深田恭子の健気な表情が印象的!本編とは異なる魅力を放つ「大奥」シリーズのスペシャル版

かつて実在した江戸城大奥。武家社会の中心で将軍を支える女たちの園は、存在そのものがドラマティックだ。それゆえ、これまで物語の題材として多く取り上げられてきたが、漫画家・よしながふみによる男女逆転の「大奥」は大ヒットを記録した。
同漫画を原作に、2023年1月からはNHKドラマ10にて再びドラマ化される。「3代・徳川家光×万里小路有功編」では福士蒼汰、「5代・徳川綱吉×右衛門佐編」では仲里依紗、「8代・徳川吉宗×水野祐之進編」では中島裕翔らメインキャストが、脚本家・森下佳子の描く世界を彩る。同作も楽しみに待たれるが、数ある映像作品の中でも忘れがたいのは、2003年から始まったフジテレビのスーパー時代劇シリーズ「大奥」ではないだろうか。

(C)フジテレビ
本シリーズでは江戸城大奥を舞台に繰り広げられる女の戦いが存分に描かれた。第1弾「大奥」(2003年)では主演の菅野美穂が第13代将軍・徳川家定の御台所・篤子(天璋院)を演じ、大奥総取締の瀧山を演じる浅野ゆう子らと壮絶なバトルを展開。幅広い年代の女性から高い支持を得て、一大ブームを巻き起こした。続く第2弾「大奥~第一章~」(2004年)は、松下由樹演じる大奥史上最強の女帝と謳われる春日局の半生を軸に、徳川幕府の黎明期「大奥」誕生が語られた。西島秀俊が演じる愛すべき上様・徳川家光をめぐる、女たちの激しくも切ない愛憎劇は見応え十分だ。

(C)フジテレビ・東映

(C)フジテレビ・東映
第3弾「大奥~華の乱~」(2005年)は華々しい元禄の世、第5代綱吉の時代が舞台。内山理名演じる主人公が復讐を胸に側室として大奥に乗り込み、前2作よりも熾烈なバトルが繰り広げられた。北村一輝や谷原章介らが扮する歴代上様もそれぞれに魅力的で、高島礼子や瀬戸朝香、藤原紀香に小池栄子と名だたる女優陣が身に纏う豪華絢爛な衣装も目に美しく楽しめる。

(C)フジテレビ・東映
このシリーズには本編とは異なるスペシャル版も存在する。中でも貴重な作品が「大奥スペシャル~もうひとつの物語~」(2006年)だ。本作は大奥史上最大のスキャンダルと呼ばれる絵島生島事件をモチーフにした同年の映画版のスピンオフ作品。深田恭子を主演に、映画では語られなかった第6代家宣の時代の名もなき大奥女中たちの愛と悲しみが描かれる。

(C)フジテレビ・東映
当時の深田は、映画「下妻物語」(2004年)や「富豪刑事」シリーズ(2005年〜)など、初々しく可愛らしい魅力を振りまいていた。本作で演じたのは、思いを寄せる男がありながら貧しい家計を助けるために奥入りを決めた武家の娘・ゆき。総取締の滝川から「おまん」という通り名を与えられ、心を許せる友人・おしの(貫地谷しほり)や頼りになる下男・伸吉(吉沢悠)に出会う。厳しいながらも楽しい日々を送っていたが、図らずも将軍暗殺計画に巻き込まれていく...。
シリーズを通して登場するコミカルな奥女中トリオは、本作でも早々に登場。おまんは3人に厳しく鍛えられながら慣れない奉公に勤しむ。「美味でございます」という名台詞に目を丸くする姿も、与えられた仕事を一生懸命にこなす姿も愛らしい。友となったおしのを思い、妬み嫉みから必死に庇い、自分と重なる恋心にも寄り添う。自身の淡い思いと決別するシーンや唯一心を許した友へ疑惑を抱くシーンなど、複雑な心情を込めた表情も健気で心に響くはずだ。

(C)フジテレビ・東映
華やかな大奥の裏で懸命に生きたおまんを真っ直ぐに演じた深田。物語が進むにつれ少しずつ成長していくおまんと重なるように、作品の中で女優として進化を遂げる。奥入りしたばかりの頃とは顔つきも声色も別人のよう。大奥に生きる女子の業を受け入れ、強い覚悟を決めた表情には思わず魅入られてしまった。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
「大奥」シリーズ一挙放送
放送日時:2022年11月5日(土)0:45~ ほか
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
こちら