チョン・イル＆チン・セヨンのギャップが新鮮！「ヘチ」や「オクニョ」といった重厚な時代劇で見せる表情とは全く違うラブコメ演技

壮大なロマンス史劇「ポッサム～愛と運命を盗んだ男～」(2021年)で共演したユリ(少女時代)と再びタッグを組み、財閥御曹司に扮したゴージャスなラブコメディ「グッジョブ(原題)」が注目を集めているチョン・イル。時代劇で見せる風格のある佇まいも魅力だが、クールで品のあるイルの風貌は現代ラブコメとも好相性。そんなイルが、初めての"片想い"に右往左往するというレアな姿が見られる作品が「ステキな片想い」だ。

2015年に韓国・中国の合作で誕生したWEBドラマ「ステキな片想い」は、配信当時、中国では2億ビューを叩き出したという異例のヒット作。

イルが演じるのは、"育てる新人はすべてトップスターになる"と評判の敏腕プロデューサー兼大手エンタメ会社社長・セフン。よく言えばスマートで戦略家、悪く言えば自信過剰でカッコつけという"クセ強め"のキャラクターだが、上品なルックスのイルが演じることで「こんなCEOいそう」と思わせる絶妙なリアリティが備わった。

そんなセフンがある日、山奥育ちで垢抜けない少女・イリョン(チン・セヨン)に出会い、心を奪われる。「彼女を育てたい」とスカウトするものの、芸能界に興味がないイリョンにそっけなくあしらわれるばかり。どうにか契約を結ぼうと彼女に執着するうち、次第にそれが"恋"なのだと気づいていく。

イルといえば、「太陽を抱く月」(2012年)での陽明君(ヤンミョングン)役を筆頭に、時代劇作品での活躍がよく知られるところ。ほかにも「夜警日誌」(2014年)や除隊後復帰作としても話題を集めた「ヘチ 王座への道」(2019年)など、数々の大ヒット時代劇で王や王子といった品格溢れる役柄を務め、"時代劇のプリンス"とも呼ばれてきた。

一方で、「美男＜イケメン＞ラーメン店」(2011年)のツンデレ御曹司役や、「夜食男女」(2020年)のイケメンシェフ役が評判を呼ぶなど、ラブコメもハマる稀有な存在だ。美しく上品なルックスと、どこか飄々としたキャラクターのギャップが親しみを感じさせ、ファンの心を掴んできた。

「ステキな片想い」で演じるセフンも、敏腕で有能な"表の顔"と恋に振り回される"裏の顔"のギャップがたまらない意外性のあるキャラクター。「この世はサバンナ。食うか食われるかだ」とクールに言い放ったかと思えば、イリョンに平手を食らわされて呆気にとられたり、はたまた、彼女が暮らす山奥の家で暗がりに怯えてアタフタするなど次第にキュートな顔を覗かせていく。

ヒロインのイリョンを演じるチン・セヨンもまた、"時代劇クイーン"と称される人気女優。「ステキな片想い」の翌年には、「オクニョ 運命の人」(2016年)で主演を務めたほか、「不滅の恋人」(2018年)ではユン・シユン、「カンテク～運命の愛～」(2019年)ではキム・ミンギュとロマンスを繰り広げ、芯の強い朝鮮時代のヒロイン像を体現してきた。そんなセヨンが、「ステキな片想い」では一転、山奥に住んで化粧品もろくに持たず、ことあるごとに論語の一節を口ずさむという、変わり者で気の強いイリョン役をチャーミングに演じている。

そうした時代劇に定評のあるチョン・イル＆チン・セヨンが、現代劇コメディの「ステキな片想い」で見せるキラキラとしたラブコメ演技は実に新鮮だ。さらに、セフンが社長を務める会社がエンタメ企業とあって、所属アーティストとしてMONSTA Xやボラ(SISTAR)ら人気K-POPアイドルも出演。そんな華やかな世界観も同作の楽しみの1つと言えるだろう。

いつかは時代劇での共演もありそうなチョン・イル＆チン・セヨン。彼らがこれまで演じてきた韓服姿での凛とした佇まいを思い浮かべると、今作での軽快な掛け合いや"キュン"が詰まった恋愛模様で見せるギャップの面白さが倍増すること必至。特に、初めての"片想い"に翻弄されるイルのチャーミングな一面を存分に堪能したい。

文＝酒寄美智子