からちょうど10年前、30代にして"生意気な高校生"を演じた「ビッグ ～愛は奇跡＜ミラクル＞～」(2012年)はご存じだろうか？

イ・ビョンホンの妻としても知られる美人女優 イ・ミンジョンと共演した本作は、兵役期間を経たコン・ユが、「コーヒープリンス1号店」以来、約5年ぶりにドラマ復帰を果たしたラブコメディ。当時コン・ユは30代前半――ハツラツとした青年の輝きと大人の色気が同居する、いわゆる"脂ののりきった時代"に突入していた。

「ビッグ」で演じたのも、そんなコン・ユのアンバランスな魅力が存分に発揮されるキャラクターだった。それも、交通事故によって生意気盛りの男子高生・キョンジュンと体が入れ替わってしまう30歳のエリート医師・ユンジェという複雑な設定。生身のキョンジュン(シン・ウォンホ/CROSS GENE)は、事故以来、ユンジェの魂が入り込んだまま昏睡状態に陥ってしまい、物語上では18歳のキョンジュンの魂(外見は30歳のユンジェ)のまま、ストーリーが進行していく。

2人の体が入れ替わってしまったことを知っているのは、ユンジェの婚約者であり、キョンジュンの通う高校の教師でもあるヒロイン、キル・ダラン(イ・ミンジョン)だけ。ダランとキョンジュンが様々な障害を乗り越え、心を通わせていく過程が本作の軸だ。見た目は大人(ユンジェ)でも中身は18歳(キョンジュン)というギャップを、コン・ユが愛嬌たっぷりの言動でコミカルに演じ切っており、その"子供のような大人"ぶりが、ダラン同様、可愛く思えてくるのだ。

アメリカ帰りのキョンジュンは、"見た目"を利用してダランに不意打ちのキスをしたり、甘い言葉を囁いてみたりとイタズラもするが、内心では素直で明るい彼女にどんどん惹かれていく。一方、ユンジェにベタ惚れだったダランも、キョンジュンに対してときめく気持ちを自覚し、混乱し始める。

もし、本当に18歳の高校生が突然見知らぬ30歳の男の体に入り込んでしまったら...？きっとものすごく不安で孤独だろう。だからこそ、本当の姿を知っているダランへの思いは強くなる。キョンジュンがダランの後ろ姿を目で追いながらそっと「会いたかった..."カン・キョンジュン"と呼んでくれる唯一の人に」と口にする場面は、彼の切ない思いがギュッと詰まった名シーンだ。

また、事故前に筋トレを日課にしていたユンジェの体は超筋肉質。入れ替わったキョンジュンが「板チョコみたい」と漏らしながら、まじまじと体を観察する場面もあり、コン・ユの鍛え上げられた肉体美は実際に見惚れてしまうほど、完璧に仕上がっている。体の入れ替わりがテーマの作品だけに、そうしたファン垂涎のサービスカットも度々登場する。

初放送後の2013年当時、コン・ユやイ・ミンジョン、ペ・スジ(miss A)、シン・ウォンホ(CROSS GENE)が来日し、武道館でライブイベントが行われるほどの盛り上がりを見せた同作。ちょうど「コーヒープリンス1号店」と「トッケビ～君がくれた愛しい日々～」という2大ヒットドラマに挟まれているため、10年が経った今ではあまり話題に上ることが少ないが、見れば見るほどコン・ユの豊かな表現力と、キョンジュンの愛おしい魅力に気付かされる良作だ。

文＝酒寄美智子